アップサイクル

二酸化炭素からタンパク質を開発するAerbio、オランダでパイロット施設の本格稼働を開始

 

二酸化炭素を原料にタンパク質を開発するAerbio(旧Deep Branch)が、オランダ、リンブルフ州にあるBrightlands Chemelot Campusでパイロット施設の本格稼働を開始した

これにより、持続可能なタンパク質Protonの商用化に向けて一歩前進したことになる。

Aerbio、オランダでパイロット施設を本格稼働

出典:Aerbio

Aerbioは、英Deep Branchの買収により2024年に設立されたオランダのバイオテック企業。同社が開発した単細胞タンパク質Protonは、二酸化炭素を原料にした好気性ガス発酵により製造される。

炭素源・エネルギー源として糖類に依存する多くの微生物と異なり、Aerbioの天然微生物は二酸化炭素と水素で増殖する。窒素と電解質が豊富な溶液中に酸素とともに微生物を溶解させると、微生物がこれらを原料に炭水化物、脂肪、タンパク質など複雑な分子を生成する仕組みだ

出典:Aerbio

Deep Branchが開発した(R)evolveテクノロジープラットフォームの強みは、作れるものはタンパク質にとどまらないことだという。(R)evolveを活用して、これまで糖分を原料に微生物により作られてきたタンパク質以外の製品開発にも取り組んでいると述べている

Aerbioはこのほど、期待を上回る原料の変換効率を達成したと発表。現在、パイロット工場で毎月200kgを超えるProtonを生産している。

実証施設建設に向けたシリーズAラウンドを開始

Deep Branchを共同創業したPete Rowe氏(左)とRob Mansfield氏(右) 出典:Aerbio

Aerbioは動物・水産飼料に加え、ペットフード人間向け食品も用途として検討しているとFeednavigatorのインタビューで述べている。

国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、水産養殖飼料は、大豆、トウモロコシ、魚粉、魚油、米、小麦などの原料に依存しており、畜産部門や人間の消費用と競合する。牛肉1kgの生産には11kgの穀物が必要とされるなど、畜産肉の生産にはその何倍もの穀物を用意する必要があり、飼料増産は持続可能ではない。

また、これらの飼料は国際的に取引されるため、世界市場や紛争などによる変動の影響を避けられない。Protonは年間を通じて供給可能であるほか、二酸化炭素を原料にするため環境に優しく、タンパク質含有量は70%と高いことから、新たなタンパク質源として期待される。

同社は2022年6月、鮭の飼料最適化に向けて欧州の大手養殖飼料メーカーBioMarと提携しており、さまざまなパートナー企業と製品開発・用途開発を進めていく予定だ。

Aerbioは現在、本格的な商用運用に移行する前の最終的な検証を行うために、実証施設の建設を計画している。このための資金として、シリーズAラウンドで最大5,000万ユーロ(約79億円)の調達を目指している

Aerbioは以前より、商用生産施設の建設候補地の検討を行っており、2022年6月にはアイスランドの国営電力会社と基本合意書(MOU)を締結している

CO2由来のタンパク質開発が加速

出典:Solar Foods

昨今、二酸化炭素を原料にタンパク質を作る企業のニュースが増えている。

代表格となるフィンランド企業ソーラーフーズは今年生産工場を稼働し、先日には自社タンパク質ソレインについてアメリカでGRAS自己認証を取得したと発表した

NovoNutrientsは7月に約28億円を調達し、現在、サンフランシスコにパイロット工場の建設を進めている。

ニュージーランドでも今年、新たなスタートアップが確認された。Jooulesは用途としてヒト向けタンパク質、ペットフード、水産飼料を想定しており、来年度に新規食品の認可取得を目指している。

オーストリアのArkeon Biotechnologiesは昨年、オーストリア、ウィーンにパイロット工場を開設、今年さらなるスケールアップを目指している。

 

参考記事

Aerbio Unveils Fully Operational Pilot Line: Pioneering the Future of Sustainable Protein Production

Aerbio unveils its fully operational pilot line planning the future of sustainable protein production

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Aerbio

 

関連記事

  1. 魚の培養脂肪を開発するインパクファット|日本人研究者がシンガポー…
  2. 培養魚のWanda Fishがタフツ大学と独占的ライセンス契約を…
  3. 味の素がイスラエルの培養肉企業スーパーミートに出資、培養肉の商用…
  4. 精密発酵で乳タンパク質を開発するBon Vivantが約24億円…
  5. 培養魚のB2B製造ソリューションの提供を目指すUmami Bio…
  6. ひよこ豆由来のタンパク質を開発するInnovoProが約3億円を…
  7. スイスの培養肉企業Mirai Foodsがシードで約2億3千万円…
  8. ビヨンドミートが新しいビヨンドバーガーを5月に全米小売で発売

おすすめ記事

フィンランド発、Hailiaの挑戦:魚の副産物から人間用のスマートシーフード製品の創出

十分に活用しきれていなかった魚の副産物をヒト向けのシーフード製品にアップサイクル…

米Matrix F.T.が独自マイクロキャリアで作成した培養鶏肉を発表

培養肉用の足場とマイクロキャリアを開発する米Matrix F.T.(旧称Matr…

Fresh Insetがペルーで鮮度保持ソリューション「Vidre+」を登録

鮮度保持ソリューションVidre+を開発したポーランド企業Fresh Inset…

培養肉企業Meatableがオランダに新しいパイロット工場を開設

オランダの培養肉企業Meatableは今月、オランダ、ライデンにあるバイオサイエ…

Vowの培養ウズラ肉、シンガポールのレストランがメニューに導入、来月提供へ

オーストラリアの培養肉企業Vowが先月、シンガポールで培養肉の販売認可を取得した…

フィンランドの研究チームが精密発酵による代替卵白の開発に成功

フィンランドの研究チームは精密発酵技術により、動物を使うことなく卵白タンパク質の…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(09/16 13:37時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/16 23:07時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,940円(09/17 02:48時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(09/16 19:30時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(09/16 11:52時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(09/16 22:28時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP