アメリカの培養シーフード企業Atlantic Fish Coは今月、世界で初めて細胞培養で生成したブラックシーバスを発表した。
North Carolina Food Innovation Lab (NCFIL)との協力により開発された培養ブラックシーバスのプロトタイプで、ノースカロライナ州カナポリスにあるNCFILの施設で試食会が開催された。
これはAtlantic Fish Co初のプロトタイプとなる。同社は次の目標として、ブラックシーバスにカスタマイズされた増殖培地の開発によるコスト削減、レストランパートナーに向けた試食会の開催を目指している。
見過ごされる魚類の環境負荷
Atlantic Fish Coは増えるシーフード需要に対し、持続可能なオプションを提供するために2021年に設立された。
同社共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のDoug Grant氏は、シーフードがもたらす環境負荷が牛肉ほど注目されていないことに警笛を鳴らしている。
シーフードは、陸生の動物タンパク質よりも平均して二酸化炭素排出量が低いのは事実だが、平均化することで多くの天然魚種の1kgあたりの温室効果ガス排出量が牛肉よりも高い事実は知られていないとGrant氏は指摘する。
シーフード炭素排出ツールによると、カレイに伴う二酸化炭素排出量は牛肉よりも高いという。
ブラックシーバスの漁業ではトロール船が使用される。トロール船による底引き網漁で大気中に排出される二酸化炭素は最大で毎年3億7000万トンになるとの報告があり、培養ブラックシーバスが市場に流通すれば、漁業に伴う環境負荷の軽減につながる。
Atlantic Fish Coは懸濁液で増殖できる「高性能な魚細胞株」を開発するための独自技術を開発した。これまでの報道では、ブラックシーバスのほか、オヒョウや高級魚など、養殖できない魚種に開発の焦点を置いている。
昨年10 月にはノースカロライナ州州議会が設立したバイオテクノロジーのイニシアティブであるNorth Carolina Biotechnology Centerから10万ドルの中小企業研究融資を獲得している。また、IndieBio、SOSV、Sustainable Food Venturesからも資金を調達している。
シーバス開発に取り組む他社の培養魚スタートアップ
Foovoの調査ではシーバスを開発する培養魚企業にはイスラエルのSea2Cellが確認されているが、培養魚企業全体ではまだニッチな開発対象だ。
Sea2Cellは細胞由来成分と植物成分をブレンドした初期プロトタイプを開発しており、ハイブリット戦略で早期の市場投入を目指している。
細胞培養による鶏肉や牛肉ではシンガポール、アメリカ、イスラエルで認可が下りているが、シーフードで認可を取得した企業はまだない。
参考記事
Atlantic Fish Co Unveils World’s First Cultivated Black Sea Bass
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Atlantic Fish Co