このニュースのポイント
- Meat-Tech 3Dが3Dプリンターで厚さ10mmの牛脂肪構造の作製に成功
- 同社は2019年にテルアビブ証券取引所(TASE)に上場した世界初の培養肉企業
- ライセンス契約で他社を「代替肉メーカー」にさせる戦略
- 米国IPOに向けて準備をスタート
- 自社ブランドの構築は視野にない
Meat-Tech 3Dは3Dプリンターを使って培養肉を作るイスラエルの企業。2019年にテルアビブ証券取引所(TASE)に上場するなど、世界で最初に上場した培養肉スタートアップだ。
同社はこの度、培養した牛の脂肪構造の作製に成功した。この発表は、先月のベンチャーラウンドで700万ドルを調達したニュースに続くものとなる。
今回作製に成功した牛肉は、牛脂肪細胞とバイオインクから構成される。幹細胞を分化させて作製した牛の脂肪細胞とバイオインクを3Dプリントすることで、厚さ10mmの脂肪構造を作り出すことに成功した。
これは同社がこれまでに作製した3Dプリント肉よりも大きなものとなる。
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他社を代替肉メーカにさせるMeat-Tech 3Dの戦略
Meat-Tech 3Dは培養肉の工業的な量産に視野を置いている。BtoBに注力し、他社が培養肉生産者になるためのサポートを理念としている。
スーパーやレストラン向けの商品を開発するつもりはない。人気のある培養肉ブランドになることも、陳列棚を占領する人気商品の作り手になることも、同社の関心の的ではない。
「細胞から作るタンパク質の、できるだけ早い工業的な量産の実現に注力している」と開発幹部のSimon Fried氏が語るように、3Dプリンティングを組み合わせた培養肉製造プロセスで他社とライセンス契約を結び、他社が培養肉を作れるようサポートしたいと考えている。
同社は今年8月に培養した細胞からカルパッチョの形状に似た肉のプリントに成功していた。
9月には、培養チキンの開発に特化する企業Chick&Teckを設立している。
さらに、ベルギーの培養脂肪企業Peace of Meat買収計画を進めており、1750万ドルで買収するとされている。
今後の動向として気になるところは、Meat-Tech 3Dが米国IPOに向けた準備を進めていることだ。米国IPOを目指している通り、同社は米国を主要マーケットとして狙っている。
特徴的なのはMeat-Tech 3Dが自社ブランドを持たないことだ。商品のリリースについては沈黙を保っているが、CEOのSharon Fim氏によると、6~8年後を考えているという。
活発化するイスラエルの代替肉スタートアップ
ここ数ヵ月、イスラエル発の代替肉スタートアップの動きが盛んだ。
3Dプリンターで植物肉を開発するSavorEatは、Meat-Tech 3Dに続き、テルアビブ証券取引所に上場した。3Dプリンティング技術を使う代替肉では2社目に上場を果たした企業となるが、テルアビブ証券取引所でのIPOは植物肉では世界初となる。
同じくイスラエル発のFuture Meatは幹細胞ではなく、結合組織を構成する線維芽細胞を使うことで、コストダウンを図る。
培養肉の作製では通常、細胞がくっつくための足場(「土台」のイメージ)が必要となる。線維芽細胞を使うことで、バイオリアクタの懸濁液中での増殖が可能となり、これもコストダウンを実現するという。同社は2021年早期に量産化する予定でおり、FDA承認についても自信を見せている。
世界初となる培養肉レストランをオープンしたSuper Meatは、鶏肉に特化した培養肉を開発している。
開発フェーズから顧客を巻き込む戦略で、同社のレストランに招待された顧客は無料で培養肉料理を楽しめる代わりに、フィードバックを求められる。同社は、1~2年以内にレストランでの販売を当面の目標とし、5年後に工業規模の工場を建設し、本物の肉と同等価格までコストダウンを目指している。
Redefine Meatは3Dプリンターで植物肉を開発している。7月に植物由来のAlt-Steakを発表。1時間あたり50個のステーキを製造できるという。年内に欧州の一部レストランで市場テストするほか、2021年には販売パートナーに産業用バイオ3Dプリンターを広く販売したい考え。
アレフ・ファームズ(Aleph Farms)は宇宙で牛の細胞から筋肉組織を3Dプリントすることに成功し、厳しい環境でも肉を生産できる可能性を示した。
同社は最近の報道で、植物ベースの代替肉よりも、実験室で作られた培養肉の方が、早くに本物の肉と同等価格に達するだろうと述べている。同社は世界大手のカーギル、イスラエル最大の食品メーカー・ストロースなどから出資を受けている。
培養肉の普及について、同じく培養肉の開発に取り組むイート・ジャストは、コカ・コーラのように大衆化するまでは15年かかるとみている。10月に実施されたSKSでも他社の培養肉プレーヤーも同様の見方をしていた。
しかし、使用する細胞で発想の転換をはかるFuture Meat、量産化とコストダウンにコミットするアレフ・ファームズ、そして今回のMeat-Techの成果を見るかぎり、培養肉がコカ・コーラのように「当たり前」になる世界はそう遠くない気がする。そして、そうなって欲しいと願っている。
参考記事
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