南アフリカの培養肉企業であるMogale Meatは、「南アフリカのみならず、アフリカ大陸全体で初となる培養鶏胸肉の製造」を発表した。
培養鶏胸肉は、本物の鶏の筋肉・脂肪細胞を「マッシュルームマトリックス」と呼ばれるものと混合させたもので構成されている。これはMogale Meat初のプロトタイプ発表であり、2022年後半には同社初となる野生肉プロトタイプの公表を予定している。
Mogale Meatは昨年、アフリカの食料安全保障と今後30年で2倍に増えるであろう人口問題への解決策として、アフリカに住む人々が培養肉を食べられるように取り組んでいると発信していた。今回の進展は企業にとって、「人々にとってより理想的な動物タンパク質を生産する新しい主要技術の誕生」だとしている。
「FEEDING THE NEXT BILLION」コンテストのセミファイナリストに
Mogale Meatは、XPRIZE財団が主催する「Feed the Next Billion」という総額1500万ドル・4年間に渡る国際コンテストに参加し、アフリカ大陸から唯一のセミファイナリスト(全28社)として選出された(厳密にはMogale Meatが運営パートナーを務めるMeat Our Futureがセミファイナリストとして選出されている)。
非営利組織であるXPRIZEは、このコンテストによって世界の食料のサプライチェーンに革新を起こし、その過程で肉業界の転換が起こると主張している。
このコンテストは、世界のフードシステムを深く分析したXPRIZE’s Future of Food Impact Roadmapの結果をもとに開催されており、この分析では大規模な代替タンパク質の世界的なニーズがあることが示されている。世界的ニーズを満たすためには、動物由来のタンパク質よりも健康的かつ環境にも配慮しつつ、重要な技術進歩と価格の低下、また消費者の嗜好の変化が必要とされることが言及されている。
なお日本の企業からも、インテグリカルチャー、ダイバースファームがセミファイナリストに進んでいる。
人が住む場所の近くで稼働できる培養肉製造工場
Mogale Meatが開発している工場は、人々が住むところでも培養肉を利用できるような、組み立ててすぐに使用できるプラグ・アンド・プレイ式の独自の製品工場である。
Mogale MeatのCEO兼創業者のPaul Bartels氏は、「Mogale Meat社は、自然に寄り添った食品技術を進化させることで健康的な野生肉に対する人々の見方や食べ方を変えるだけでなく、野生市場や国立公園、野生動物と共に生活するコミュニティの経済的・社会的な健全度を上げるなどして水準を上げている」と発言している。
現在エチオピア、ケニア、ソマリアの約1,300万人が深刻な飢餓に直面しており、2022年の間には、これら3か国の1,500万~2,000万人が深刻な食糧不安に直面する可能性があるという。
Mogale Meatはアフリカの人々が健康的な動物タンパク質を入手できるようにするだけでなく、アフリカ大陸の野生動物や生物多様性の保護にも取り組んでいる。
南アフリカで活動する培養肉企業
現在南アフリカで活動している細胞培養肉企業としては、培養牛肉を開発するMzansi Meat、培養シーフードのSea-Stematicが存在する。
Mogale Meatは鶏肉のほか、アフリカの草原、砂漠に生育するアンテロープ(レイヨウ)培養肉の開発にも取り組んでいる。
アンテロープに焦点をあてる理由は、他社培養肉企業との差別化と、アフリカの野生動物保護のためだ。Mogale Meatはこの実現のため、アンテロープと牛の500を超える凍結保存された細胞バンクを構築している。
Bartels氏は「私たちの戦略は2つある。1つは、赤身で健康的な栄養価の高いアンテロープ肉に焦点を当てることであり、もう1つは、さまざまなアンテロープ種により味や食感の違う新しい食品を生み出すことだ」と2021年後半に言及している。
アフリカならではの生物多様性を守りつつ、今後の食糧問題に立ち向かうため、様々な企業が立ち上がっているようだ。
参考記事
Mogale Meat Has Big Cultivated Meat Plans for Africa, Starting With Chicken
Mogale Meat Unveils Africa’s First Cultivated Chicken Breast
XPRIZE Launches $15M Competition “Feed the Next Billion”
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Mogale Meat