培養牛肉を開発するアメリカ企業SCiFi Foodsは、培養牛肉製品について初となるライフサイクルアセスメント(LCA)を実施した。オハイオ州立大学が実施した研究内容により、気候変動への影響において、培養牛肉は畜産牛肉より環境負荷が少ないことが示された。
学術ジャーナルSustainabilityに公開された論文は、培養肉と畜産肉の環境への影響を比較した査読付き論文となる。
SCiFi Foods、培養牛肉製品の環境メリットを証明
培養肉については水使用、土地使用の削減効果に関する報告がある一方で、気候変動での利点においては議論が残っていた。気候変動に関連する培養肉の利点を主張する研究は限られており、培養牛肉について特別に実施されたものはなく、これが培養肉の批判につながっていた。
こうした背景から、SCiFi Foodsは培養肉の持続可能性に関する主張が正しいことを示すため、LCAを実施した。ある製品のライフサイクル全体における環境への影響・負荷を定量的に評価する手法をLCAという。
研究チームは、培養牛肉(16.9%)・大豆などの植物成分(32.5%)から構成されるSCiFiの培養ハイブリッド肉バーガーと、動物由来の牛肉バーガーを比較した。温室効果ガス排出量、エネルギー、土地利用、水使用など消費に関する全評価項目において、SCiFiのバーガーは牛肉バーガーよりも環境負荷が少ないことが示された。
論文によると、SCiFiのバーガーは動物由来バーガーよりも、温室効果ガス排出量が87%少なく、エネルギー消費は39%少なく、土地と水の使用量はそれぞれ90%、96%低いことが確認された。
冷蔵、包装、流通などプロセスの一部の影響は非常に似ていたが、「全体的に、SCiFiバーガーの環境負荷が大幅に少ないことは疑いの余地がない」という。論文の最後では、同バーガーが従来の牛肉よりも大幅に環境改善できることが実証されたと書かれている。
この研究では、再生可能エネルギーのみの使用は前提としておらず、SCiFiのバーガーが再生可能エネルギーを使用した場合、さらに環境効果が期待できる可能性がある。また、SCiFiバーガーはインポッシブルバーガーやビヨンドバーガーなどの植物肉パテと、LCAの結果が同等だったという。
共同創業者兼CEOのJoshua March氏はこの結果について、「正直なところ、私たちがやっていることが本当に影響をもたらしていることを証明できて感激しています」とコメントしている。
培養肉の正当性を認める成果
この研究成果はSCiFi Foodsの製品に限定したものだが、培養肉の正当性を認めるものになり、培養肉業界やスタートアップ各社を後押しするものになると同社は考えている。
2019年設立のSCiFi Foodsは、最初に上市する製品として、植物成分をブレンドした培養牛肉バーガーを開発している。同社はマイクロキャリアを使わない牛細胞の浮遊培養を業界で初めて実現。CRISPR技術を使用することで、接着細胞培養と比較して、コストを1000分の1に削減できるとしている。
SCiFi Foodsの研究所はイーストベイ、サン・レアンドロにある。2023年初頭にパイロット工場の着工を予定しており、2024年に培養肉バーガー上市を目指している。
参考記事
Environmental Life Cycle Assessment of a Novel Cultivated Meat Burger Patty in the United States
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アイキャッチ画像の出典:SCiFi Foods