国連食糧農業機関 (FAO)と世界保健機関 (WHO)は今月、共同開催したウェビナーで、培養肉の安全性に関する新たなレポートを発表した。
「細胞由来食品の食品としての安全性(Food safety aspects of cell-based food)」と題したレポートには、昨年11月にシンガポールで開催されたFAO主導の専門家会合の結果が含まれている。
このレポートは、培養肉がグローバル市場で広く販売される前に、重要な食品安全性の問題をタイムリーに把握することを目標としている。これにより、関連当局、特に下位中所得国の当局が、細胞由来食品の生産に関する最新の情報と科学的知識を把握し、今後重要となる規制措置を検討し、経験ある国から学ぶことが可能となる。
FAOはプレスリリースで培養肉はもはや未来の食品ではなく、100社以上の企業が培養肉を開発し、商用化・承認を待つ状態にあると言及。そのうえで、培養肉の商用生産が拡大する前に、消費者にとって最も重要な問題の1つである安全性について対応する必要があると指摘している。
FAOとWHOが培養肉の安全性に関する新レポートを発表
このレポートには、細胞由来食品の生産プロセスの原理、培養肉生産に関する規制枠組みのグローバルな状況、用語の問題に関する情報、日本を含めた主要国の認可状況やルール形成の現状や、イスラエル、カタール、シンガポールの3ヵ国に関する詳細なケーススタディが記載されている。
包括的な食品安全性ハザードの特定を実施したFAO主導の専門家会合の結果がレポートの中核をなしており、特定されたハザードが因果連鎖の事例と共にまとめられている。
専門家会合では、細胞由来食品の生産における①細胞の調達、②細胞の成長と生産、③細胞の収穫、④食品加工の4段階に関連するハザードについて議論された。専門家は、多くのハザードがすでに周知のもので、従来の方法で生産された食品にも同様に存在する一方で、細胞由来食品生産に特有の特定材料、成分、設備について焦点をあてる必要がある可能性について同意している(p ix)。
レポートは、「規制当局が情報に基づいた意思決定を行うための、細胞由来食品の安全性に関する情報とデータが限られている」現状に触れたうえで、「必要な規制措置の作成に向けて、エビデンスに基づいたアプローチを採用するためには、積極的かつグローバルなデータ共有が望まれる」と指摘している(p39)。こうした国際的な連携・データ共有は、特に下位中所得国の食品当局にとって恩恵になるとしている(p ix)。
「思い描いていた国際水準への一歩」
オランダの培養肉企業モサミートの共同創業者でありCSO(最高科学責任者)のマーク・ポスト博士は本レポートの発表にあたり、公式Facebookで次のコメントを発表している。
「このFAOレポートは、2013年に世界に培養肉を紹介したときに必要になると思い描いていた国際水準への一歩になります。私たち(FAO技術パネル)は培養食品を作る際の安全性リスクを評価し、対処できる信頼できる分野を特定しました」
「また、細胞農業を批判する人々の間で一般的な非科学的シナリオを評価したところ、これ以上議論するに値しないほど可能性が低いことがわかりました。つまり、食品としての培養肉の安全性リスクは、従来の肉と同様であり、従来の肉と同様に適切な取り扱いと検査によって抑えることができます」
参考記事
Food safety and quality/Cell-based food
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アイキャッチ画像の出典:Mosa Meat