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Apeel Sciencesが約31億円を資金調達
発展途上国の小規模農家の市場アクセス改善を支援
IFCと提携して、小規模農家のためのサプライチェーン構築へ
野菜の鮮度を保つ“食べられる皮”を製造するApeelが、3000万ドル(約31億円)を資金調達した。
設立当初からの目標である、小規模農家の支援に本格的に乗り出す。
今回のラウンドには、国際金融公社(International Finance Corporation、IFC)、シンガポールの政府系投資会社テマセク、Astanor Venturesが参加した。新たに調達した資金は、サハラ砂漠以南、メキシコ、東南アジア、中南米の小規模農家支援に使われる。
Apeelは、スーパーで陳列される野菜に吹きかけることで野菜の鮮度保持期間を延長できるスプレーを開発。すでに全米、ドイツなど欧州各国に導入されている。
このスプレーは野菜から抽出したオイルを使用しているため、食べても問題はない。9月にはアメリカの100店舗を超えるウォルマートで取り扱いが開始した。
発展途上国の小規模農家支援を始動
鮮度を長期に保持できるスプレーによって、先進国のフードロス解決に貢献する一方で、まだリーチしていない地域がある。サハラ砂漠以南、メキシコ、東南アジア、中南米などの地域だ。
これらの地域はコールドチェーンのインフラが十分に整備されていない。そのため、農作物がマーケットに届くまでの期間、農作物の鮮度を維持できないことが、フードロスの主な原因となっている。
Apeelの技術によって野菜の鮮度は長期間保持できるようになる。しかしこれは、農家が市場にアクセスする手段を持つ場合の話だ。
コールドチェーンのインフラ不足のために市場への確実なアクセスを持たない地域の農家にとっては、まず、農作物の鮮度を保持した状態で市場へリーチする方法が必要になる。
創業者James Rogerは食糧不足に対する誤解を次のように指摘する。
「飢餓は食糧不足に起因すると考えるのは誤解です。多くの小規模農家は、生産した農作物を販売できる状態で市場に届けることがほぼ不可能という残酷な現実に直面しているのです」。
Apeelの今回の資金調達は、市場へリーチできない小規模農家にとって障壁撤廃の第一歩となる。
サプライチェーン構築によって海外市場へのアクセスも支援
資金調達のほかに、ApeelとIFCは、サハラ砂漠以南、メキシコ、東南アジア、中南米の小規模農家のために、Apeelによるサプライチェーンを構築するプログラムも発表した。
米国、欧州などの経済規模のより大きな市場にアクセスできるように支援する。
James Rogerによると、ケニヤで1個1セントで販売されているマンゴーが、ケニヤ都心部で販売されれば1個1ドルになる可能性がある。つまり、米国や欧州などさらに大きな市場にアクセスできれば、ケニヤの農家が得られる収入はさらに増大する。
ApeelとIFCの提携によって、インフラ不足に悩む地域の農家がより多くの市場にリーチできる可能性が高まった。今回の資金調達・IFCとの提携は、Apeelが発展途上国向けのサービスを始動する重要なステップとなる。
Apeelが設立されたのは2012年。設立当初からの目標は、コールドチェーンのインフラが粗末な地域にいる人々にも、同等の供給・需要の機会を提供することだった。
今回の資金調達によって、Apeelは自社が目指す理念の実現にさらに近づいたことになる。
参考記事
Apeel Adds $30M In New Funding to Help Smallholder Farmers Join The Global Food System
Apeel Raises $30M to Help Smallholder Farmers Fight Food Waste and Access New Markets
アイキャッチ画像の出典:Apeel Sciences