フードテック

精密発酵でアロマを開発するデンマークのEvodiaBioが約11億円を調達

 

精密発酵でアロマを開発するデンマーク企業EvodiaBioは今月、700万ユーロ(約11億円)を調達した

EIFOThe March Groupなど国内外の投資会社が参加し、募集額を上回る応募があった。EvodiaBioは調達した資金で、商用化と事業の拡大を加速する。

気候変動により収量低下が危惧されるホップの代替策

出典:EvodiaBio

2021年に設立されたコペンハーゲンを拠点とするEvodiaBioは、多くの精密発酵企業が乳タンパク質や脂肪などに取り組む中、ノンアルコールビールの味を改善するためのアロマを開発対象に選び、アロマブレンド「Yops」を開発した。

ノンアルコールビール市場は成長を続けており、2026年までに290億ドルに達すると予想される

アロマを生み出すホップはノンアルコールを含め、ビールの美味しさに欠かせない重要な原料だが、チョコレートなどと同様に気候変動の脅威に直面している。

Natureに掲載された最近の論文によると、すべてのシナリオにおいて、2021年から2050年までに欧州の主要なホップ栽培地域ホップの収量が12%から35%の範囲で減少すると予測されており、成長を続けるビール需要に対応するために、早急な対応が必要だと指摘されている。

ホップはまた主にアメリカ西海岸で栽培されるため、大規模な輸送と作物の冷却が必要になる。1キログラムのホップ栽培には2.7トンという大量の水が必要になるが、酵母を使用した精密発酵アロマは1L未満の水で生成できる。このため、精密発酵アロマは生産プロセスから水消費と輸送に伴う二酸化炭素排出量を削減できる可能性を秘めている。

風味を増強、オフフレーバーを軽減

出典:EvodiaBio

これまでの試験では、「Yops」使用による風味の増強オフフレーバー(異風味)の軽減が確認されている。

欧州のビール官能評価パネルNIRASが「Yops」のフレーバーの1つ、「Yops Floral」がもたらす影響について、市販のノンアルコールビールと「Yops Floral」を添加した市販のノンアルコールビールを評価したところ、「Yops」を添加したものでビールの品質が「著しく」向上したという。

総合スコアは「満足」から「良い」に向上したほか、ホップの風味が明らかに増強され、穀物のオフフレーバーが軽減したとパネルは評価した。

このほか、デンマークの地ビールメーカーSkovlystなどから、試作品を使用したことで風味が改善されたとのフィードバックも得られている

ノンアルコールビールから他の飲料・食品へ

出典:EvodiaBio

EvodiaBioはビール醸造所から高い関心を寄せられている。現在はノンアルコールビールをターゲットにしているが、長期的にはさまざまな飲料や食品の味を改善することを目指している。

前回の資金調達時には2023年の上市を目指していたが、昨年の報道では、今年前半の上市を目指している。同社は現在、「Yops」のサンプル注文を受け付けている

 

参考記事

BIOTECH COMPANY SECURES MULTI-MILLION INVESTMENT TO REVOLUTIONIZE THE MARKET FOR SUSTAINABLE AROMA WITH A GROUNDBREAKING NEW TECHNOLOGY

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:EvodiaBio

 

関連記事

  1. 植物から短鎖状の食物繊維を取り出す米One Bioが約42億円を…
  2. 明治ホールディングス、細胞培養チョコレートの米Californi…
  3. 精密発酵で赤色着色料を開発するChromologicsが約18億…
  4. 米Voyage Foods、豆不使用コーヒーをフードサービス・C…
  5. カカオのいとこ「クプアス」でつくる持続可能な代替チョコレート|オ…
  6. Steamboxの蒸気で温められるランチボックスで職場の電子レン…
  7. Yali Bioが精密発酵ココアバターの試作品を発表|精密発酵コ…
  8. 2024年のフードテックを振り返る:小売進出した培養肉、精密発酵…

おすすめ記事

魚の培養脂肪を開発するインパクファット|日本人研究者がシンガポールで挑戦【創業者インタビュー】

畜産による環境負荷を軽減するため、植物由来や菌類由来の代替肉の普及が世界的に加速…

米Uprootによる大学向けの植物ミルクディスペンサー|植物ミルクを当たり前の選択肢に

アメリカで植物ミルクの選択肢が一般的になる一方で、大学キャンパスでの植物ミルクの…

イート・ジャストの代替卵JUST EggがEU当局の認可を取得

植物由来の代替卵を開発するアメリカのスタートアップ企業イート・ジャストは、主力製…

「細胞培養の救世主」、クラウドで培養を受託する米企業Culture Biosciencesが培養肉開発を加速する

培養肉の開発では製造プロセスの最適化が重要となるが、これには莫大な時間がかかり、…

ドイツのFormo、欧州投資銀行から約56億円を調達-麹菌由来チーズと精密発酵カゼインの強化へ

微生物発酵による代替チーズを開発するドイツ企業Formoは、欧州投資銀行(Eur…

MeliBio、高級レストランで蜜蜂フリーなハチミツの提供を期間限定で開始

精密発酵により蜜蜂を使うことなくハチミツを開発する米MeliBioが、サンフラン…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/15 16:14時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/15 02:52時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/15 06:23時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/15 22:15時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/15 14:15時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/15 01:33時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP