2021年8月29日に第3回細胞農業会議(日本細胞農業協会・培養食料研究会主催)が開催された。
セミナーでは、東京女子医科大学先端生命医科学研究所の清水達也教授が「培養食料生産に向けたサステナブルな培養液の開発」というテーマで、培養液(培地)に関する最新の研究状況を発表した。
清水教授は、再生医療分野において、温度を下げるだけで細胞シートを回収したり、積層化して移植したりする独自の細胞シート工学の開発で広く知られる。すでに7つの領域で細胞シート移植による再生医療が臨床応用されている。
近年では、細胞を培養する培養肉と再生医療に共通点があることから、培養肉生産への応用も進めている。
本セミナーでは、培養肉の開発が進む背景から、現在の課題、課題を解決する手段として、清水教授チームが開発を進めている藻類を活用した培養液の研究状況が紹介された。
食料生産・環境問題の面から近年、培養肉の開発が世界中で進んでいるが、はるか昔に食の未来を言い当てていた人物がいた。イギリスのウインストン・チャーチル首相だ。
「胸肉や手羽先を食べるために鶏を丸ごと育てるなんてバカなことはやめて、それぞれの部位をふさわしい培地で別々に培養するようになる」(ウインストン・チャーチル首相)
「すべての変化は、気がつかないほどゆっくりと進行するだろう」と予言したチャーチルの言葉通り、2020年12月には培養肉料理がシンガポールのレストランで販売された。
2013年には3000万円以上した培養肉ハンバーガーだったが、コストダウンが進み、イスラエルの培養肉企業は約100グラムあたり4ドルまで生産コストの削減に成功している。
いくつかの事例を見る限りでは、培養肉は市販化に向けてカウントダウンが始まっている。しかし、まだクリアできていない課題もある。その1つが生産コストだ。
清水教授チームは、研究段階では研究用の培養液を使っていたが、これらの培養液は食品用途には高すぎる。培養肉を普及させるには生産コストを抑えなければならない。こうして取り組んでいるのが、藻類を活用した培養液の開発だ。