代替プロテイン

発酵タンパク質投資が復調:欧州での上半期投資額が前年超え

 

欧州の微生物発酵企業に対する資金調達が増加している。

GFIによると、2024年の最初の6ヶ月ですでに総額1億6,400万ユーロ(約261億円)となり、2023年の1億ユーロ(約159億円)を上回った。

微生物発酵は主に、微生物をプログラムして特定成分を生成する精密発酵、微生物を培養して増やしたバイオマスを食品成分とするバイオマス発酵に分類される。いずれも今年上半期の時点で、すでに昨年を上回る資金が投じられていることから、欧州での発酵タンパク質業界への関心の高さがうかがえる。

発酵タンパク質の投資が回復

出典:GFI

精密発酵企業への出資は2023年の3,300万ユーロ(約52億円)から今年上半期で4,900万ユーロ(約78億円)に増加、バイオマス発酵への出資は2023年の6,700万ユーロ(約106億円)から今年上半期で約1億1,500万ユーロ(約183億円)に増加した。

代替タンパク質全体でみると今年上半期の時点で、発酵タンパク質への投資は、培養肉・プラントベース食品を上回っている

出典:GFI

GFIによると、投資対象に選ばれた発酵タンパク質企業の多くは、生産プロセスで食品や農業で生じる副産物をアップサイクルしているという。

2024年になってから出資を受けた欧州の精密発酵・バイオマス発酵企業(一部)は次の通り。

バイオマス発酵

 

精密発酵

精密発酵ではOnego Bioの調達額が突出しているものの、調達額はバイオマス発酵が高い。上記で挙げたバイオマス発酵企業9社中8社がマイコプロテイン企業(菌糸体を使用している企業や自社原料をマイコプロテインと呼称している企業)であることから、マイコプロテインに対する投資熱の高まりがうかがえる。

一部企業は調達資金をパイロット工場などインフラ建設にあてる予定だが、GFIはスケールアップを進めるためには民間投資だけでなく、政府からの助成金なども必要だと指摘している。

欧州では政府による支援も進んでいる。

欧州イノベーション会議(EIC)は昨年12月、精密発酵や藻類由来の食品開発を行う企業に5,000万ユーロを投じるプログラムを発表し、その第1弾としてOnego BioNoPalm IngredientsMelt&Marbleが対象に選出された。同プログラムは今年10月に第2弾の締切を控えており、さらに多くの精密発酵企業が出資対象になると思われる。

また、イギリス政府は今年2月、発酵イノベーションの促進を目的として、研究拠点「Microbial Food Hub」に1,200万ポンドを投じることを発表した

全体的な傾向として2023年と比べ、今年上半期の取引件数は減少しているのに対し、取引金額は増加しているようだ。これは強力な指標を持つ企業に対してのみ大型の資金投入をする傾向があることを示している。

マイコプロテイン企業への投資が高まる一方で、マイコプロテイン企業のMycorenaは先月、財政難から倒産申請を発表した。経済の先行きへの不安、世界情勢、インフレの高まりから、投資家の慎重姿勢は引き続き変わらないと言えるだろう。

 

参考記事

European investment figures point to an evolving alternative protein sector

 

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アイキャッチ画像の出典:GFI

 

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