フィンランド企業ソーラーフーズ(Solar Foods)は今月17日、フィンランド薬局年金基金(The Pharmacy Pension Fund)より1000万ユーロ(約12億8000万円)の出資を受けた。
これは代替タンパク質ソレインを生産する工場「Factory 01」に対する出資となる。
「Factory 01」は、ソレインを商用生産する生産施設として2021年第4四半期に着工し、2023年上半期に商用生産を開始する。
二酸化炭素を活用して作られる高効率なソレイン
ソーラーフーズは、空気、微生物、電気を使って代替タンパク質ソレインを開発するフィンランド企業。
同社は、水の電気分解で得られる水素、酸素に加え、空気中に無尽蔵にある二酸化炭素を微生物の「餌」として活用することで、効率的にタンパク質を生産している。
微生物が水素、酸素、二酸化炭素を消費し、増殖すると、微生物の体内に単細胞タンパク質(SCP)が生成される。SCPから不要な有機物を除去し、乾燥、粉末したものがソレインとなる。同社はSoleinを使用して、バーガーパテ、ミートボールなど約20の商品を開発している。
ドイツの研究チームによると、微生物を活用したSCPは、大豆などの作物と比べ、収獲効率が10倍高いという。
1kgの牛肉を生産するには、360㎡の土地と130,000L以上の水が必要となる。これに対し、ソレインは、0.1%の土地と1%の水ですむ。ソレインの商用生産が実現すると、砂漠、北極、宇宙など、以前は生産が不可能だった地域でも食料生産が可能となる。
ソーラーフーズは現在と未来の食生産の変化を体感できる、インタラクティブマップ「新世界のフードマップ」を公開している。
同マップが示すように、微生物を活用した代替タンパク質は、「タンパク質生産を農業から切り離すと、牧草地が森林に戻り、炭素吸収源に変わる」可能性を示している。
2023年、ソレインの商用生産を開始
来年稼働予定の「Factory 01」では、訪問者はソレインの生産プロセスや食品への使用方法を見学することができる。
これは、「空気タンパク質」とイメージされる(実際は空気のみから作られるわけではない)ソレインの生産プロセスを可視化し、消費者受容を高める狙いがある。
「Factory 01」はヘルシンキ・ヴァンター国際空港近郊に位置し、海外からの訪問者も簡単にアクセスできる。さらに、ヘルシンキ市内中心部からもわずか20分の立地に建設されるため、食料が都市内で生産される新しい食の世界を具現するものとなる。
ソーラーフーズは新施設の建設に総額3500万以上を投資してきた。今回の資金調達は、昨年4月のフィンランド気候基金からの出資に続くものとなる。
フィンランドのフードテックの背景にあるものとは
国連が発表した「2021年度版 SDGs達成度ランキング」で、フィンランドは1位を獲得した。フィンランドのSDGsを推進する駆動力として、フィンランド政府が直営するの国営企業・フィンランド技術研究センターVTTの存在を無視できない。
VTTは研究設備の貸し出しから共同研究まで、産官民のコラボレーションを積極的に進めている。
VTTのスピンオフベンチャーとして設立されたフードテック企業には、精密発酵で卵白を開発するOnego Bio、代替魚粉用マイコプロテインを開発するeniferBio、食品廃棄物のアップサイクルで魚粉、ペットフードなどタンパク質を開発するVolare、ソーラーフーズがある。
ソーラーフーズはフィンランド技術研究センター(VTT)とラッペーンランタ工科大学の研究プロジェクトのスピンオフベンチャーとして2017年に設立された。
VTTでは細胞農業によりコーヒーを生産する研究プロジェクトや、酵母を活用した油脂の開発プロジェクトも進行している。
参考記事
Solar Foods and Pharmacy Pension Fund of Finland sign €10m Factory 01 investment agreement
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アイキャッチ画像の出典:Solar Foods