代替プロテイン

中国の植物肉HEROTEINが米培養油脂Mission Barnsと培養ハイブリッド肉の共同開発で提携

 

中国の植物肉企業HEROTEINが、アメリカの培養肉企業Mission Barnsと戦略的パートナーシップを締結した。2社は培養肉と植物肉をブレンドしたハイブリッド肉の共同開発で協力する。

この提携により、HEROTEINが中国で最初に培養肉を販売する企業となる可能性が高まった。

HEROTEIN(元HERO Protein)は中国を拠点に植物ベースの代替肉を展開している中国企業。2020年に設立され、中国の外食産業で代替豚肉、代替牛肉を販売してきた。今回の発表に合わせ、中国ブランドButler & White’sと共同開発した16種類の植物肉商品を発売したことも明らかにされた。

出典:HEROTEIN

一方、Mission Barnsはシリコンバレーを拠点とする細胞農業スタートアップで、設立は2018年。今年4月にシリーズAで2400万ドル(約26億円)を調達し、現在、サンフランシスコに実証プラントの建設を進めている。

今回のニュースで注目すべき点は2つ。1点は、中国に培養ハイブリッド肉が導入される可能性が高まったこと。2点目は培養肉と植物肉をブレンドしたハイブリッド肉の市販化が近づいてきたことだ。

現在、市場に出回る植物肉の原料は、大豆、えんどう豆、小麦などが主流だが、その風味は本物の動物肉には及ばない。そのため、既存の植物肉を本物に近づけるうえで不可欠とされる「油脂」を細胞ベースで作る企業の登場が近年目立つ。Mission Barnsもその1社となる。

出典:Mission Barns

同社は4月の資金調達時に、培養脂肪「Mission Fat」をまず植物肉に組み込むものとして商用化すると発表していた。その対象国として中国市場が選定されたことは興味深い。

Mission Barnsの培養油脂を使ったハイブリッド肉が中国で販売されるためには、中国当局の承認を得る必要がある。植物ベースの代替肉に組み込む形であっても、細胞培養で作られた油脂を含む代替肉は許認可を受けなければならない。

これまでに培養肉の販売が許可された国はシンガポールに限られており、中国でどのタイミングでハイブリッド肉が販売されるかは定かではない。しかし、2社の提携により、HEROTEINが中国で最初に培養ハイブリッド肉を販売する企業となる可能性は高まったといえる。

直近では精密発酵で代替油脂を開発するNourish Ingredientsとオーストラリアの培養肉企業Vow提携を発表した。今後は代替肉業界のスタートアップ同士による提携、スタートアップ企業と大手との提携事例が増えていくことが予想される。

 

参考記事

Rebranded HEROTEIN Debuts Ready Meal Range, Partners with Mission Barns to Develop China’s First Hybrid Meat Products

HEROTEIN Partners With Mission Barns to Bring First Hybrid Cultivated / Plant-Based Meat Products to China

 

関連記事

 アイキャッチ画像の出典:HEROTEIN

 

関連記事

  1. 米Bond Pet Foods、精密発酵由来の動物タンパク質2ト…
  2. カナダのBurcon NutraScienceはヒマワリの圧搾粕…
  3. アサヒ、日本初の酵母由来ミルク「LIKE MILK」を発売|海外…
  4. “見えない卵”を置き換え、食卓の多様性を守る-日本企業UMAMI…
  5. 微細藻類を活用するカナダのProfillet、ホールカットの植物…
  6. BioCraft Pet Nutrition、社名変更とともに培…
  7. スピルリナ由来の代替肉、スナックバーを開発するインド企業Naka…
  8. 上海の培養肉企業CellXがパイロット工場を開設、年内に米・シン…

おすすめ記事

農水省がマイコプロテイン、料理ロボット、代替肉、廃棄野菜活用などのフードテック企業へ補助金を交付|中小企業イノベーション創出推進事業第2回採択結果

農林水産省中小企業イノベーション創出推進事業の第2回公募の採択結果が発表された。…

ホールカットの植物サーモンを開発するOshi、年内にアメリカで発売へ

ホールカットの植物由来サーモンを開発するイスラエル企業Plantishは今月、今…

オランダのRevyve、酵母由来タンパクで卵代替へ—約41億円を調達し年産1,600トン以上に拡張へ

出典:Revyve卵の機能を代替する酵母由来タンパク質を開発するオランダ企業Revyve(リバイ…

日本市場で高まる培養うなぎへの関心|日本人の35%が「培養うなぎを試したい」

培養うなぎを開発するイスラエル企業Forsea Foodsが日本人を対象に実施し…

話題のビーンレスコーヒーATOMO COFFEEを渋谷で飲んでみた|ATOMOの次の戦略

昨年8月、豆を使わないエスプレッソ粉「ATOMO COFFEE」が日本に初上陸し…

チーズ大手のベル、精密発酵企業Standing Ovationと独占提携

世界的なチーズブランドBabybel、Laughing Cow、Boursinで…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(09/24 16:00時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/25 02:21時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/25 06:00時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/24 21:59時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(09/24 13:56時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(09/25 01:15時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP