代替プロテイン

精密発酵でラクトフェリンを開発する米De Novo Foodlabs、商用化に向けて約2.2億円を調達

 

ノースカロライナ州に拠点を置く精密発酵企業De Novo Foodlabs(旧称De Novo Dairy)は、精密発酵ラクトフェリンNanoFerrinの商用化に向けて、シードラウンドで150万ドル(約2億1900万円)を調達した。これにより同社の調達総額は400万ドル(約5億8400万円)となった。

2021年に設立されたDe Novo Foodlabsは、人間の栄養を向上させる次世代型栄養ソリューションの開発に取り組んでいる。同社が商用化を目指すのが、牛乳に含まれるラクトフェリンだ。

ラクトフェリンは牛の初乳に含まれる健康効果の高いタンパク質で、免疫システムの強化、認知機能の向上に役立つ成分とされる。さまざまな健康上のメリットがあるラクトフェリンだが、牛乳からの抽出は高コストとなる。世界のラクトフェリン市場は2023年に7億7,300万ドルとなり、今後10年でさらに成長が予想されているが、牛に依存した供給は、持続可能性、倫理的な側面で限界があるのも事実だ。

そこで、De Novo Foodlabsは精密発酵技術を活用することで、従来の牛由来のラクトフェリンよりも環境に優しく、手頃なラクトフェリンを提供したいと考えた。微生物を活用して作られるNanoFerrinは環境負荷を軽減するだけでなく、「信頼できる供給源となる」と同社は考えている

出典:De Novo Foodlabs

De Novo Foodlabsの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のJean Louwrens氏は、「ラクトフェリン市場は長い間、高価格・不安定な供給に直面してきました。当社の研究者・エンジニアチームは精密発酵技術によりこれらの課題を克服することに注力し、画期的な成果を達成できたことを嬉しく思います」と述べている。

ラクトフェリンをより手頃で、身近な選択肢にしようと、精密発酵でラクトフェリンを開発する企業は増えている。

精密発酵ラクトフェリンについて、世界で初めてアメリカでGRAS自己認証を取得したTurtleTreeは、ラクトフェリン市場は乳児用調製粉乳がほぼ独占しており、全製品の約62%を占めていること、他のデータではほぼ80%を占めているため成人が消費できるのはごく一部だと指摘している。低コストのラクトフェリンを安定供給できるようになると、高齢者、アスリートを含め、あらゆる年齢層に向けた製品に取り入れることが可能になる。

出典:De Novo Foodlabs

TurtleTreeは特に植物ミルクがラクトフェリンの理想的な用途だと考えている。成長が期待される植物ミルクに安価な精密発酵ラクトフェリンを添加できれば、相乗効果により植物ミルクへの移行がさらに進んでいくと思われる。

De Novo FoodlabsやTurtleTreeはウシラクトフェリンを開発しているが、ポルトガル企業PFx Biotech、米Helainaのようにヒトラクトフェリンを開発する企業もある。

Helainaは今年7月、自社が開発したKomagataella phaffii由来のヒトラクトフェリンHelaina rhLF (effera)について、健康な成人が最大3.4g/日まで摂取した場合、食品成分として安全であることを示した論文(査読前)をmedRχivに公開した

 

参考記事

De Novo Foodlabs Lands Fresh Funding to Commercialize Longevity Protein NanoFerrin™

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:De Novo Foodlabs

 

関連記事

  1. 【原材料別】代替タンパク質スタートアップ企業まとめ21社
  2. Meatable、初の試食会開催に続き、培養肉の生産期間短縮を発…
  3. NotCoが約95億円を調達、食品業界向けのAIプラットフォーム…
  4. 酵母由来の代替パーム油で2023年上市を目指す英Clean Fo…
  5. 独自ヘムを開発する豪代替肉v2foodが約58億円を調達、中国・…
  6. 米パーフェクトデイ、インドで精密発酵タンパク質の認可を取得、イン…
  7. 米イート・ジャスト、年内または2022年に30億ドルのIPOを目…
  8. 代替肉の米インポッシブルフーズが約560億円を調達、調達総額は2…

おすすめ記事

DAIZが海外進出を本格化、タイの植物肉企業へミラクルミートの提供を開始

熊本を拠点とする植物肉スタートアップのDAIZが海外進出を本格化する。D…

中国初の菌糸体タンパク質スタートアップ70/30、今年後半に全国販売へ

世界的にバイオマス発酵、精密発酵による代替タンパク質の開発が進む中、中国でも最初…

ユニリーバ、植物性の代替肉・代替乳製品の年間売上目標を約1200億円に

このニュースのポイント●ユニリーバが植物由来食品…

北里大学、ニホンウナギの筋芽細胞株の樹立に成功|持続可能なウナギ供給に向けた重要な一歩

2024年10月15日 査読情報に掲載された旨を追記北里大学海洋生命科学部の池田大介准教授ら…

Imagindairyがイスラエルで精密発酵ホエイの認可を取得 - 販売を続ける大手企業の状況も紹介

精密発酵で乳タンパク質を開発するイスラエルのImagindairyは今月、イスラ…

アメリカで広がるスムージー自販機Bleni Blends|サラダからピザまで:次世代自販機の成功と撤退

国内でオレンジを搾ってジュースにしてくれる自動販売機が登場する中、アメリカではス…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/05 14:11時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/05 23:53時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/05 03:34時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/05 20:06時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/05 12:21時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(12/05 23:07時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP