出典:Nutriearth
フランスのNutriearthは先月28日、ミールワーム由来の天然ビタミンD3を製造する商用生産施設をフランス、カルヴァンで開設したことを発表した。
同社によると、ビタミンD3の供給の大部分は中国とインドに依存している。工場開設により、中国・インドに依存する世界供給構造からの脱却が可能になる。
EUで新規食品として認められた食用ミールワーム粉末

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同工場は745万ユーロ(約13億円)の資金調達を経て建設されたもので、研究開発、品質管理、製造を一体化した医薬品グレードの施設となる。施設はクリーンルーム仕様で設計され、オイル状の「Nutra-oil」と粉末状の「N-utra」2形態のビタミンD製品を製造する。
Foovoに送付されたプレスリリースによると、Nutriearthは、Tenebrio molitorという数千年にわたり消費された歴史のある食用ミールワームを活用し、ビタミンD3素材を開発。
ビタミンDが豊富なサプリメント用素材の「Nutra-oil」は、すでに北米での使用が認められており、欧州では2026年の承認を見込む。パン、パスタ、クッキー、栄養バーなどに配合できる粉末の「N-utra」はすでに、EUで新規食品として承認されている。
欧州委員会は今年1月、紫外線処理したTenebrio molitor粉末「N-utra」を新規食品として承認。2月10日に発効した。これにより、2025年2月10日から5年間、他社がNutriearthの提出データに依拠せず独自データで認可を得る場合を除けば、Nutriearthのデータには保護が適用され、実質的に先行的な販売上の独占権が保証されることを意味する。

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同社は、ミールワーム粉末に含まれるビタミンD3前駆体に特定の光を照射することで、人体でのビタミンD合成過程を模倣した“バイオミメティック”な方法でビタミンD3へと変換する。化学抽出や溶媒を使用せずに吸収性に優れたビタミンD3を得られるという。
Nutriearthによると、同社製品はラノリン(羊の毛から取れる脂)由来の3倍、地衣類由来の2倍の吸収効率を示すという。
環境面のメリットもある。独立機関のライフサイクルアセスメント(LCA)によると、ラノリン由来のビタミンD3に比べ温室効果ガス排出量を76.8%削減し、環境負荷を8分の1に抑えられるという。地域生産によって輸送に伴うエネルギーやコストを抑え、地政学的なサプライチェーン上のリスク低減にも寄与する。
Nutriearthは、ヒト向けの栄養・健康市場、ペットフードや飼料、機能性食品など世界市場にも供給を広げることを計画している。カルヴァン工場の生産能力は、5000万人分のビタミンD3需要をまかなう規模に相当するという。
世界的な不足が指摘されるビタミンD

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プラントベース食品や発酵由来タンパク質のように、動物原料を使わない食品が増えるなかで、ビタミンDの確保は栄養設計上の盲点になる可能性がある。
ビタミンDは日光に当たることで体内でも合成されるが、現代人は屋内生活が多く、ビタミンDの世界的な不足が指摘されている。
文献によると、ベジタリアン、ヴィーガン、雑食の子ども集団いずれにおいても、ビタミンD摂取量が不足している可能性が指摘され、特にヴィーガンの子どもではサプリメントが推奨されている。ビタミンDは骨の健康に重要なほか、その不足が2型糖尿病の発症メカニズムにも影響することが報告されている。
植物やキノコに多いのはD2で、D3は主に魚油やラノリンなどに動物に由来するものが多い。そのため、動物原料を使用しないビタミンD3素材は、プラントベース食品の栄養面の強化および普及の促進において重要な選択肢になりうる。
※本記事は、Foovoに送付されたプレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Nutriearth




















































