アメリカの代表的な代替肉スタートアップ、ビヨンドミートが中国現地の生産工場の開設を発表した。
新しい工場は上海近郊の嘉興経済技術開発区(JXEDZ)に位置し、同社初の海外の生産施設となる。
現地生産が実現することで、ビヨンドのアジアでの生産規模・販売規模がさらにスケールアップし、存在感を一層増すことが予想される。
中国市場で存在感を高めるビヨンドミート
上海の新しい工場では、植物性の代替豚肉、代替牛肉、代替鶏肉を生産するほか、中国市場向けに特別に作られた代替豚ひき肉「Beyond Pork」を生産する。
中国の小売・外食産業に向けた生産をスケールアップするほか、この生産施設は新しい商品開発も行う研究開発センターも兼ねている。
今回の工場稼働ニュースの1年前、ビヨンドは中国市場に参入した。
中国の3300店舗のスターバックスと提携するほか、ヤムチャイナが運営するKFC、タコベル、ピザハットでは期間限定でビヨンドバーガーを販売した。
上海の新工場は地元で高まるニーズに現地で応えるものとなる。
ビヨンドミートの植物性代替肉は原料にエンドウ豆を使用している。
遺伝子組換え原料を使用しないことで、競合のインポッシブルフーズよりも一足先に中国市場へ進出することに成功した(インポッシブルフーズは現在規制当局の承認を待っている)。
躍進がつづいた2020年
2020年、コロナウイルスで飲食業界が打撃を受ける中、ビヨンドミートは躍進をつづけた。
新商品を5つリリース、D2Cサイトをオープン、全米のピザハットでビヨンドの代替肉がメニューに導入されたほか、中国では新作となる豚ひき肉を上海の一部レストランで期間限定で提供した。
今年になってからは、マクドナルド、ヤム・ブランズというファーストフード大手と提携を発表。マクドナルドに対しては3年間にわたり植物性代替肉を提供、ヤム・ブランズとは新しい植物性メニューを共同開発する。
このほか、ペプシコと植物ベースのスナックやドリンクの開発でジョイントベンチャーも設立した。
中国市場でひしめく競合プレーヤー
勢いのあるビヨンドミートだが、中国本土にはすでに植物肉の競合が複数登場している。
香港発の豚ひき肉オムニポークで小売・レストランに展開するグリーンマンデー、今年2月に85万ドルを調達したHero Protein、わずか8ヵ月で北京、上海、広州など主要都市に展開したHey Maet、ピーナッツを原料に植物肉に挑むHaoFood、中国大手ファーストフードDicosの全店舗に導入されたStarfieldなど、中国本土では植物肉に取り組むスタートアップが次々と登場している。
ビヨンドミートの創業者イーサン・ブラウン氏がプレスリリースで次のように述べている通り、現地工場の稼働はこうした並みいる競合と効率的に戦う「武器」になると考えられる。
「中国に植物肉の生産に特化した工場を開設することは、世界最大の市場の1つ(である中国)で効率的に競争するうえで、重要なマイルストーンとなります。
当社は長期的な成長ができる地域として中国へ投資しています。
この新しい生産施設は、中国の消費者においしく、かつ人々と地球の双方にも良い植物ベースのタンパク質を提供するために、価格と持続可能性の指標を前進させるのに役立つものになると信じています」(イーサン・ブラウン氏、斜線はライター)
ビヨンドは中国の次も視野に入れている。
同社は昨年6月にオランダにヨーロッパ初となる自社所有の生産工場の開設を発表していた。
この工場は2020年末までに稼働される予定だとしていたが、今回のプレスリリースで今年オープンすることが発表された。
どこが中国を制覇するかは未知数
中国現地での工場稼働によってビヨンドが存在感をさらに増すのは間違いない。
しかし、中国の代替肉企業も黙ってはいないだろう。
植物肉をめぐっては、植物原料に頼る欠点を補う周辺技術のイノベーションが進んでいる。
インポッシブルフーズの肉らしさのコア成分「ヘム」に代わる新規ヘムを開発する企業もあれば、植物肉をターゲットに培養脂肪を開発する企業もいる。
こうした企業と手を組むことで、味、風味の面で植物肉プレーヤーの中で抜きんでることも可能だろう。
それがビヨンドミートなのか、他社なのか、今後の動向が注目される。
参考記事
Beyond Meat Opens Its First Manufacturing Facility Outside the U.S., in China