カリフォルニア、サニーベールを拠点とするNovoNutrientsは、二酸化炭素、水素、微生物を原料に「牛タンパク質と同品質のタンパク質」の生産に成功したことを発表した。
米NovoNutrients、牛タンパク質と同品質のCO2由来タンパク質の生産に成功
Medallion Labsが実施した試験データによると、NovoNutrientsのタンパク質成分は、代替肉の原料に使用される大豆やえんどう豆などの植物タンパク質成分の公表スコアを上回ることが示された。また、WHOが定めた、体内でのタンパク質の消化性や利用性を判断するPDCAAS(たんぱく質消化性補正アミノ酸スコア)では、牛肉スコアと同等の1.14を達成したという。
この結果は、NovoNutrientsの代替タンパク質が水産飼料から、ヒト用のさまざまなタンパク質製品に活用できることを示している。プレスリリースによると、同社のタンパク質は必須アミノを全て含み、ニュートラルな味でアレルギー誘発性は低い。
同社技術は数億トンの二酸化炭素削減につながるとともに、数億トンの高品質タンパク質を生産する可能性を秘めている。従来のタンパク質生産に必要な土地と水の一部のみを使用するため、サステイナブルな食料生産につながるものとして期待される。
日本企業とも協業、動物試験を日米で実施
NovoNutrientsは、大気中に豊富にある二酸化炭素を含有する産業排出物と水素を主要原料に、二酸化炭素を栄養源にする微生物を作り手として活用する。
微生物が二酸化炭素、水素、酸素を取り込んで、完全かつ安全で天然の単細胞タンパク質(SCP)に変換する。収穫されたものを乾燥し、精製して目的のタンパク質濃縮物としている。
アメリカと日本で実施された複数の動物試験では一貫して、消化性と嗜好性で高スコアが示されたという。また、アメリカの石油会社と日本の産業会社(社名は非公開)との協業で、さまざまな産業排出物をクリーンなタンパク質に変換できることが確認されている。
NovoNutrientsは世界中のパートナーと協力して、二酸化炭素の回収・有効利用を促進し、タンパク質サンプルを生産している。より多くのパートナーにこの技術への優先的かつ早期のアクセスを提供するために、交渉を続けているという。
公式サイトによると、NovoNutrientsの最初の世界規模の工場は、年間20万トン以上の二酸化炭素をアップサイクルできると試算されている。
バイオサイエンス推進議連、合成生物学への投資強化を提言
西村康稔衆議院議員は今月12日、自身が会長代行を務めるバイオサイエンス推進議連で、「バイオものづくり革命の実現に向けた提言」を岸田総理大臣へ提出した。
提言では、二酸化炭素を活用した生分解性プラスチックなどの合成生物学分野に対し、アメリカ、中国などの国で投資競争が激化していることに言及、日本もバイオものづくり分野に「大胆かつ重点的な投資を行うべきだ」と指摘している。
会長代行務めるバイオサイエンス推進議連で提言を総理に手交。私からは、先日の訪米時に感じた、ITで成功した高齢の資産家がフードテックやヘルステックへ投資する大きな流れを報告し、CO2から生分解性プラスチックや培養肉作る試みなど先端的な取組みを紹介しました。研究開発、人材育成も重要です。 pic.twitter.com/SIwB8WiAcx
— 西村やすとし NISHIMURA Yasutoshi (@nishy03) May 16, 2022
国内ではCO2資源化研究所(UCDI)が、独自の水素細菌を活用して動物性タンパク質を開発している。
UCDIの水素細菌は高温でも生育できるため、雑菌による汚染リスクを低減できるという特徴がある。また、24時間で1グラムから16トンに増える桁違いの生成スピードを誇り、工業規模のバイオプロセスに使用されるのとほぼ同等の倍加時間を実現している。
海外ではDeep Branchやソーラーフーズなども二酸化炭素を原料に代替タンパク質の開発・生産を進めている。
微生物の発酵を活用したタンパク質生産は、少ない資源で効率的にタンパク質を作れる次世代タンパク質として海外では開発も投資も加速している。地政学リスクが特に顕在化した今、さらに導入と投資が求められる分野であり、国内でも政府主導のさらなる取り組みが期待される。
参考記事
NovoNutrients Makes Beef-Quality Protein from CO2 Instead of Cattle
関連記事
アイキャッチ画像の出典:NovoNutrients