アップサイクル

デンマークのMATR Foods、欧州投資銀行から約31億円の融資で菌類由来代替肉の工場建設へ

 

菌糸体を活用した代替肉を開発するデンマークのMATR Foodsは今月、欧州投資銀行(EIB)と2,000万ユーロ(約31億円)の融資契約を締結した

欧州委員会のInvestEUによる支援を受けたEIBの資金により、MATRは自社の代替肉を大規模生産する工場を建設し、研究開発をさらに進める予定だ。MATRによると、EIBから支援を受けた代替肉企業はMATRが初だという

MATRはオーツ麦、スプリットピー(乾燥させて皮をむき、分割したエンドウ豆)、ルピナス、ビートルート、ジャガイモの5つの原料に天然の菌類胞子を加え、固体発酵により「MATR」を開発している。

原料には、食品廃棄物を使用。菌糸体が成長すると5つの原料の栄養素を分解し、アミノ酸やデンプンを生成し、調理すると茶色に変化する。菌糸体が結合剤としても機能し、ジューシーな食感を生み出しているという

出典:MATR Foods

同社の代替肉は、デンマーク国内のハンバーガーショップ、レストラン、寿司チェーンなどで広く使用されている

これまでMATRの生産能力は、デンマーク、ノードハウンにある施設で年産30トンに限られていた。今回のEIBの支援により、目標としてきた年産3,000トンを超える規模での生産が可能となり、スケールアップを実現できる見通しだ。

出典:MATR Foods

EIB副総裁のIoannis Tsakiris氏は、植物肉は成長の可能性が高いだけでなく、環境面や健康面でもメリットがあると言及。「グリーン移行への資金提供では、農業とともにイノベーションが重要な役割を果たします。MATRはこの2つの優先分野を結びつけており、その取り組みを支援できることを嬉しく思います」と述べた。

EIBは、EUの政策目標に沿った事業に資金を提供している。MATRへの支援は、同社の食品廃棄物と菌糸体を活用した代替肉が、資源消費を増やさない経済成長の実現、2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロにするという欧州グリーンディールの目標達成に寄与する可能性があるとEIBが判断した結果だといえる。

今年になり、欧州の発酵タンパク質への投資は増加しており、今年上半期の時点で昨年を上回る資金が投じられた。特に、資金調達を受けたバイオマス発酵企業の多くは、菌糸体を使用している企業や自社原料をマイコプロテインと呼称している企業であり、MATRも7月にNovo  Holdingsから出資を受けていた

今回のEIBの支援は、食品廃棄物と菌類を活用する他の企業にも融資が広がる可能性を示している。

 

参考記事

Denmark: Foodtech start-up MATR gets €20 million EIB loan to expand production of its clean label meat-alternatives

MATR Foods Secures €20M From European Investment Bank to Construct First Full-Scale Facility

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:EIB

 

関連記事

  1. 日本の培養肉市場に明確なルールを:JACAが提言、情報集約の窓口…
  2. カナダのNew School Foodsが約8.6億円を調達、ト…
  3. ブラジル企業Cellva Ingredients、培養豚脂肪に続…
  4. シンガポールのtHEMEat、卵殻や廃棄野菜から植物性ヘムを開発…
  5. 幅広い植物肉製品を開発するHungry Planetが約27億円…
  6. 培養肉でメキシコ初のスタートアップMicro Meatは量産化段…
  7. 乳製品生産の再考|牛に頼らず細胞培養でミルクを開発するドイツ企業…
  8. 精密発酵ヘムで知られる米フードテック企業Motif FoodWo…

おすすめ記事

Remilkがイスラエル食品大手CBCグループと提携、1年以内のイスラエル上市を目指す

精密発酵でアニマルフリーな乳タンパク質を開発するRemilkは、イスラエル食品最…

北里大学、ニホンウナギの筋芽細胞株の樹立に成功|持続可能なウナギ供給に向けた重要な一歩

2024年10月15日 査読情報に掲載された旨を追記北里大学海洋生命科学…

ファーストフードチェーンChipotleが代替油脂を開発する米Zero Acre Farmsに出資

全米で展開するファーストフードチェーンChipotle Mexican Gril…

米SCiFi Foodsが培養牛肉製品で初のLCAを実施、環境メリットを証明

培養牛肉を開発するアメリカ企業SCiFi Foodsは、培養牛肉製品について初と…

分子農業で代替タンパク質と成長因子を開発するスタートアップ企業4社

分子農業(Molecular Farming)とは、植物を「バイオリアクター」「…

ベルギー企業Bolder Foodsが菌糸体由来のチーズ試作品を発表

菌糸体から代替チーズを開発するベルギー企業Bolder Foodsは今月、ジボダ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(05/17 15:09時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(05/17 01:00時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(05/17 04:59時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(05/17 21:09時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(05/17 13:14時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(05/17 00:14時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP