オランダ、エーデを拠点とするCano-elaは、油分を豊富に含む種子を革新的に加工することで、食品サプライチェーンから精製原料の使用を減らすことを目指している。
従来の抽出プロセスでは主に油脂を回収し、残渣は油粕として飼料・肥料に回されていたが、食品用途に高付加価値な形で成分を利用することは難しかった。
Cano-elaの独自技術により、油脂に加え、種子中のタンパク質や炭水化物、微量栄養素も抽出できるようになった。これにより、食品メーカーはよりクリーンラベルな植物由来食品の開発が可能になるという。
Cano-elaは先月、Value Factory Ventures、Oost NL、Ecoseedからシードラウンドで160万ユーロ(約2.6億円)調達。これは、2022年3月に実施したプレシードラウンド(7万5,000ユーロ調達)に続く資金調達となる。
同社は今回の資金により、パイロット施設の増強、生産能力の拡大、食品メーカーとの連携強化を進める計画だ。
菜種由来の3素材でクリーンラベル市場に挑む

出典:Cano-ela
Cano-elaは、ワーヘニンゲン大学博士課程でオレオソーム(水系抽出)技術を確立したJuliana Romero Guzmán氏が、植物由来製品のクリーンラベル化ニーズに着目したことから始まった。特に、世界で3番目に生産量が多いにもかかわらず、食用では油脂用途に限られていた菜種種子のさらなる活用の可能性に注目。
Romero氏は、植物由来製品をよりクリーンラベルな形で生産したいと考えている食品メーカーにとって、菜種種子からより多くの有用性を活用できることに気付く。
2020年にEIT Food Programで出会ったAlberto Niccolai氏と共同でCano-elaを設立した。
Cano-elaは、菜種から抽出した「Cano-cream」、「Cano-soluble」、「Cano-fiber」の3種の素材を開発している。

「Cano-cream」 出典:Cano-ela
「Cano-cream」は乳化ベースの製品への使用を想定しており、ドレッシング、ヨーグルト、アイスクリーム、植物性チーズなどの処方から精製油、レシチン、乳化剤、酸化防止剤を削減できる点が特徴だという。昨年には卵の代替として「Cano-cream」を使用したブリオッシュを試作した。
高タンパク質成分である「Cano-soluble」は、代替肉、代替卵、チーズなどの代替乳製品などへの利用を想定。「Cano-fiber」は、ベーカリー製品やグルテンフリーのパン、クッキーなどに活用が見込まれている。
欧州でクリーンラベル志向が高まる中、代替肉など代替食品の原料は大豆やエンドウ豆に比較的偏っている。こうした中、Cano-elaは従来、食用では油以外に活かされていなかった菜種に焦点をあてた。
同社が国内外の食品メーカーと共同開発を進めれば、植物性乳製品や代替肉などへの利用が進む可能性がある。
菜種に多機能な食品原料として可能性があると着目したのはCano-elaだけではない。
ポーランド企業NapiFeryn Biotechは昨年8月、菜種由来のタンパク質分離物「Raptein90」と濃縮物「Raptein30」でそれぞれ、FDAのGRAS認証を取得したことを発表した。
Cano-elaやNapiFerynの技術は、カナダ、ドイツ、中国など主要な菜種油生産国や、菜種を輸入する油脂メーカーにとって、副産物をタンパク質に変換する有望なソリューションとなるだろう。
※本記事は、Cano-elaのブログ記事やプレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。
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アイキャッチ画像の出典:Oost NL LinkedIn