米インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)の大豆レグヘモグロビンについて、欧州食品安全機関(EFSA)のGMOパネルは毒性・アレルギー性に関する安全性の懸念は特定できず、ヒトが消費する上で安全であり、ヒトの健康・環境への潜在的影響において安全であると結論づけた。
インポッシブル・フーズがEFSAに申請を実施したのは2019年10月15日。
今年6月、EFSAの食品添加物・香料に関するパネルが、意図された使用量・用途で、食品添加物としての大豆レグヘモグロビンの安全性に問題がないと結論づけた。この意見は、GMOパネルからの意見が出るまで暫定的なものとされ、今回、GMOパネルから安全性に問題ないとの結論が出された。
5年間の審査を経て、遺伝子組換えKomagataella phaffii株MXY0541由来の大豆レグヘモグロビン(LegH Prep)は、食品への使用で安全性に問題がないことが2つのEFSAパネルから認められた。
次は、30日間のパブリックコメントへ進む。EUでは、遺伝子組換えに関する食品が承認される前に、一般市民が30日間、意見を述べることができるパブリックコンサルテーション制度がある。インポッシブル・フーズの大豆レグヘモグロビンに関するコメントフォームもすでに開設されており、2024年12月16日まで意見を送ることができる。
次のステップとして、欧州委員会(EC)は承認するか否かの決定案を加盟国に提出し、各国代表は植物・動物・食品・飼料に関する常設委員会(Standing Committee on Plants, Animals, Food and Feed/PAFF委員会)において投票を行う。
PAFF委員会はすべてのEU加盟国の代表で構成され、欧州委員会の代表が議長を務める。
インポッシブル・フーズの現状は、下記フロー図の最後にある「post-adoption phase」にある。EFSAが科学的成果を採用、意見書を公表したのが今月。この意見書に基づき、欧州委員会が承認するか否かの決定案を作成する。
プロセスの最終段階まで来ているが、加盟国から構成されるPAFF委員会に提出された後、最終決定までどれだけの時間を要するかは不明だ。今後のステップを図解すると次のようになる。
GMO authorisations for food and feed(EC 1829/2003)によると、欧州委員会はEFSAの意見書を受け取ってから3ヶ月以内に、加盟国に承認または否認を提案する。EFSAと異なる意見を提出する場合は、理由の説明が義務付けられている。
加盟国代表は、PAFF委員会において、欧州委員会の提案を賛成多数(特定過半数/Qualified Majority)で承認する。委員会が賛成多数で提案を承認または否認しない場合、欧州委員会は上訴委員会を招集することができる。上訴委員会でも賛成多数で意見に達しない場合、欧州委員会が最終決定を下すことになる。
特定過半数/Qualified Majorityとは、加盟国の55%(27カ国中15ヵ国)が賛成し、かつ、EU全人口の最低65%を占める加盟国によって提案が支持されるという、2つの条件が同時に満たされる必要があることを意味する。
コンサルティング会社Atovaはこのフェーズに数ヵ月から数年かかると見ている。
Atovaによると、過去にGMO食品で過半数に達した事例はないが、一部、上訴プロセスを経て最終的に承認された事例もあるという。となると、インポッシブル・フーズの場合、たとえPAFF委員会で承認されなくても、上訴委員会を経て承認されることも考えられるが、時期的な見通しはわからない。
参考記事
Impossible Foods’ heme protein is safe, says EFSA GMO panel
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アイキャッチ画像の出典:Impossible Foods