ドイツの培養肉企業Innocent Meatが先月、300万ユーロ(約4億8000万円)の資金調達に成功した。
2020年設立のInnocent Meatは、食肉加工業者が培養肉を社内で直接生産することを可能にする「プラグアンドプロデュース・ソリューション」の提供を使命としている。
同社は食肉業者向けの培養肉生産システムだけでなく、細胞の成長と分化に必要な成長因子も自社で分子農業により開発している。
Innocent Meatは新たに調達した資金で、パイロット工場をスケールアップし、販売に向けた認証プロセスを開始する予定だ。
食肉生産者の培養肉生産を可能にするソリューション
Innocent Meatが提供するプラグアンドプロデュース・ソリューションには何が含まれるのか。
同ソリューションには、バイオリアクター、培地ろ過システムなどのハードウェア、生産プロセスを管理するAI駆動型ソフトウェア、幹細胞、足場、培地など生産に必要な原料が含まれる。つまり、培養肉製造に必要なハード・ソフト・原料をすべて提供する。
クライアントは原料をバイオリアクターに入れ、ソフトで管理することで、自社で培養肉生産が可能となる。これにより、現在の食肉加工業者が自社で培養肉を製造し、直接、ソーセージやパテなどに加工することが可能となる。
バイオリアクターの設置は6㎡というスペースですみ、週に約1トンの培養肉を生産できるという。これは約30頭の豚に相当する量となる。
食肉業者に専門知識がなくても培養肉生産へ移行できるよう、AI駆動型ソフトウェアが細胞の増殖から分化にいたるまで、プロセス全体を自動でモニタリング・制御するという。
プレスリリースによると、灌流培養プロセスではすでにラボスケールを脱却しているという。
Innocent Meatは、農家、食肉生産者、消費者全員にとって「勝ち」となるソリューションを目指しており、農家とは、バイオ原料に必要な原材料の調達・供給でネットワークを構築している。
マメ科植物を活用して成長因子を開発
Innocent Meatは細胞の成長、維持、分化に必要な成長因子を、マメ科植物を活用した分子農業により開発している。
精密発酵ではなく分子農業を活用する理由として、植物の成長・収穫に必要な設備が安価であること、拡張しやすいこと、そして精密発酵が直面しているインフラや生産能力の制約を回避しやすいことを挙げている。
同社はすでにFBSに代わる豚細胞用の増殖培地・分化培地を開発しており、公式サイトで豚初代筋細胞用の無血清培地を販売している。
Innocent Meatはまた、昨年1月、ロストック大学と共に細胞の増殖・分化を促進し、食感を改善する食用足場を製造するためのエレクトロスピニング法の開発に、EUから50万ユーロの助成金を獲得した。
Innocent Meatはハード・ソフト・原料をすべて提供する自社のサービスを、「Farm Out Of The Box」と呼んでいる。このサービスが市場に導入されるにはまだ時間がかかると思われるが、実現すれば、誰もが培養肉を製造できるようになり、食料システムを大きく変革させる可能性を秘めている。
参考記事
Innocent Meat raised EUR 3 million
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アイキャッチ画像の出典:Innocent Meat