アニマルフリーなコラーゲンを開発するGeltorが、ヴィーガンコラーゲンPrimaCollを発表した。
同社はPrimaCollについて世界初のヴィーガンコラーゲンだとしている。
微生物発酵でヴィーガンコラーゲンを開発するGeltor
Geltorは合成生物学によりアニマルフリーなコラーゲンを生成するアメリカのスタートアップ企業。
微生物にコラーゲンを作る遺伝子を組み込んで、微生物を生産工場としてコラーゲンを作らせている(精密発酵という)。
使用する微生物は遺伝子組換え微生物となるが、最終産物からは作り手となる微生物は除去されるため、コラーゲンPrimaCollは非遺伝子組換え製品となる。
コラーゲン市場は2027年までに75億ドル規模に達すると予想され、2020年から年平均成長率5.9%で成長していくと見込まれる。
コラーゲンの製造の主な原料は、牛、豚、家禽、海洋生物だが、2019年の時点では牛由来のコラーゲンが35%とかなりのシェアを占めている。
既存のコラーゲンは、食肉産業の廃棄物を原料に作られるが、代替肉産業のシェアが増えていくと、既存のコラーゲン産業にとっては原料の調達が1つの問題となる。
その点、Geltorのヴィーガンコラーゲンは、動物を必要としないため、コラーゲン市場・代替肉市場の成長性から、今後、さらなる需要が見込まれる。
コラーゲン産生を促進する働きを持つ21型コラーゲン
今回発表されたコラーゲンPrimaCollについてGeltorは、「内側からの美しさ」を実現するためにデザインされたと話す。
すぐに飲めるドリンクや、粉末に追加するほか、コラーゲンを添加したスナック、グミなどあらゆる形で適用できるという。動物由来コラーゲンではないため、ヴィーガンにとって新たな選択肢となる。
Geltorによると、市場にはコラーゲン産生を促進すると謳うサプリメントはたくさんあるが、21型コラーゲンを含む製品は少ない。
成長とともに、ヒト体内における21型コラーゲンの産生は減少する。
21型コラーゲンには、ほかのコラーゲンと相互作用し、コラーゲン産生を促進するシグナル伝達の働きがある。
また、ヒト体内のコラーゲン全体に占める21型コラーゲンは1%に満たないため、ほかのコラーゲンと比べて「プレミアム」なコラーゲンだという。
共同創業者でありCEOのAlex Lorestani氏は、動物由来のコラーゲンを使用する場合と比べ、PrimaCollは少ない量で有益な効果があると話している。
今秋に市販化へ
Geltor はPrimaCollの製造で、スイスのLonza Specialty Ingredientsと業務提携を締結している。
今年の夏に在庫を増やし、今秋には広く市販化する予定。
海外メディアThe Spoon誌によると、PrimaCollの事前紹介を受けた数十社が関心を寄せており、PrimaCollを使った製品作りをしているパートナー会社もいるという。
GeltorはAlexander Lorestani氏とNick Ouzounov氏によって2015年に設立されたカリフォルニアのスタートアップ。
「生物学、医療、コンピューターサイエンスが進歩しているにも関わらず、消費者向け製品はなぜ、時代遅れな動物由来のものに頼っているのか?」
という問いから始まった。
同社は、ライフサイエンス分野で最大規模のスタートアップアクセラレータIndieBioのプログラムを卒業している。
IndieBioプログラムを卒業したスタートアップには、クララフーズ、パーフェクトデイなど、微生物発酵により動物由来のタンパク質と同等なタンパク質を開発するプレーヤーがおり、Geltorも同じ技術を使っている。
Geltorは2018年には世界初となるアニマルフリーなスキンケア用コラーゲン製品Collumeを発売した。
昨年7月にはシリーズBラウンドで9130万ドル(約100億円)という巨額の資金調達を実施している。これまでの調達総額は1億1430万ドル(約125億円)となる。
動物コラーゲンの「真の代替品」を歌うプレーヤーには、アメリカのJellatechもいる。
同社はGeltorとは異なり、細胞培養により動物コラーゲンと同等なコラーゲンを開発している。4月にサンプルを出荷、2022年半ばころまでの市販化を目指している。
参考記事
Cultivated Tech: Geltor Unveils ‘PrimaColl’, Animal-Free Collagen For F&B Industry
Geltor Debuts Animal-Free Collagen For Food and Beverage Markets
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アイキャッチ画像の出典:Geltor