菌糸体から代替肉を作るイギリスのスタートアップ企業Adamo Foodsは先月、プレシードラウンドで150万ポンド(約2億7000万円)を調達した。
ラウンドはイギリスのベンチャーキャピタルSFC Capitalが主導した。
Adamo Foodsはイギリスの政府機関Innovate UKから助成金も獲得した。助成金は「Better Food for All」、「Novel Low Emission Food Production Systems」というコンペティションに参加して獲得したものとなる。
食肉市場の大部分を占めるホールカット肉
Adamo Foodsは代替肉の需要が高まるなか、ハンバーガー、ソーセージ、ナゲットなどの加工肉やミンチ肉ではなく、ステーキ、フィレなど肉全体を再現したホールカット製品が不足していることに注目した。ターゲットにするのは、ビーガンだけでなく肉好きな消費者だ。
植物タンパク質を使用してホールカット肉の複雑な食感を再現するのは簡単ではない。Adamo Foodsによると、ホールカット肉は1兆2000億ドルの食肉市場の85%と大部分を占めるものの、植物肉市場にはホールカット肉製品は少なく、大きなギャップが存在している。
Adamo Foodsは菌類の菌糸体を使用して、「ホールカット肉の構造を再現する革新的技術」を開発した。菌糸体とは菌類の根にあたる部分で、タンパク質や繊維を豊富に含み、えんどう豆、大豆、小麦、牛肉よりも高いタンパク質(PDCAAS)を有している。同社は独自の発酵技術により、長くて緻密な繊維に菌糸体を成長させ、ステーキ肉やフィレ肉の食感を再現している。
Adamo Foodsの代替ステーキ肉は先月ヘルシンキで開催された第1回国際細胞農業会議で発表された。年内にも一般向けの試食会を予定している。
注:PDCAASとは、タンパク質の消化されやすさ、体内での利用されやすさを総合的に判断した指標。
開発が進む代替ステーキ肉
Adamo Foodsは調達した資金を使い、研究パートナーと協力して牛肉の栄養上のメリットを再現するために、菌糸体の微量栄養素の含有量を強化するなど商品開発、スケールアップを進める予定だ。同社はまた、発売に向けて発酵・配合プロセスをラボスケールからパイロットスケールへ移行させるプロセス開発に取り組む。
近年、代替ステーキ肉の開発は盛んだ。
イスラエルのChunk Foodsは大豆を原料とした植物ステーキを開発しており、今年夏に工場の稼働を予定している。菌糸体由来肉を開発するMeati Foodsはカツレツやステーキの代替製品を全米のスーパーで販売している。
3Dプリンターでテンダーロイン・サーロインなどの代替肉を開発するイスラエルのRedefine Meatは、イギリス、ドイツ、オランダ、フランス、オーストリア、フィンランド、イスラエルに加え、最近イタリアにも進出した。
スロベニアのJuicy Marblesは植物性のフィレミニヨンを開発し、欧州・アメリカに出荷している。
参考記事
RAISING THE STEAKS: ADAMO FOODS SECURES £1.5M
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アイキャッチ画像の出典:Adamo Foods