おがくずなどの林業廃棄物から持続可能な代替油脂を開発するÄIOは先月、610万ユーロ(約9億9000万円)の資金調達に成功した。今回調達した資金で、エストニアに実証プラントを建設し、食品業界で幅広く使用されているパーム油に代わる油脂の提供を目指す。
今回の発表は、今年5月にエストニア、タリンで開催した一般向けの試食会開催に続くニュースとなる。
おがくずから代替油脂を開発するÄIOが実証プラントの建設へ
2022年1月にタリン工科大学(TalTech)からスピンオフされたÄIOは、「レッドオイル」、「カプセル化オイル」、「バター脂肪」の3製品を開発している。これらの製品は、食品に使用されるパーム油の代替品として使用できるほか、「レッドオイル」は化粧品や日用品への使用も想定している。
共同創業者のNemailla Bonturi氏は、「産業残留物から作られるÄIOの油脂は、現在のパーム油や動物性脂肪の生産と比較して、土地利用を最大97%削減、水の消費量を最大1/10に削減するのに役立ちます。また、発酵による油脂生産は10倍速くなります」と述べ、使用資源・生産期間で、従来の油脂を上回るメリットがあることを強調している。
ÄIOは今年初め、「Good Fat Wörks」というイノベーションセンターを設立し、油脂開発やパイロット製品の生産を実施している。実証工場を建設後は、数十トンの「レッドオイル」、「カプセル化オイル」、「バター脂肪」の生産を開始する予定だ。工場は2026年までに完成予定で、大手工業企業近くの建設する可能性が高いという。
油脂生産に使用する原料は、エストニアやフィンランドの食品関連企業から調達する。また、エストニア企業Fibenolとも協力し、同社の加水分解物に付加価値をもたらすプロジェクトも進めている。
エストニア・海外に120を超えるパートナー企業がおり、原料の提供や、ÄIOの油脂の試験などを行っている。先月には、10 m³(1万L)のスケールアップと生産に向けて、シンガポールのCDMO企業ScaleUp Bioと戦略的パートナーシップを締結した。
また、社名は明らかにしていないが、国内外の大手食品、化粧品、日用品メーカー数社と、製品の共同開発で契約を締結しているという。
論文から推測するÄIOの使用微生物
ÄIOがユニークな点は、おがくずなど林業や農業で生じる副産物を、食品グレードの油脂・脂肪に変換できる独自の酵母を開発したことだ。
共同創業者の2人は、エストニアに大量にあるおがくずに着目し、6年の試行錯誤を経て、おがくずから油脂を作る方法を発見した。
生産では、Bonturi氏が作成し特許を取得している「red yeast(赤酵母)」という微生物を使用する。「red yeast」が産業廃棄物を美味しく、食欲をそそる脂肪や油に変換するとしている。
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アイキャッチ画像の出典:ÄIO