アップサイクル

オランダのNoPalm Ingredients、酵母由来油脂のデモ工場建設計画を発表|2026年後半に生産開始へ

出典:NoPalm Ingredients

酵母を用いた微生物発酵で代替油脂を開発するオランダのNoPalm Ingredientsは今月、同社初のデモ工場をオランダ、エーデに建設する計画を発表した

デモ工場の生産能力は、初期では年数百トン。将来的には1,200トン以上になる予定となる。工場開設により約25名の新たな雇用が見込まれ、2026年後半に最初の工業生産の開始を計画している。

この発表は、NoPalm Ingredientsが今年2月に12万リットルの工業規模へとスケールアップに成功した報告に続くものとなる。

CEO(最高経営責任者)兼共同創業者のLars Langhout氏は、「私たちは今、自社工場を建設しており、夢が現実になりつつあります。パイオニアとして、酵母由来油脂が研究室に存在するだけでなく、大量生産が可能であることを業界に示しています」とプレスリリースで述べた。

NoPalm Ingredients、代替油脂のデモ工場建設計画を発表

出典:NoPalm Ingredients

NoPalm Ingredientsは、ジャガイモなど農業副産物をアップサイクルし、酵母を用いた微生物発酵で脂肪および油脂の代替品を開発している。油脂と脂肪を抽出後に残るバイオマスは、バリューチェーンに再統合される

同社が代替を目指すのは、日用品の約60%に使用されるパーム油だ。パーム油の需要は年々増加しており、2030年までに2,200万トンの追加需要が見込まれる。この増加は、アイルランドの1.5倍に相当する森林伐採を伴うと同社は指摘する

公式サイトによると、半固体の食用油脂「REVÓLEO Soft」と、美容向けのクリーム状油脂「REVÓLEO Silk」を開発している。

食用油脂では、精密発酵企業Those Vegan Cowboysとのカマンベールチーズや、ユニリーバとのブイヨンパウダー、大手消費財企業とのチョコレート、ダノンとのヨーグルトなど、美容向けではコルゲート・パーモリーブとの石鹸など、さまざまな製品を試作している。

試作したチョコレート 出典:NoPalm Ingredients

プレスリリースによれば、これまではプロセスにおける異なるステップが別々の拠点で行われていたが、新工場ではすべてが1箇所に集約される。

新工場は、NIZOが2023年からエーデで取り組んでいるイノベーション拠点「Food Innovation Campus」内に置かれる。同キャンパスでは、国家成長基金等の支援により精密発酵のスケールアップ拠点「Biotechnology Fermentation FactoryBFF)」が建設中であり、容量は最大1万リットル規模で、稼働は2026年を見込んでいる

NoPalm IngredientsはNIZOのインフラを活用することで、より迅速に、よりコスト効率の高い建設が可能になるとプレスリリースで述べている。

他社動向・文脈から読める化粧品先行の可能性

出典:NoPalm Ingredients

酵母由来の油脂では、イギリスのClean Food Groupも先月、6万リットルの発酵運転に成功し、トン単位の生産に到達していることを発表するなど、成果報告が続いている。

AgFunderの報道によると、NoPalm Ingredientsはデモ工場の次となる商用工場の構想も描いており、商用工場では年6,000~1万トンを生産する予定だという。欧州市場をターゲットにしている。

では、食品と化粧品、どの順序で市場に入るのか。

Foovoの調査では、同じく酵母を用いた微生物発酵で代替油脂を開発する米C16 Biosciencesは、石鹸ですでに販売実績があり、現在も化粧品向けオイルを販売している。同社は昨年、食品分野への参入を発表した

細胞性シーフード培養シーフード)でも食品に先行して化粧品分野に参入する動きが複数ある

NoPalm Ingredientsは食品と化粧品の両市場を見据えて準備を進めている。今回の発表では優先順位は明言されていないが、現時点で、美容向けの「REVÓLEO Silk」のページにのみ「最初の市場準備が整ったソフトバター(化粧品・パーソナルケア向け)」との説明があることから、化粧品からの先行投入が示唆される。

コルゲート・パーモリーブと試作した石鹸 出典:NoPalm Ingredients

さらに今年3月には、2023年に石鹸を共同で試作したコルゲート・パーモリーブと新たなパートナーシップを発表し、NoPalm Ingredientsの油脂をコルゲート・パーモリーブの製品に配合する計画が発表された

C16 Biosciencesの事例やコルゲート・パーモリーブとの提携からも、食品に先行して、石鹸やクリームなど化粧品分野から製品を上市していく可能性が高いと考えられる。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:NoPalm Ingredients

 

関連記事

  1. コーヒーかすを油脂に変換|英Revive Eco、廃棄物から持続…
  2. ビヨンドミートとペプシコの合弁会社Planet Partners…
  3. 【2024年1月16日】Foovo初の現地セミナー開催のお知らせ…
  4. Believer Meats、培養肉の生産拡大に向けてGEAと戦…
  5. オイシックス・ラ・大地、サステナブル・シーフード発表会・試食会を…
  6. 培養サーモンの米Wildtype、レストラン・小売との提携を発表…
  7. ネスレ、アニマルフリーな乳製品開発で精密発酵スタートアップと提携…
  8. 機械学習でタンパク質収量を増やす英Eden Bioが約1.6億円…

おすすめ記事

2025年のフードテックを振り返る:国内の細胞性食品が前進、精密発酵は市場投入拡大、日本政府もフードテックを重点分野に

今年初開催された日本培養食料学会大会 Foovo(佐藤)撮影こんにちは。Fo…

Redefine Meatが3Dプリントされた植物ステーキ肉を欧州で発売

3Dプリンターで代替肉を開発するイスラエル企業Redefine Meatが、欧州…

英Adamo Foods、菌糸体ステーキのスケールアップへ|欧州プロジェクトが約18億円の助成金獲得

出典:Adamo Foods菌糸体由来のホールカット代替肉を開発する英Adamo Foodsは今…

マイコプロテインから飼料、燃料まで|東京理科大発MycoGenome、独自の真菌ゲノム編集技術で社会課題の解決に挑む【インタビュー】

代表取締役社長の林修氏 Foovo(佐藤あゆみ)撮影 BioJapan 2025にて東京理科大学…

食品原料大手Döhler、代替カカオのNukokoを買収|大手企業によるカカオ代替が加速

出典:Nukoko食品・飲料・栄養向けのドイツの大手原料メーカーDöhler(ドーラー)は6月1…

フランスのYnsectは昆虫由来のバーガー、ナゲットの販売を目指す

フランスの昆虫食企業Ynsectが開発するバーガーやナゲットが、数年以内にイギリ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

細胞性食品(細胞培養食品)レポート・予約注文開始

最新記事

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

代替カカオレポート・好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP