代替プロテイン

ビヨンドミート、菌糸体由来ステーキ肉の発売計画を発表

 

ビヨンドミート(Beyond Meat)が菌糸体由来のホールカット代替ステーキ肉の発売計画を発表した。

CNBCの報道によると、創業者のイーサン・ブラウン氏は「材料が非常に少なく、タンパク質量が非常に高いこと、そして飽和脂肪酸が非常に少ないことを重視しました」と述べ、短い原料リストを求めるクリーンラベルの需要増に対応する姿勢を示している。

発売時期はまだ明らかにされていないが、従来のファーストフードチェーンとの提携から戦略をシフトし、健康志向のレストランチェーンと提携する可能性があるという。

ビヨンドミート、菌糸体由来ステーキ肉の発売計画を発表

出典:Beyond Meat

ビヨンドミートは2022年7月、植物性ステーキの販売計画を発表、同年10月には全米のクローガー、ウォルマートで「Beyond Steak」の販売を開始した。この製品は一口サイズで、原料には小麦、そら豆タンパク質、キャノーラ油などを使用している。

2022年に発売された植物性ステーキ 出典:Beyond Meat

今年2月には、「味、健康、クリーンラベルの点で大きな進歩を遂げた」という第4世代となるプラットフォーム「Beyond IV」を発表。心臓に良いとされるアボカドオイルを使用した新バージョンのビヨンドバーガー、ビヨンドビーフ製品を発表し、健康志向・クリーンラベル志向への取り組みを強化している

今回の菌糸体由来のホールカットステーキ製品への参入は、菌糸体肉が本物の肉に近い食感を持ち、食物繊維や必須アミノ酸など、タンパク質以外の栄養素も豊富であることから、クリーンラベル志向に応える次の手段と位置付けていると見て取れる。

業績向上の打開策になるか

出典:Beyond Meat

ビヨンドミートの2023年の財務報告によると、2023年の売上高は3億4,340万ドル(約490億円)で、前年比18%の減少となった。売上総利益は8,270万ドル(約118億円)の損失、粗利益率は-24.1%で、前年同期の2,370万ドル(約34億円)を上回る損失を出した。

同社は業務見直しの一環で、以前から利益率を圧迫していたペプシコとの合弁会社Planet Partnershipから発売したビヨンドジャーキー(Beyond Meat Jerky)の中止を決めた

2024年第2四半期の売上高は9,320万ドル(約133億円)と前期比8.8%減少したが、売上総利益は1,370万ドル(約19億円)で、前年同期230万ドル(約3億円)を大幅に上回る結果なった

第2四半期の収益予想を上回ったこと、2021年第3四半期以来、最高となる四半期粗利益率を達成したことから、「力強い進捗」だとブラウン氏述べている

菌糸体ステーキ肉についてビヨンドミートからの公式な発表はないが、2021年以降も続く株価の下落に直面する同社が新たな一手として菌糸体に注目したのは間違いないだろう。

マイコプロテインの論文が増加

Foovo調査・作成(Google Scholar) 2024年6月前半時点

マイコプロテインは、栄養を含んだ培地の中で糸状菌という菌類を増やした菌糸体バイオマスを指す。

マイコプロテインを毎日の食事に取り入れることで腸運動など消化プロセスの調節や、血中インスリン濃度の維持など、健康に寄与する働きが報告されている

ビヨンドミートがマイコプロテインに注目したのは、原料リストをシンプルにでき、より高い健康効果を期待できると見たからだろう。

Foovoの調査では、マイコプロテインに関する論文は年々増加傾向にあり、2024年前半ですでに前年の半分以上の論文が発表されている。

国内外で50社以上が確認されており、ホールカット肉を開発する企業には英Adamo Foodsや米Meati Foodsがある。国内でも、筑波大学の萩原准教授が麹菌を使用した代替肉スタートアップ立ち上げに向けてクラウドファンディングを実施したり、オタフクグループも参入したりするなど、注目度が高まっている領域となる。

 

参考記事

Beyond Meat to launch new steak alternative as it focuses on health

Beyond Meat Unveils Plans to Launch a Mycelium Steak Alternative

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Beyond Meat

 

関連記事

  1. CO₂由来タンパク質を開発するオーストリアのArkeonが破産申…
  2. Meatable、初の試食会開催に続き、培養肉の生産期間短縮を発…
  3. 国内最大級のフードテックイベントSKS JAPAN 2024が1…
  4. 「本物のようにほぐれる」ホールカットの代替タラを開発するアイルラ…
  5. Orbillion Bio、欧州35ヵ国への培養牛肉販売に向けて…
  6. オルガノイドファーム、2027年に細胞性食品のパイロット実証施設…
  7. 「代替タンパク質大国」を目指すイスラエルの今をクローズアップ-2…
  8. 精密発酵で脂肪を開発するNourish Ingredientsが…

おすすめ記事

オランダ企業The Protein Brewery、マイコプロテインFermoteinの認可をシンガポールで取得

オランダのフードテック企業The Protein Breweryは先月、発酵由来…

インテグリカルチャー、培養肉用資材のB2Bマーケットプレイス「勝手場」を始動

細胞性食品(培養肉)などを作る細胞農業の民主化を目指すインテグリカルチャーは先月…

タバコ植物で培養肉のコスト削減を目指すBioBetterが約14億円を調達

タバコ植物を活用して培養肉の生産コスト削減を目指すBioBetterがシリーズA…

フューチャーミートが世界で初めて培養羊肉を生産、年内に米生産施設を着工

イスラエルの培養肉企業フューチャーミート(Future Meat)は25日、培養…

国内最大級のフードテックイベントSKS JAPAN 2024が10月24日-26日に東京・オンラインで開催

本記事は、Foovoがメディアスポンサーを務める「SKS JAPAN 2024」の紹介記事です。…

Upside Foodsが業界史上最大の約510億円を調達、年内の培養肉市販化を目指してスケールアップを加速

アメリカの培養肉企業Upside Foods(アップサイド・フーズ)がシリーズC…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(09/18 15:54時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/18 02:17時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/18 05:56時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/18 21:56時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(09/18 13:52時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(09/18 01:12時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP