調理ロボットを製造するイギリスのモーレイロボティックス(Moley Robotics)が、完全に自動化されたロボット・キッチン「モーレイ・ロボット・キッチン」の販売を発表した。
モーレイ・ロボット・キッチンとは、2015年に話題を呼んだ全自動調理のロボットキッチン。
2019年に販売するとされていたが、ホームページの情報は更新されずにいた。
このほど、5年の沈黙を経て、モーレイロボティックスはついに製品の発売を発表した。
料理だけでなく後片付けもする調理ロボット・モーレイ
モーレイ(Moley)は、料理だけでなく、料理後の片付けまでやってくれる。キッチンとシェフを融合させ、自動化した料理ロボットといえるだろう。
キッチンの上を右に左に動き、2本のアームを使って、鍋や材料を取り出し、混ぜる、切るのほか、蛇口をひねる、材料を注ぐ、皿に盛りつけるなどの作業ができる。
2本のロボットアームがシェフの料理を再現する。アームに搭載されたカメラ・センサーで、食材がこぼれていないか常にチェックし、汚れを発見すると、内蔵されたUV光で滅菌する。
料理が完了したら、自分で片づけ、キッチンの表面をふき、消毒をしてくれる。
人が調理するときは、ロボットアームはキッチンの片側にしまうことができるので、キッチンの主役の座を奪われることはない。
調理器具の配置を正確に把握
モーレイは、どの調理器具が、どこに置かれているかをリアルタイムで把握する。
たとえ、置き場所が間違っていてもだ。
調理器具には特別な標識がつけられており、鍋、ポットや他の器具が配置されている場所を正確に把握する。
キッチンの片側には調理スペースが設置され、必要な時に、自動で調理器具が出てくる仕組みだ。
2015年の発表当初、作れるレシピは1つだけだった。
現在はレシピ数が30にまで増えており、毎月レシピは追加されて、最終的に5000個まで増えるという。
ユーザーはキッチンに内蔵されたタッチスクリーンから、好きなレシピを選ぶことができる。
すべての情報がタッチスクリーンに表示されるので、人が料理するときも、キッチンに接触せずに、引き出しを開けたり、器具や食材を探したりできる。
キッチン全体を保護するスクリーン
キッチン全体には、保護スクリーンがついているので、モーレイが調理中、熱湯がはねてやけどしたり、スープがはねたりして困ることはない。
モーレイが調理を開始するとスクリーンは自動で閉まり、人やペットが料理の「邪魔」をするのを防止する。自分で料理したい場合は、保護スクリーンは開けたままにできる。
必要な調理アイテムは自動で運ばれる
キッチンの奥には器具を補完するスペースがあり、料理に必要なアイテムはすべて自動で運ばれる。
このスペースも自動で開閉できる。複数のセンサーが搭載され、ロボットがリアルタイムで器具の場所を把握するのに役立っている。
温度を変えられる8つの冷蔵庫
キッチン上部には8つの冷蔵庫を内蔵。
異なる食材を、温度を変えて保管することができる。
8つの冷蔵庫は自動で開き、ロボットでも人でも操作できる。
冷蔵庫に収容された材料容器の中身は、システムによって追跡されており、補充や交換のタイミングを教えてくれる。
モーレイロボットキッチンの価格
モーレイは、家庭用と商業用どちらもターゲットとしている。
販売されるタイプは2つで、
ロボットアームなしのモーレイキッチンは12万8000ポンド(約1700万円)
ロボットアーム付きのモーレイキッチンは24万8000ポンド(約3000万円)
100人のエンジニア、30人のキッチンデザイナーが協業し、5年をかけて開発された。関連特許は70にのぼる。
「テスラのように安くしたい」
モーレイによると、最初の購入者の詳細は公開されていないが、来年には「最初の購入者」がモーレイ・ロボット・キッチンを入手するという。
家庭用としては家を買うような価格だが、CEOのMark Oleynikはテスラの電気自動車になぞらえて、さらにコストダウンを実現したいと考えている。
テスラが最初、高価なロードスターを製造・販売してから、手の届くモデル3をリリースしたように、
「テクノロジーが進化するにつれて、テスラの電気自動車のように、大衆向けのさまざまな価格帯のバージョンを生み出していきたいと思っています」
と語っている。
家を1軒買えるほどのスマートキッチン、モーレイ。
10数年後には、5人に1人がモーレイに料理を作ってもらう時代になっているかもしれない。
参考記事
Moley’s Robotic Kitchen Goes on Sale
This robotic kitchen is the ultimate smart home gadget, but you can’t afford it
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アイキャッチ画像の出典:Moley Robotics