代替プロテイン

チリのユニコーン企業NotCoが約259億円を調達、アメリカに続き欧州・アジアを目指す

 

代替ミルクなどプラントベース食品を開発するチリのユニコーン企業NotCoがシリーズDラウンドで2億3500万ドル(約259億円)を調達した。

このラウンドはTiger Globalが主導し、DFJ GrowthZOMA Lab、ジェフ・ベゾス氏による投資会社Bezos Expeditions、シェイク・シャックの創業者ダニエル・マイヤー氏によるファンドEHI のほか、ルイス・ハミルトン氏ロジャー・フェデラー氏など著名アスリートも参加した。

これにより、NotCoの調達総額は3億6000万ドル(約397億円)となり、企業価値は15億ドルとなった。

NotCoは2015年に設立された南米を代表するフードテック企業。プレスリリースによると、牛乳、卵、肉という3つの主要な動物性タンパク質市場を同時に狙う唯一の企業となる。

出典:NotCo

NotCoは、GiuseppeというAI技術を用いて、独自に蓄積した何千という膨大な植物プロファイルから、動物性たんぱく質にマッチする理想的な植物成分を割り当てる。

使用する原料は、えんどう豆、パイナップル、ココナッツ、キャベツなど多岐にわたる。

生物学的に加工された食品を作るのではなく、既存の食品を分類し、さまざまな植物成分を組み合わせることで、動物性食品に最も似た食感、匂い、口当たりを再現する。

Giuseppeを活用して動物性食品に置き換わる理想の植物原料をすばやく、より正確に特定し、分子レベルでマッチングすることで、植物性でありながら、動物性食品と同じ味、食感、機能を持つ食品を作り出している。

出典:NotCo

例えば、代替ミルクNotMilkは原料として、えんどう豆、パイナップルの絞り汁、チコリの根、ココナッツオイル、キャベツの絞り汁を使用している。

「プラントベース食品を食べている人の60%は味に満足していません。牛乳を飲む人の30%は、同じ味のものがあれば変えたいと思っています。

私たちの技術はAIをベースにしていますので、異なる食品システムを創り出すことができますし、この業界で他社より早く、より良い商品を作ることができます。

30万種の植物がありますが、これらの99%で何ができるかはまだわかっていません」(CEOのMatias Muchnick氏)

NotCoは現在、アメリカ、チリ、ブラジル、アルゼンチン、コロンビアの6000箇所近くの小売・外食産業で商品を展開している。昨年にはチリのバーガーキングに採用された。

今回調達した資金で、北アメリカで新しいカテゴリーへの拡大を図り、独自のAIプラットフォームを強化する。また、メキシコ、カナダにも参入し、アメリカ、チリでの市場シェアを増やす。

CEOのMatias Muchnick氏は、今後2、3年で事業の50%がアメリカベースとなるとみている。来年にはヨーロッパ、アジアへの進出も狙っている。

NotCoのチーム 出典:NotCo

NotCoの商品には、代替ミルクのノット・ミルク(NotMilk)、代替パテのノット・バーガー(NotBurger)、代替アイスクリームのノット・アイスクリーム(NotIceCream)、代替マヨネーズのノット・マヨ(NotMayo)、代替肉のノットミート(NotMeat)の5種類がある。

アメリカで販売されているのはNotMilkのみだが、南米では全商品が展開されている。今後は北アメリカでもNotMilk以外の商品を展開していくと予想される。

NotCoがアメリカ進出を果たしたのは昨年11月。現在、ホールフーズ、スプラウツ、ウェグマンズなどのスーパー、Imperfect Foodsなどのオンラインショップで販売されている。6月には販売箇所は3000に達した。

年末までに国内外の販売箇所を8000箇所に増やしたいと考えている。

出典:NotCo

同社は、先月にシェイク・シャックの創業者ダニエル・マイヤー氏によるグロースエクイティファンドEHIから出資を受けたばかり。

NotCoは自社サイトでB2CによるEC販売も手掛けているが、インテルのCPUのように、市場に出回る食品に導入されるB2Bの戦略も狙っている。

「多くの企業から『当社製品の植物バージョンを作れますか?』という問い合わせがありました。こんな風に他社製品の「Intel Inside」になることができます」

(CEOのMatias Muchnick氏)

テッククラウンチによると、NotCoは今後2年でスタッフを現在の100名から2倍に増やし、鶏肉やシーフードなど新しい製品を増やすことも考えている。これまでに5つの特許を取得しているが、今後はさらに増やしていく。

 

参考記事

Food Tech Pioneer NotCo Announces $235M Series D Round at $1.5 Billion Valuation

Bezos-Backed NotCo Raises $235M for Plant-Based Alternatives

NotCo gets its horn following $235M round to expand plant-based food products

Bezos-backed plant food firm NotCo joins unicorn club after latest funding

 

おすすめ記事

アイキャッチ画像の出典:NotCo

 

関連記事

  1. 空気と電気からタンパク質を作るSolar Foodsが約5億4千…
  2. 世界初!イート・ジャストが培養肉料理のデリバリーをシンガポールで…
  3. 中国のJoes Future Foodが豚の培養脂肪のパイロット…
  4. 植物を活用してアニマルフリーな乳製品を開発するMirukuが約3…
  5. Wilkが細胞培養による乳脂肪を使用したヨーグルト開発に成功
  6. 米New Cultureが精密発酵カゼインによるモッツァレラ試食…
  7. 独自ヘムを開発する豪代替肉v2foodが約58億円を調達、中国・…
  8. 二酸化炭素、電気から乳タンパク質の生成へ|ソーラーフーズの新たな…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

ビール酵母をアップサイクルして代替タンパク質を開発するRevyve、今年商用生産を開始予定

代替タンパク質開発において、アップサイクルを取り入れる企業が増えている。…

ネスレがヴィーガンキットカットの販売を欧州で開始!

ネスレが植物ベースのヴィーガンキットカットを発売した。ヴィーガンキットカ…

イート・ジャストがシンガポールにアジア初の生産拠点を建設、培養肉の協業も

植物性代替卵のイート・ジャストがアジア進出拡大に乗り出した。投資機関Pr…

MeaTechが低コストな培養脂肪の生産方法で米国仮出願を提出

イスラエルの培養肉企業MeaTechは、米国特許商標庁(USPTO)に植物由来成…

青果物の鮮度保持期間を延ばすHazel Technologiesが約76億円を調達

アメリカ農務省(USDA)によると、アメリカでは供給される食料の30-40%が廃…

韓国政府、2022年の国家計画に培養肉のガイドラインを追加

韓国の食品医薬品安全処が、国家計画に初めて代替タンパク質に関するガイドラインを盛…

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,671円(04/27 12:15時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/26 21:33時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/27 01:03時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/26 18:06時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/27 10:48時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/26 21:03時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP