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ほうれん草の葉を使った培養肉用の新しい食用足場|ボストンカレッジの研究論文

 

ボストンカレッジの研究チームは、培養肉開発用にほうれん草を使った食用足場を開発したことを発表した。

Food BioScienceに掲載された研究論文によると、細胞を取り除いたほうれん草の葉から生成された食用足場は、ウシの細胞を生きた状態で維持し、培養肉に成長させられる可能性があるという。

出典:upi.com

2050年には世界人口が100億人に達すると予想されるなか、高まる食料供給の需要を満たす新たな食料供給手段として、世界中のスタートアップが培養肉の開発にしのぎをけずっている

培養肉は動物から採取した細胞をバイオリアクターで培養し、成長させて「本物の肉」とするもの。

畜産肉と比べ、使用する土地、水が少なく、温室効果ガスの排出を大幅に減らせるほか、動物由来の感染症の予防にもなり、代替タンパク質の1分野として近年注目されている。

細胞培養による培養肉の開発では、細胞の接着、増殖、分化を促して、立体構造を保持するための「土台」「骨組み」の役割をもつ「足場」が必要となる。

栗羊かんの栗が羊かんの中で安定していられるのは、栗が羊かんを土台として安定した状態を保持できるため。

細胞も同様で、細胞が成長し、組織構造を形成するためには、細胞(=栗)をささえる足場(=羊かん)が必要となる

培養肉の中には、ゼラチンを使った足場や、アニマルフリーな食用足場を開発している事例がある。

例えば、3Dプリンターによる培養リブロースを開発したイスラエルのアレフファームズ大豆由来の足場を使用している。

これに対し、ボストンカレッジの研究チームはほうれん草の葉を使った食用足場を開発した。

この研究は、ほうれん草の葉由来の足場を使用して、ヒトの心臓組織を作製した以前の研究に基づいている。

これは、ほうれん草から細胞を取り除いた網目状の葉脈がヒトの心臓組織の成長を促進することを示した研究であった。

出典:Decellularized spinach: An edible scaffold for laboratory-grown meat

この研究に従事したGaudette教授は今回、細胞を取り除いたほうれん草の葉脈を牛の細胞を成長させるための足場として使用。

ほうれん草由来の足場に播種された牛の細胞は14日間にわたり約99%が生存率を維持した。その約25%が筋肉のタンパク質の1つ、ミオシンに分化した。

つまり、ほうれん草由来の足場で細胞は2週間生存し続け、一部が筋肉組織に分化した

研究論文によると、ゼラチンでコーティングされたシャーレで培養された細胞(対照群)と、ほうれん草由来の足場で培養された細胞とで、生存率、分化など各項目に統計的に有意差はみられなかった

ゼラチン足場(a)とほうれん草足場(b)の生存率を比較したもの 出典:Decellularized spinach: An edible scaffold for laboratory-grown meat

これより、脱細胞化されたほうれん草は、費用対効果が良く、環境に優しい足場であり、培養肉の開発を加速させる可能性があることが示された。

研究論文の著者の1人、Gaudette教授は次のように述べている。

「以前の研究では、ほうれん草の葉を心筋シートの作製に使えることを示しました。この最新研究では、肉を成長させるためにほうれん草を使用できることが示されました。(略)

筋肉細胞は足場依存性で、成長するために何かにつかまる必要があります。研究室では、プラスチックの培養プレートを使用しますが、プラスチックは食用ではありません」(Gaudette教授)

研究では脱細胞化されたほうれん草の葉を培養肉開発に使用する可能性が示されたが、この技術の商用化には課題があることも論文の中で指摘している。

課題とは、細胞の増殖と分化を促進するには巨大なバイオリアクターシステムが必要になること、これらのバイオリアクターの中で足場依存性の細胞が付着するためのマイクロキャリアを組み込む必要もあること、バイオリアクター内で細胞死を防ぐためにせん断応力を最適化する必要があることなどだ。

ゼラチン足場(a)とほうれん草足場(b)の分化率を比較したもの 出典:Decellularized spinach: An edible scaffold for laboratory-grown meat

研究論文の最後でほうれん草を使うメリットは、細胞を除去したほうれん草の葉脈が酸素を拡散するための「自然な血管網」としての役割を果たすだけでなく、食用性にあるとしている。

足場に合成材料を使用すると、培養組織から足場を取り除くために処理が必要となるが、ほうれん草であれば成長した後に組織から足場を取り除く必要がない。

さらに、ほうれん草が安価であることも、商用化する上で重要だとしている。

足場のアップデートに取り組むのはボストンカレッジのほかに、アメリカのMatrix Meatsなどのプレーヤーもいる。

同社はカスタマイズ可能な足場を開発しており、すでに7カ国14社の培養肉企業と協業している。

 

参考記事

Decellularized spinach: An edible scaffold for laboratory-grown meat(論文全文)

Spinach leaf skeleton serves as eco-friendly scaffold for lab-grown meat

Decellularized Spinach Serves as an Edible Platform for Growing Artificial Meat

Veins of spinach leaves used as scaffolding for lab-grown meat

 

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