代替プロテイン

カナダのNew School Foodsが約8.6億円を調達、トロントに代替サーモンのパイロット工場を開設

 

ホールカットの植物サーモンを開発するカナダ企業New School Foodsが、シードラウンドで600万ドル(約8億6,700万円)を調達した。Inter IKEAGood StartupNewTree CapitalHatchが出資に参加し、New School Foodsの調達総額は1800万ドル(約26億円)となった。

同社はこれに合わせ、代替サーモンの生産開始に向けて、地元トロントに約2600㎡(2万8000平方フィート)のパイロット工場を正式に開設したことを発表した。

New School Foods、代替サーモンのパイロット工場を開設

出典:New School Foods

New School Foodsは従来のシーフードに代わる、植物性のホールカットサーモンを開発するカナダ企業で、Chris Bryson氏が2021年に設立した。

New School Foodsは、独自の筋繊維・足場技術により、筋繊維、結合組織、脂肪などサーモンの切り身構造を再現した植物性サーモンを開発。独自の筋繊維技術プラットフォームにより、本物に近い食感とほぐれ感を再現している

開設されたパイロット工場には、同社の特許取得済み技術に基づくV1商用組立ラインが導入されている。同社によると、この技術は既製の装置を使用するため拡張性があり、同じ製造工程と装置で他のホールカット製品を作れる点で汎用性があるものだという。

同社は使用成分について公表していない。出願特許では大豆タンパク質、ジャガイモタンパク質、ルビスコタンパク質、緑豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質などが挙げられているが、詳細は不明である。

出典:New School Foods

今回の資金調達での注目ポイントはイケアの投資だ。

Foovoの調査では、イケアを統括するInter IKEAが食品関連企業に出資するのは、セルロース由来の白色色素を開発する仏Seprify、スウェーデンの海藻養殖企業Nordic SeaFarmに続きNew School Foodsが3社目。プラントベース食品企業ではNew School Foodsが初となる

イケアはここ数年、植物性食品の開発・提供を拡大しており、2025年までにイケアレストランで提供する主要メニューの5割を植物由来にすること、レストランで提供される主要メニューの8割を赤身肉以外にすることなどを目標としている

ミートボール、アイスクリーム、ホットドッグなどの植物性代替食品を展開するイケアが出資したことから、同社がNew School Foodsの代替サーモンの品質を高く評価していることがうかがえる。

Inter IKEAでイノベーション事業を統括するRobert Carleke氏は、「私たちのチームは、New School Foodsが開発した製品、生産技術に感銘を受けました」と述べている。

プラントベース食品を推進する大手イケアからのサポートは、北米のレストランでの提供を目指すNew School Foodsにとって追い風となり、近い将来、イケアのレストランに導入される可能性も考えられる。

Chris Bryson氏 Foovo(佐藤)撮影 2023年11月シンガポールにて

同社は昨年シンガポールで開催されたAgri-Food Tech Expo Asia 2023で、サーモンそっくりの風味を持つ独自の藻類由来フレーバーを展示していた。Bryson氏は当時、代替サーモンでは調理済みと生の状態の2バージョンを開発中であり、まずは調理済みの代替サーモンを2024年に発売予定だとFoovoに述べていた

 

参考記事

New School Foods Adds $6M from Investors including Inter IKEA and Protein Industries Canada, Opens Manufacturing Facility

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:New School Foods

 

関連記事

  1. 培養肉企業MeaTechがベルギーに培養脂肪のパイロット工場を建…
  2. Formoが微生物発酵によるアニマルフリーなクリームチーズを発表…
  3. 単細胞タンパク質を開発する独MicroHarvest、ポルトガル…
  4. 微生物でタンパク質を開発するNature’s Fyn…
  5. Upside Foods、シカゴ近郊に商用規模の培養肉工場を建設…
  6. 培養肉企業のパイオニア、モサミートがオランダに培養肉工場を開設
  7. ビヨンドミートが中国で豚ひき肉Beyond Porkを期間限定で…
  8. ERGO Bioscience、植物細胞培養によりミオグロビン・…

おすすめ記事

米パーフェクトデイ、インドで精密発酵タンパク質の認可を取得、インドの工場を買収

精密発酵によるタンパク質開発で世界をリードする米パーフェクトデイが、インドで認可…

ソーラーフーズが約13億円を調達、来年前半に商用工場Factory 01を稼働

二酸化炭素と微生物を活用して代替タンパク質ソレインを開発するソーラーフーズ(So…

食料品店の救世主!食品廃棄を減らして売上を伸ばすShelf Engineが約44億円を調達

食料品店が直面する食品廃棄・在庫切れ問題を、AIを活用して解決するShelf E…

廃棄大麦から代替タンパク質を開発するEverGrain|世界最大の醸造会社の大麦をアップサイクル

世界で1年間に醸造で使用される大麦は900万トンとされる。使用済みの大麦…

TurtleTree、精密発酵ラクトフェリンの上市に向けて最初の商業パートナーシップを締結

精密発酵でラクトフェリンを開発するTurtleTreeが初の商業パートナーシップ…

MeaTechが低コストな培養脂肪の生産方法で米国仮出願を提出

イスラエルの培養肉企業MeaTechは、米国特許商標庁(USPTO)に植物由来成…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(09/15 13:37時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/14 23:06時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,940円(09/15 02:47時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(09/14 19:29時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(09/15 11:51時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(09/14 22:27時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP