代替プロテイン

インポッシブル・フーズの大豆レグヘモグロビンをEFSAが安全と判断:GMOパネルが結論を発表

 

インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)の大豆レグヘモグロビンについて、欧州食品安全機関(EFSA)のGMOパネルは毒性・アレルギー性に関する安全性の懸念は特定できず、ヒトが消費する上で安全であり、ヒトの健康・環境への潜在的影響において安全であると結論づけた

インポッシブル・フーズがEFSAに申請を実施したのは2019年10月15日

今年6月、EFSAの食品添加物・香料に関するパネルが、意図された使用量・用途で、食品添加物としての大豆レグヘモグロビンの安全性に問題がないと結論づけた。この意見は、GMOパネルからの意見が出るまで暫定的なものとされ、今回、GMOパネルから安全性に問題ないとの結論が出された。

5年間の審査を経て、遺伝子組換えKomagataella phaffii株MXY0541由来の大豆レグヘモグロビン(LegH Prep)は、食品への使用で安全性に問題がないことが2つのEFSAパネルから認められた。

出典:EFSA(2024年11月18日時点の情報)

次は、30日間のパブリックコメントへ進む。EUでは、遺伝子組換えに関する食品が承認される前に、一般市民が30日間、意見を述べることができるパブリックコンサルテーション制度がある。インポッシブル・フーズの大豆レグヘモグロビンに関するコメントフォームもすでに開設されており、2024年12月16日まで意見を送ることができる(その後12月27日に延長された)。

次のステップとして、欧州委員会(EC)は承認するか否かの決定案を加盟国に提出し、各国代表は植物・動物・食品・飼料に関する常設委員会(Standing Committee on Plants, Animals, Food and FeedPAFF委員会)において投票を行う

PAFF委員会はすべてのEU加盟国の代表で構成され、欧州委員会の代表が議長を務める

インポッシブル・フーズの現状は、下記フロー図の最後にある「post-adoption phase」にある。EFSAが科学的成果を採用、意見書を公表したのが今月。この意見書に基づき、欧州委員会が承認するか否かの決定案を作成する。

出典:Application procedure for GM food and feed

プロセスの最終段階まで来ているが、加盟国から構成されるPAFF委員会に提出された後、最終決定までどれだけの時間を要するかは不明だ。今後のステップを図解すると次のようになる。

Foovo作成(GMO authorisations for food and feed(EC 1829/2003)の最終プロセスを図解)

GMO authorisations for food and feed(EC 1829/2003)によると、欧州委員会はEFSAの意見書を受け取ってから3ヶ月以内に、加盟国に承認または否認を提案する。EFSAと異なる意見を提出する場合は、理由の説明が義務付けられている。

加盟国代表は、PAFF委員会において、欧州委員会の提案を賛成多数(特定過半数/Qualified Majority)で承認する。委員会が賛成多数で提案を承認または否認しない場合、欧州委員会は上訴委員会を招集することができる。上訴委員会でも賛成多数で意見に達しない場合、欧州委員会が最終決定を下すことになる。

特定過半数/Qualified Majorityとは、加盟国の55%(27カ国中15ヵ国)が賛成し、かつ、EU全人口の最低65%を占める加盟国によって提案が支持されるという、2つの条件が同時に満たされる必要があることを意味する。

コンサルティング会社Atovaはこのフェーズに数ヵ月から数年かかると見ている

Atovaによると、過去にGMO食品で過半数に達した事例はないが、一部、上訴プロセスを経て最終的に承認された事例もあるという。となると、インポッシブル・フーズの場合、たとえPAFF委員会で承認されなくても、上訴委員会を経て承認されることも考えられるが、時期的な見通しはわからない。

 

参考記事

Assessment of soy leghemoglobin produced from genetically modified Komagataella phaffii, under Regulation (EC) No 1829/2003 (application EFSA-GMO-NL-2019-162) (GMOパネルの意見書)

Impossible Foods’ heme protein is safe, says EFSA GMO panel

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Impossible Foods

 

関連記事

  1. 3Dプリンター製サーモンを開発するRevo Foodsが約1億9…
  2. Yali Bioが精密発酵による代替乳脂肪を使用したアイスクリー…
  3. 牛を使わずに乳タンパク質を開発するイスラエルのRemilkが約1…
  4. ドイツ企業Infinite Rootsの菌糸体由来肉が韓国上市へ…
  5. Redefine Meatが3Dプリントされた植物ステーキ肉を欧…
  6. 香港培養肉スタートアップのAvant Meatsが培養魚の切り身…
  7. 米Matrix F.T.が独自マイクロキャリアで作成した培養鶏肉…
  8. 大手食肉加工のJBS、ブラジルで培養タンパク質の研究施設建設を開…

おすすめ記事

イスラエルのWilk、研究室でヒトラクトフェリンの生産に成功

イスラエルのスタートアップ企業Wilk(旧称Bio Milk)は今月、ヒトラクト…

「発酵」で免疫力のある代替母乳の開発に挑むアメリカ企業Helaina

代替タンパク質の領域では、微生物を活用してタンパク質を作る精密発酵と呼ばれる技術…

砂糖削減に取り組むBetter Juice、ドイツにパイロット施設の設置を発表

砂糖削減テックに取り組むイスラエルのBetter Juiceは、ドイツにパイロッ…

【現地レポ】カナダのNew School Foods、ホールカットの植物サーモンを米国で2024年に発売へ

カナダ、トロコンを拠点とするNew School Foodsはホールカットの植物…

規格外・余剰農産物のB2B販売プラットフォームを提供するFull Harvestが約26億円を調達

規格外・余剰の農産物をB2Bで販売するプラットフォームを構築するFull Har…

二酸化炭素、水素から脂肪を開発する米Savorがバター試作品を開発

2025年6月26日更新カリフォルニア州サンノゼに拠点を置くSavorはこれまでと異なるアプ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/11 15:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/12 01:27時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/12 05:24時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/11 21:30時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/11 13:30時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/12 00:37時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP