フードロス

機械学習でフードロス削減に取り組むFloWasteが約1億2400万円を調達

 

フードロス削減に取り組むFloWasteがシードラウンドで110万ドル(約1億2400万円)を調達した

同社はアメリカ、インディアナ州を拠点とするスタートアップ企業で2020年に設立された。

機械学習、高解像度カメラ、コンピュータービジョンを活用し、廃棄される食品を自動的に分類、定量化することで、レストランやカフェなどのキッチンがフードロスの把握、削減を可能とするサービスを開発している。

廃棄される食品を機械学習で自動的にデータ分析

出典:FloWaste

米国環境保護庁によると、埋立処分された食品廃棄物から排出される温室効果ガスの85%以上は、生産、輸送、加工、流通など廃棄前の活動に起因している

レストラン、食品加工業者、カフェテリアなどの厨房で食品を処理する際に、廃棄される食品の種類・量を可視化することは調達コスト、フードロス削減に役立つだけでなく、環境負荷の削減にも寄与する。

FloWasteを導入するにあたって、クライアントは追跡したい20の食品を特定する。FloWasteのチームはこれらの食品を認識するように自社の機械学習システムをトレーニングする。

次に、チームはクライアントの作業場、生産ライン、ゴミ箱の上に高解像度カメラを設置。カメラは食品の生産プロセスをモニタリングし、食品を自動的に分類し、廃棄される量を定量化する。

キッチンスタッフがデータを入力する必要はなく、廃棄作業するだけで廃棄される食品データが自動的に記録され、スタッフはデータとカスタマイズされた提案にいつでもアクセスできる。

同社のシステムは、工業用食品部門と商業用食品部門の両方で使用できるという。

FloWasteの取引先の1社であるヨーロッパのタンパク質生産者は、同社システムを使用して牛肉生産ラインの廃棄物をモニタリングしている。創業者兼CEOのRian Mc Donnell氏は「タンパク質は高価なため、莫大な経済的利益がある。収量の増加は、長期的に屠殺する牛を効果的に減らせることにもなるので、環境的な利益も莫大だ」と語る。

創業者兼CEOのRian Mc Donnell氏 出典:siliconrepublic

公式サイトによると、FloWasteのシステム導入により、調達コストと廃棄コストを年12,000ドル節約できるという。手動による在庫確認、廃棄確認も減り、キッチンスタッフは1日あたり35~50分の時間をより重要なタスクに割り当てることができる

ファーストフードへの導入も視野に

出典:FloWaste

Mc Donnell氏によると、さまざまな食品を認識するようシステムをトレーニングするには時間を要したが、システムが知識を構築するにつれて、使用の拡大が容易になることを望んでいる。

FloWasteは調達した資金で、技術の強化を図る。同社は既製のカメラを使用してゼロからハードウェアを作る課題にも取り組む。現行のシステムをさらにシンプルにするため、フルタイムのIoTエンジニアを採用することも計画している。

さらに、今後9ヵ月以内に100箇所に同社システムを試験導入する契約を締結している。

現在、カフェテリアへの導入に向けて動いているが、長期的には提携先を増やし、ファーストフードにも導入したいと考えている。

出典:FloWaste

今回のラウンドはUnderdog Labsが主導し、オランダの世界的なアクセラレーター・ベンチャーキャピタルRockstartが参加した。FloWasteは現在、Rockstartのコホートに参加している。

今年3月のプレシードでは、アメリカのベンチャーキャピタルFlywheel FundPlug and PlayCulvex Investmentsなどからも資金提供を受けた。Plug and PlayはPayPal、Dropboxなど20のユニコーン企業に初期のころに出資していたグローバルなベンチャーキャピタル/アクセラレーターとなる。

ラウンドに参加したRockstartのMark Durno氏は、「FloWasteのソリューションは問題に対処するだけでなく、バリューチェーン全体に適用でき、細分化された業界の廃棄物削減機能になるから投資した」とコメントしている。

FloWasteと似たサービスを展開するスタートアップにオランダのOrbiskがいる。

Orbiskの場合も、ゴミ箱に設置したモニターが食品廃棄物を自動的に登録し、内蔵のAIが廃棄される食品を正確に認識する。すでにレストラン50店舗に導入されており、10月には欧州委員会の欧州イノベーション会議(EIC)から240万ユーロの助成金を受けた

 

参考記事

FloWaste Raises a $1.1M Pre-Seed Round To Reduce Food Waste With Machine Learning

FloWaste Raises a $1.1M Pre-Seed Round To Reduce Food Waste With Machine Learning

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Getty

 

関連記事

  1. レストラン厨房のフードロス削減に取り組むOrbiskが約1億36…
  2. Colloが開発した、電磁場を利用して牛乳工場の損失を防ぐ「液体…
  3. 廃棄パンからクラフトビールを作る香港企業Breer、4名の香港大…
  4. 【現地レポ】シンガポール展示会(Agri-Food Tech E…
  5. 果物の鮮度保持シールStixFRESHを開発する米Ryp Lab…
  6. 廃棄される果物の皮からドライフルーツを製造するRINDが約6.7…
  7. 食料品店の救世主!食品廃棄を減らして売上を伸ばすShelf En…
  8. RoboBurgerが世界初のハンバーガー全自動販売機の提供を開…

おすすめ記事

3D Bio-Tissuesが植物性足場を使用しない培養ステーキ豚肉の開発に成功

イギリスの培養肉スタートアップ3D Bio-Tissuesは、100%の培養ステ…

【現地レポ】シンガポール展示会(Agri-Food Tech Expo Asia 2022)参加レポート(代替タンパク質にフォーカス)

2022年10月26日~28日の3日間、シンガポールのマリーナベイ・サンズにある…

スイスの食品大手ジボダン、ビューラー、ミグロが共同で培養肉の実証プラント建設を発表

スイスの大手食品企業が培養肉市場に参入する。ジボダン、ビューラー、ミグロは共同で…

EUが精密発酵・藻類由来食品を開発する企業に約78億円の資金提供を発表

欧州連合(EU)は今月、欧州イノベーション会議(EIC)の「Work Progr…

中国の培養肉業界の今をクローズアップ-2021年11月-【政策/企業の開発動向/投資動向/法規制】

今年、中国の培養肉企業2社に対し資金調達が実施された。この記事では、中国…

植物の葉緑体を活用して成長因子を開発するBright Biotechが約4億円を調達

分子農業で培養肉用の成長因子を開発する英Bright Biotechはシードラウ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

リアルセミナー@東京のお知らせ【2025/6/18】

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(06/18 15:20時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(06/19 01:15時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(06/19 05:15時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(06/18 21:22時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(06/18 13:25時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(06/19 00:28時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP