イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズ(Aleph Farms)は欧州連合(EU)非加盟国であるスイスでアレフ・カットを販売するために、スイス連邦食品安全獣医局(FSVO)に申請書類を提出したことを発表した。
プレスリリースによると、欧州で培養肉申請を行ったのはアレフ・ファームズが初となる。
スイス当局への申請では、スイスの小売大手ミグロス(Migros)が協力した。ミグロスは2019年にアレフ・ファームズに出資している。
二社は提携の一環として、スイスの高級レストランなどを通じた培養肉製品の流通・商品化を含む市場開拓戦略でも協力する予定だ。AgFunderの報道によると、スイスの承認プロセスには12~24ヵ月かかる可能性があるという。
アレフ・ファームズは今年後半にシンガポール、イスラエルでアレフ・カットを数量限定で発売することを予定している。欧州の承認プロセスには最低約18ヵ月かかると予想されており、今年5月時点でいずれの培養肉企業も欧州当局(EFSA)に申請をおこなっていない。そうした中、アレフ・ファームズがスイスで申請したことは、欧州の培養肉業界にとって前向きなニュースとなる。
スイスの培養肉業界
アレフ・ファームズとミグロスが共同で実施した調査によると、スイスの消費者の74%が培養肉を試すことに前向きだという。こうした高い関心には、好奇心に加え、サステナビリティや動物福祉などの原則に則りたいという願望が背景にあるようだ。
ミグロスは2022年7月、培養肉の生産、流通を加速するため、イスラエルの培養肉企業スーパーミートと提携した。ミグロスのグループ会社ELSA-MifromaでCEOを務めるMatthew Robin氏は、「スイスは培養肉開発における欧州への玄関になると考えています」と述べていることから、ミグロスがスーパーミートの承認申請も支援している可能性は高い。
ミグロスはまた、2021年にスイス企業ジボダン、ビューラーと提携し、培養肉工場の建設を発表した。チューリッヒに建設されるCultured Food Innovation Hubには研究所、細胞培養・発酵用設備が設けられる予定で、年内の開設を予定している。
スイスで唯一確認されている培養肉企業Mirai Foodsは今年2月、厚さ1.5cmを超える培養ステーキ肉の作製を発表した。Mirai Foodsは植物タンパク質とブレンドしたハイブリッド製品の開発で海外の代替肉企業とも提携している。
気候変動における培養肉の重要性
再生可能エネルギーを使用した場合、培養肉生産により温室効果ガスは92%、使用する土地は95%、水の使用量は78%削減できるとCE Delftは予測している。
大量の天然資源に頼ることなく、わずか数週間で工場という閉鎖空間で製造できる培養肉は、環境負荷を軽減し、食生産をローカライズ化し、気候や地政学的な変動に対して安定したタンパク質供給を可能にすると期待されている。
昨今、地球温暖化による異常気象が数多く確認される中、アレフ・ファームズは、気候変動に関して培養肉は2つの点で重要だと考えている。第一に、ごくわずかな排出量の高品質なタンパク質を提供することで気候への悪影響を軽減できること。第二に、すでに生じている気候変動の影響に適応するうえで、培養肉の製造は特定の気候条件への依存度が低く、極端な気候現象に対して高い耐性がある点だ。
アレフ・ファームズは、食品に対する品質重視の姿勢で知られるスイスの消費者が培養肉を受け入れれば、培養肉の世界的な普及に弾みがつくと見ている。
参考記事
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Aleph Farms