カリフォルニアを拠点とする代表的な代替肉企業ビヨンド・ミートは、マクドナルドとヤム・ブランズと複数年にわたる新たな提携を締結したことを発表した。
マクドナルドに対しては3年間にわたり植物性代替肉を提供、ヤム・ブランズとは新しい植物性メニューを共同開発する。
ヤム・ブランズはKFC、ピザハット、タコベルを運営するファーストフード企業で、150を超える国に5万店舗を展開する。
ビヨンド・ミートがマクドナルドの「優先サプライヤーに」
ビヨンド・ミートは、植物性バーガー「マックプラント」の優先サプライヤーとしてマクドナルドと3年間の提携を締結。このマックプラントは現在、スウェーデンとデンマークで期間限定で販売されているもの。
2社は、鶏肉、豚肉、卵などほかの代替製品でも植物ベースのメニューを共同開発する。
デンマーク・スウェーデンでの試験販売の発表時、今後もビヨンドの代替肉を使うかについて、マクドナルドは明言していなかった。
また、マクドナルドは2019年9月にカナダでビヨンドバーガーの試験販売をしたが、6ヵ月にわたる試験販売後、完全導入には至らず、マクドナルドによる沈黙の終了にさまざまな憶測が飛んでいた。
欧州での試験販売発表から1ヵ月後、3年間にわたる2社の提携が発表されたことは大きな前進となる。
KFC、ピザハット、タコベル向けに新しい植物メニューの共同開発へ
ビヨンド・ミートはヤム・ブランズとの契約では、今後数年かけてヤム・ブランズ傘下のKFC、ピザハット、タコベル向けに新しい植物ベースメニューを共同開発する。
ヤム・ブランズとの提携については、具体的なタイムラインは公表されていないが、これまでにもビヨンド・ミートはヤム・ブランズと提携して、傘下のブランドでさまざまな試験販売を実施してきた。
2019年にはアメリカ・アトランタのKFCでビヨンドチキンを試験販売。このときはわずか5時間で売り切れるという盛況ぶりだった。
2020年には、ヤム・ブランズは中国のピザハット・タコベルの一部店舗でビヨンド・ミートの植物肉メニューを導入。
同年、アメリカのピザハットで初めてビヨンドの植物肉をトッピングに採用した2種のピザ「Beyond Italian Sausage」「Great Beyond Pizza」を販売。これはアメリカのピザハットが植物メニューを導入した初の事例となる。
さらに、ビヨンド・ミートとピザハットはイギリス・ロンドンでも期間限定で植物性メニューの販売を発表していた。
今年1月には新しい植物性タンパク質の開発でタコベルと提携を発表している。
ヤム・ブランズ傘下のタコベルが植物性メニューを導入するのはこれが初めてとなり、同社は今年中にビヨンド・ミートと共同開発した新しい植物性タンパク質をテストするとしている。
高まるプラントベース食品の需要
ビヨンド・ミートは今回のニュースに先立ち、先月には世界的な食品飲料会社ペプシコと合弁会社(ジョイントベンチャー)を設立することを発表していた。
2社が設立するThe PLANeT Partnershipは、植物ベースのタンパク質開発におけるビヨンド・ミートの最先端技術、ペプシコの世界クラスのマーケティング力・販売力を利用して、新しい植物ベースの軽食やドリンクを開発するもの。
ペプシコ、マクドナルド、ヤム・ブランズが相次いで代替肉企業と手を組むことは、植物ベース食品への需要の高まりを反映している。
Good Food Instituteの報告によると、米国では動物性製品の代替品となる植物ベース食品の売上は過去1年で1.1倍、過去2年では1.29倍になり、50億ドルに増えている。
このデータは2019年年末までのデータを反映したもので、新型コロナウイルスが発生する前のものであるため、今後はさらに増加していくことが見込まれる。
その後の調査報告によると、植物ベース食品の市場は、2027年までに742億ドル規模に達すると見込まれる。
新型コロナに世界中が混乱した2020年、ビヨンド・ミートにとってはニュース続きの1年だった。
新商品を5つリリースしたほか、D2Cサイトをオープン、中国では新作となる豚ひき肉を上海の一部レストランで期間限定で提供した。
中国本土で建設中の2つの工場は今年には稼働を開始する。
これらはすべて植物性代替肉の需要の高まりを反映しているものだが、この中でも、ファーストフードの巨人マクドナルドとヤム・ブランズとの提携が与えるインパクトは大きい。
2大ファーストフード提携の次は?
ビヨンド・ミートの今回のニュースは、代替肉のもう1つの1強インポッシブルフーズに脅威となるだろう。
インポッシブルフーズも小売、D2Cを展開するほか、バーガーキング、スターバックスなどと提携している。
市場での展開にはどちらも勢いがあるが、昨今のニュースを見ていて気になるのは、ビヨンド・ミートの競争力をアップさせる可能性のあるある企業の存在だ。
インポッシブルフーズの代替肉に美味しさの秘訣として使用される独自成分「ヘム」は他社へは販売されていない。
遺伝子組換え酵母によって作り出されたインポッシブルのコア技術だが、この「ヘム」に代わる新しい「ヘム」を開発する企業が登場している。そして、この企業は自社の「ヘム」を他社へ販売したいとしている点に注目したい。
本物の肉に近づける重要成分「ヘム」をビヨンドが入手したら、同社の代替肉の品質、美味しさがさらにグレードアップする可能性が高い。実際に、この新しい「ヘム」をビヨンドバーガーに吹きかけた人は味が改善されたことに驚きのコメントをしている。
これは私の憶測にすぎないが、ファーストフード業界でのシェア拡大の次には、肉に添加して味をグレードアップさせる周辺技術に強みを持つスタートアップとビヨンドがコラボするかもしれない。
細胞農業によって開発される培養脂肪を植物肉に組み込むことだって考えられる。
いずれにせよ、代替肉のスタートアップ企業が世界的なファーストフードの巨人と提携したことで、植物性代替肉のシェアと認知度がさらに拡大するのは間違いない。
参考記事
Beyond Meat Going More Mainstream with McDonald’s, Yum Brands Deals
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アイキャッチ画像の出典:ビヨンド・ミート