糸状菌という菌類を培地の中で増やしたマイコプロテイン開発に取り組む企業が増えている。
Foovoの調査ではマイコプロテイン・菌糸体由来成分の開発に取り組む企業は50社を超えており、最近ではThe Better Meat CoがアメリカでGRAS認証を取得した。
欧州においては、マイコプロテインを含むバイオマス発酵企業への投資額は今年上半期ですでに前年を超えるなど、注目も高い。
マイコプロテインブランドでは、イギリスで1985年に発売されたQuornが有名だ。
しかし、Quornよりも早い1971年にフィンランドで飼料用途に承認を取得、世界で最初に商用生産されたマイコプロテインがある。PEKILOだ。PEKILOは豚、鶏用の飼料として15年以上生産されていた。
フィンランド企業Eniferは、オリジナルのPEKILO技術をさらに開発・商用化するために2020年にVTT(フィンランド技術研究センター)からスピンオフされて設立された。同社は水産飼料、ペットフード、ヒト向け食品への適用を目指して開発を進めている。
このたび、フィンランドのヘルシンキで、ヒト用食品用途のPEKILOを試食することができたので感想をお伝えしたい。Eniferに勤務するフィンランド在住の林小百合氏がPEKILOを試食する機会を設けてくれた。
こちらがPEKILOの粉末。
匂いはなく、Eniferが公式サイトで述べているとおり、色も匂いもニュートラルだ。粉末を味わってみると、味もない。意識しながら味わうと、少しだけ香ばしい味がするように思えるが、微々たるもの。味もニュートラルで、食品にまず影響しないだろうことがわかる。
菌類由来のPEKILOは、グルテン、大豆などにアレルギーのある人でも摂取できる。PEKILOは最大55%のタンパク質を含み、最大35%食物繊維を含むため、これまでのタンパク質の代わりに使用することでタンパク質だけでなく食物繊維など他の栄養素もとれる成分となる。
PEKILOをヒト用食品に使用するには、新規食品規制をクリアする必要があるため、欧州で販売されるにはまだ数年かかるだろう。しかし、無味・無臭のマイコプロテイン粉末には可能性を感じた。Eniferではケーキ、クッキー、代替肉などさまざまな食品用途に向けたレシピの研究も行っているという。
エスポ―に拠点を置くEniferは今年になり3,600万ユーロ(約57億円)という大型調達に成功している。この資金は、フィンランドのキルッコヌンミに建設予定の食品グレードのマイコプロテイン工場建設にあてられる。この工場は2025年末までに完成予定で、完成すると年間最大3,000トンのPEKILOの生産を見込む。2026年に稼働開始予定で、本格稼働すると毎時500kgのマイコプロテインを生産する予定だ。
Eniferは人向け用途では、年内に新規食品の承認申請を行い、2026年の承認取得を目指している。
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アイキャッチ画像はFoovo佐藤撮影 2024年8月下旬 フィンランドにて