代替プロテイン

酵母から脂肪を開発するCultivated Biosciencesが約2.1億円を調達

 

植物由来乳製品の食感を改善するためにクリーミーな脂肪成分を開発するスイス企業Cultivated Biosciencesが、プレシードラウンドで150万ドル(約2億1000万円)を調達した。

「次なるフロンティア・脂肪」を開発するCultivated Biosciencesが資金調達

出典:Cultivated Biosciences

Cultivated Biosciencesは、非遺伝子組換え酵母を活用して乳製品用途の脂肪を開発する企業として、2021年にTomas Turner氏Denis Joly氏が設立した。今回の資金調達はCultivated Biosciencesにとって初のラウンドとなる。

プレシードに特化したスイスのベンチャーキャピタルWingman Venturesが主導し、Big Idea VenturesBlue HorizonProveg InternationalFoodHackなどが参加した。さらに、精密発酵由来の卵白開発で世界をリードする米The Every Company創業者のArturo Elizondo氏や、スイスを代表する植物肉企業Planted共同創業者のLukas Böni氏もアドバイザーとして出資している。

Elizondo氏は、「アニマルフリーな食品システムへ世界の移行を加速する上で、脂肪は次のフロンティアです。Cultivated Biosciencesと彼らの取り組みを個人的に支援できることを大変嬉しく思います」とコメントしている。

2024年までの市場進出を目指す

出典:Cultivated Biosciences

Cultivated Biosciencesは調達した資金で、生産プロセスを最適化し、食品用途の研究開発を加速させ、最初のクライアントと商品開発を開始する。

同社はチューリッヒの研究所で非遺伝子組換え酵母を活用して、植物由来乳製品の口当たりを改善するクリーミーな成分を開発している。

Cultivated Biosciencesは2023年にも、一部のクライアントと開発した成分の試験を開始する予定だという。パートナーシップも歓迎しており、特に、スイスの料理部門や欧米のフードテックエコシステムからのパートナーを希望しているようだ。

以前の報道によると、2024年までにアイスクリームなど高級製品に使用する形で市場投入を目指している。

出典:Cultivated Biosciences

アメリカのパートナーを求める背景には、同社が使用する油脂酵母由来の脂肪成分が欧州では新規食品として分類される可能性が高いことも関係しているだろう。そのため、初期の進出市場として欧州ではなく、アメリカやシンガポールでの上市が先行すると考えているようだ。

Cultivated Biosciencesが狙うのはB2B市場であり、アイスクリームからコーヒーミルクなどさまざまな製品に代替脂肪として活用できる同社成分は、共同開発商品として幅広いアプリケーションが考えられる。

Turner氏はパーフェクトデイの市場進出を例に挙げ、「業界の先陣を切った方の非常の良い実例で、私たちも似たことを目標としています」と海外メディアのインタビューで語っている

市場に出回る植物由来の代替肉や代替乳製品の増加に伴い、今後は味や食感を改善する脂肪の開発も加速していくだろう。

 

参考記事

Cultivated Biosciences raises $1.5M pre-seed to tackle fats and mouthfeel

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Cultivated Biosciences

 

関連記事

  1. MeaTech、3Dプリンターによる培養シーフードの開発でUma…
  2. 米Reel Foods、初の培養魚試作品を発表|組織工学を活かし…
  3. 【現地レポ】シンガポール展示会(Agri-Food Tech E…
  4. 植物性卵・培養鶏肉を開発するイート・ジャストが新たに約219億円…
  5. 6つの豆タンパク質から代替魚を開発する米Good Catch、カ…
  6. 【2024年1月16日】Foovo初の現地セミナー開催のお知らせ…
  7. 植物分子農業でジャガイモから卵白タンパク質を開発するPoLoPo…
  8. 微生物とAIで新素材を発見するKingdom Supercult…

おすすめ記事

欧州大手小売のREWEグループ、欧州の業界団体「Food Fermentation Europe」に加盟──FFE初の小売会員として代替タンパク質推進へ

発酵由来食品・原料に焦点をあてた業界団体Food Fermentation Eu…

細胞農業(細胞培養・精密発酵)で代替母乳を開発するスタートアップ企業9社

健康上の理由、仕事による必要性、母乳が出ないなどの理由により授乳できない母親とそ…

シンガポールのSEADLING、発酵海藻ペットフードで北米進出を加速、日本市場への期待も【創業者インタビュー】

SEADLING創業者のSimon Davis氏シンガポールのSEADLINGは、地元農家と連携…

精密発酵で卵白タンパク質を開発するOnego Bio、米国進出に向けて約61億円を調達

フィンランド・アメリカに拠点を置くOnego Bioは今月、精密発酵による卵白タ…

2023年精密発酵業界の全貌:認可企業の動向、2024年予測、CDMO企業の動向|Foovoレポート

2024年9月24日更新100億円を超える資金調達が目立った2021年-…

培養油脂のMission Barnsが食肉加工企業と提携、培養ソーセージのスケールアップ生産を完了

植物性原料を使った代替肉が普及するなか、代替肉をより本物に近づける試みとして、細…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(06/21 15:21時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(06/21 01:16時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(06/21 05:15時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(06/21 21:23時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(06/21 13:25時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(06/21 00:28時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP