香港科技大学からうまれたAlt Farmは3Dプリンター技術の活用を進める会社で、A5ランクの代替和牛肉を18か月以内に上市すべく植物由来で作る検討を進めている。
A5ランクの和牛は最高級の高価な肉製品で、Alt Farmはこの和牛を植物由来成分と3Dプリンターで再現して自社技術を証明しようとしている。
高級肉をアニマルフリーで再現
Alt Farm代表のKenny Fung氏はFood Navigatorの取材に対して以下のようにコメントしている。
「我々が特許を取得したノズルは、ノズル内で酵素反応が進むのでプリントされた植物性代替肉は固まって繊維感のような異なる食感を生じさせることができる。まずは植物由来の製品を作るが、この技術を用いればモチモチからカリカリまで食感を様々に調整することができる。
急拡大している植物代替肉市場は我々の最初のターゲットであるとともに、この市場の規模や革新性は更なる成長を遂げる支えとなる」
世界で最も高価な肉のひとつである和牛を再現する際には、エンドウ豆、大豆、海藻のタンパク質を油脂や香料と一緒にプリントする。よく知られている牛肉の霜降りはココナツ、シアバターやココアバターで再現する。最初の試作品を2023年に出すべく研究開発が進められている。
最初に販売する市場としてAlt Farmは中国とオーストラリアを重要視している。
植物代替肉分野における3Dプリンターの活用
3Dプリンターを食品分野で活用する取り組みは活発になっており植物性材料を用いた代替肉製品でも、多くの会社がそれぞれの独自技術を用いて開発を進めている。
スペインのNovameatは微細押出成形技術と呼ぶ独自技術で従来よりも15倍のスピードで代替肉を製造できるとしている。
イスラエルのRedefine Meatは複数のフードインクを用いて筋肉、脂肪、血液などに相当する成分を積層するプリント技術により本物に近い代替ステーキ肉を開発し、2021年末にはイスラエルだけでなくオランダ、イギリス、ドイツのレストランでも既に販売されている。
同じくイスラエルのPlantishは植物代替の水産物をターゲットとして、2024年の本格的な販売を目指して代替サーモンの開発を進めている。
3Dプリンターは薄い切断面を何層も積層して3次元構造を造形する技術だが、3Dフードプリンターとなると造形に用いる材料は可食であるだけでなく、各国の食品基準に則ったものであることが必要となる。こうした背景から、熱可塑性のあるチョコレートや粉末を焼結して固体にできるパスタの他には自由な造形という3Dプリンターの特徴を活かした食製品は多くないのが現状である。
代替肉製品の場合は、造形後に加熱調理を行うことにより構造を固定化しており、造形性よりも3Dプリンターの自由な成分配合という特徴が活かされた製品であると言える。
Alt Farmの場合は、酵素反応を用いることにより構造変化を起こすことを最大の技術的な特徴としている。同社はタンパクをプリントする技術で特許を取得しており、専用ノズルを用いて出来上がりを製品に合った食感にすることができる。この技術はAlt Farmを特徴づける強みで、他社の3Dプリンターは積層後に加熱などの加工操作を要するものが多い。
Alt Farmのこうした技術が食感や風味にどのような効果を与えるのか、については、今後開発される製品により明らかにされるだろう。
参考記事
This 3D Printed Plant-Based Wagyu Beef Startup Is Planning APAC Success In 2023
Plant-based 3D printing: China and Australia identified as key markets for new Wagyu launch
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アイキャッチ画像の出典:Alt Farm