フランスのCore Biogenesisが2020年11月にシードラウンドで260万ユーロ(約3億2000万円)を調達した。
同社は成長因子を安価に大量生産する技術開発に取り組むスタートアップ企業。
今回調達した資金で最初の試作品を作り、取引先30社に提供したいとしている。
培養肉開発に必要なもの
培養肉を開発するためには、細胞・培地・成長因子が必要になる。
成長因子は、細胞の増殖、分化、細胞同士のコミュニケーションを促進する重要なタンパク質。
培地は、細胞が成長するための環境のことを言い、培地中に成長因子が添加され、細胞が増殖していく。
分かりやすく図解すると次のイメージだ。
培地の成分で最も高価なのが成長因子であり、培養肉の生産コストを押し上げる大きな要因となっている。
培養肉のパイオニアとして有名なオランダのモサミートは、培地コストを88分の1に下げることに成功しており、培養肉開発にかかるコストはさがってきてはいる。
しかし、培養肉開発に取り組む企業にとって成長因子は現在も高いハードルであり、この問題に切り込もうとしているのがCore Biogenesisだ。
成長因子を安価に量産するCore Biogenesis

出典:Core Biogenesis
Core Biogenesisは2020年に設立されたフランスのスタートアップ。
同社は、神経変性疾患に対する細胞治療と培養タンパク質開発のために成長因子を開発している。
使う技術は、ゲノム編集技術。
成長因子をつくりだす工場として「植物」を使う。
クリスパー(Crispr)を用いたゲノム編集技術で植物を改良し、25倍の量の成長因子を生産させる。こうしてできた成長因子は、これまでの1/10の価格となるという。
クリスパー(Crispr)とは、狙ったDNA配列を正確に切り貼りする技術のこと。切り貼りしたい標的までガイドRNAが案内し、ハサミとなるCas9がカットする。
革新的な遺伝子編集技術とされ、開発したジェニファー・ダウドナとエマニュエル・シャルパンティエは2020年にノーベル化学賞を受賞した。
当メディア運営者の個人ブログでその仕組みを解説している⇒CRISPR-Cas9(クリスパーキャスナイン)の仕組みをわかりやすく解説
Core Biogenesis CEOのAlexandre Reeberによると、
「最終的には1/100から1/200にまでコストダウンする」
11月に調達した資金で成長因子の最初の試作品を開発、新しい研究メンバーを雇用したいとしている。
Core Biogenesisの取引先はすでに30社(すべて非公開)あり、この中には、大手製薬会社から培養タンパク質企業もあるという。
現在、最初の試作品開発に取り組んでおり、今後6ヶ月以内に試験を完了し、取引先に成長因子の提供を開始したいとしている。
培養肉周辺技術に取り組む企業
Core Biogenesisのように、培養肉開発のハードルとなる培地・成長因子の開発に特化する企業は増えている。
アイスランドのORF Geneticsは、大麦の種由来の成長因子を開発している。
主原材料となる大麦は自社が所有する温室で栽培する。50%~60%のコスト削減につながり、今後5年にはさらにコストダウンすると予想している。今年後半に牛、鶏、豚用に試験を開始する予定だ。
ブリュッセルを拠点とするTiamat Sciencesは、植物由来の分子農業技術を用いて低価格な培地、成長因子、抗体、酵素などを製造している。
同社は他社とライセンス契約する予定で、すでに細胞農業企業6社と提携している。2040年までに培地市場のシェア半分を獲得することを目標にしている。
成長因子が高いなら、成長因子を使わず、作り出せばよいと発想を転換させた企業もいる。日本のインテグリカルチャーで、臓器を模倣するバイオリアクタで「臓器に成長因子を作りだしてもらう」手法の開発に成功している。
今回の資金調達はCore Biogenesisにとって初めてのもので、ベンチャーキャピタルXAnge、ロンドンを拠点とするインキュベーターEntrepreneurs First、カリフォルニアのアクセレーターPlug and Play、そのほかエンジェル投資家らが参加した。
Core Biogenesisは2020年5月にAlexandre ReeberとChouaib Meziadiによって設立された。
CTOのMeziadiは植物遺伝学・植物エピジェネティクスのエキスパート。CEOを務めるReeberはバイオテクノロジーを専門とする。
参考記事
French Startup Core Biogenesis Secures US$3.1M To Scale Growth Factors For Cell-Based Meat
GFI:Growth Factor Research is Key to Making Cell-based Meat Affordable
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アイキャッチ画像の出典:Core Biogenesis
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