Foovo Deep

モサミートはいかにしてFBSを使わずに培養牛肉を生産したのか?研究者が論文を発表

 

オランダの培養肉スタートアップ企業モサミートは今月13日、ウシ胎児血清(FBS)を使うことなく、筋肉に分化させるための無血清培地製剤の開発方法を論文NatureFoodで発表した。

論文は「培養肉生産のための無血清培地製剤は、血清飢餓がない条件下でウシ衛生細胞分化を支持する(原語:A serum-free media formulation for cultured meat production supports bovine satellite cell differentiation in the absence of serum starvation)」というタイトルで発表された

筋分化における重要なタンパク質を同定

出典:モサミート

モサミートは2019年に培養肉の生産プロセスからFBSを除去したことを発表した。今回発表された論文は、同社がFBSを使わずにいかにして筋細胞を分化させたかが明らかにされている。

論文には、血清飢餓(serum-starvation)というプロセスを通じて、幹細胞が筋肉に変わるときに生じる変化が説明されている。血清飢餓とは、血清濃度の急激な低下を指し、これによりインビトロ(体外)で骨格筋分化が誘導される。

同社は、血清飢餓により誘導される筋分化中におけるウシ筋衛星細胞のトランスクリプトミクス・リモデリングを調査した。RNAシーケンシングを活用することで、筋細胞が筋線維に分化する時に細胞に生じる遺伝子発現の変化を解明することが可能になったという。

同社は分化の初期段階でアップレギュレーションされる表面受容体を特定した。これらの受容体にリガンドを補充すると、血清飢餓および/または導入遺伝子発現がない条件下でも、分化を誘導する培地の形成が可能になったという。

論文の著者Tobias Messmer氏 出典:モサミート

論文の著者Tobias Messmer氏はこのプロセスについて、次のようにまとめている。

「私たちは、分化中に増殖する細胞表面のタンパク質に特に興味を持っていました。(「受容体」と呼ばれる)これらのタンパク質を特別に活性化することで、FBSがなくても同じ遷移を再現できるようになりました」

モサミートの手法をまとめると、

ここから先は有料会員限定となります。

読まれたい方はこちらのページから会員登録をお願いします。

すでに登録されている方はこちらのページからログインしてください。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:モサミート

 

関連記事

  1. MeaTechが低コストな培養脂肪の生産方法で米国仮出願を提出
  2. Mycorenaが菌類由来の代替脂肪「Mycolein」の発売を…
  3. レタスを活用して乳タンパク質を開発するイスラエル企業Pigmen…
  4. ダノンとBrightseedが提携を拡大、AIを活用して植物の隠…
  5. 昆虫由来の代替タンパク質に取り組むTebritoが約1億円を調達…
  6. Hevo Groupが代替卵製品OUVEGGをスペインのスーパー…
  7. 食べられるコーヒーカップを開発したCupffeeが約2.6億円を…
  8. タイソンフーズが出資するFuture Meatが培養鶏肉のコスト…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

MicroSaltは通常の半分量で、同じ塩味を実現する画期的な塩「MicroSalt®」を開発

アメリカ人は1日平均3.4gの塩分を摂取しているといわれる。これはFDA…

じゃがいもを原料に代替チーズソースを開発したLoca Foodとは

現在、プラントベースの代替チーズの原料は、カシュー、アーモンド、ココナッツ、大豆…

Veganzが開発したシート状の代替ミルク製品Mililk|環境負荷をさらに軽減した代替ミルク

国内スーパーでも定番となった代替ミルク。目にする製品はほぼ、紙パックに入ったすぐ…

えんどう豆由来の代替ミルクを開発するSproudが約6.8億円を調達

えんどう豆を主原料に代替ミルクを開発するSproudが480万ポンド(約6億8千…

米ビール大手のモルソン・クアーズが植物性ミルク市場へ進出

アメリカ大手のビール会社であるモルソン・クアーズ(Molson Coors)は、…

Juicy Marblesが植物由来の骨付きリブ肉の開発に成功、今月より限定販売をスタート

スロベニアの代替肉企業Juicy Marblesは今月、骨付きの代替リブ肉を発表…

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(09/22 10:05時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/21 19:22時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/21 22:53時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/21 16:13時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(09/22 09:28時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(09/21 18:47時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP