アップサイクル

フィンランド発、Hailiaの挑戦:魚の副産物から人間用のスマートシーフード製品の創出

 

十分に活用しきれていなかった魚の副産物をヒト向けのシーフード製品にアップサイクルする取り組みがある。

2021年に設立されたフィンランドのフードテック企業Hailiaは、鮭の副産物、未利用小型魚類、他のあらゆる低価値な水産原料を、「美味しくて使いやすい」シーフード製品に変換している。Hailiaは特許出願中の食品製造技術により、低価値な副産物を高価値な食品に変換することを目指している。

2021年の報道によると、フィランドでは約77,000トンのニシンが商用目的に漁獲されたものの、実際に食卓で消費されたのはわずか4%だったという

魚の副産物は、動物・魚の飼料、バイオ燃料、肥料などに使用されているが、食品製造に使用されることは多くないという。Hailiaはここに潜在的な利用価値を見出した。生物多様性に配慮しつつ、より効率的な資源利用が求められる今、Hailiaは魚原料の潜在能力を最大限に解き放とうとしている。

出典:Hailia

Hailiaのマネージング・ディレクターMichaela Lindström氏は、「たとえば、鮭を切り身にすると、魚の重量の半分が残ります。一般に使用されている方法では、副産物のうち食品生産に利用できるのはわずか8~10%で、残りは低価値な用途に使用されます。当社の革新的なプロセスにより、食品生産に適したすべてを効率的に捕捉できます」と述べ、自社技術を使うことで従来よりも無駄なく魚の副産物をアップサイクル出来ることに言及している

Hailiaは2023年初頭、ニシンで作られたシーフード製品をフィンランドの外食産業に導入した。この製品は、使いやすさ、コスト効率、味が評価され、シーフード・イノベーション・オブ・ザ・イヤーを受賞した

Hailiaの製品の80%以上にはバルト海産の小魚が使用されている。さらにフィンランド産のオーツ麦を使用することで、柔らかでまろやかな風味を実現しているという

出典:Hailia

同社技術を使用することで、以前であれば食卓には小さすぎて、家畜の飼料として使用されていた混獲漁を食品に使用できるようになった。当面はレストランなど外食産業での導入だが、長期的にはスーパーマーケットなど食料品店への導入を目指している。

また、鮭の副産物を利用した製品開発にも取り組んでいる。

Hailiaは現在、フィンランドのカルッキラにある本格的な生産工場で製造しているが、tech euの報道によると、自社技術をライセンス供与することも構想しているという。HailiaはこれまでにシードラウンドでNordic Foodtech VCから50万ユーロ(約8000万円)の出資を受けている

Hailiaのソリューションは、既存の漁獲量の利用度を最大限に引き上げることで、漁業関係者、水産加工業者に経済的なメリットをもたらす可能性を秘めている。他社にライセンス供与することで、世界の漁獲をよりスマートにできる可能性がある。

 

参考記事

Finnish startup Hailia unlocks the potential of fish industry sidestreams

Finnish Foodtech Provider Revolutionises Efficiency in Seafood Production

https://hailia.fi/en

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Hailia

 

関連記事

  1. 精密発酵でカカオバターを開発する米Seminal Bioscie…
  2. 機能性成分としての培養タンパク質粉末を開発する韓国のSimple…
  3. 菌糸体からステーキ肉を開発するMeati Foodsが約55億円…
  4. 米ビール大手のモルソン・クアーズが植物性ミルク市場へ進出
  5. Gelatex、年間300トンの培養肉生産を可能とする足場生産の…
  6. ビヨンドミートとペプシコがジョイントベンチャーThe PLANe…
  7. スペイン乳業メーカー、代替乳製品開発に向けた「Mylkcubat…
  8. マイコプロテインの英ENOUGHが年産1万トンの工場をオランダに…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

機能性成分としての培養タンパク質粉末を開発する韓国のSimple Planet、年内に北米支店を設立

韓国の培養肉企業Simple Planetは今年後半に北米に支店を設立し、商品化…

100%スピルリナ由来の代替スモークサーモンを開発するSimpliiGood

スピルリナを活用して代替タンパク質を開発するイスラエル企業SimpliiGood…

アレフ・ファームズ、イギリスで培養肉の申請書類を提出

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズは今月、イギリスで培養ステーキ肉を販売す…

植物分子農業でジャガイモから卵白タンパク質を開発するPoLoPo、SuperAAプラットフォームを発表

イスラエルの植物分子農業スタートアップPoLoPoは今月、遺伝子組み換えジャガイ…

カーギルがマイコプロテインの英ENOUGHと販売契約を締結

カーギルは今月、マイコプロテインを開発する英ENOUGHとの提携拡大を発表した。…

バイオテック企業が培養ペットフードを開発するGood Dog Foodを設立

スコットランドのリーディングバイオテック企業Roslin Technologie…

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,671円(04/28 12:16時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/27 21:33時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/28 01:04時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/27 18:06時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/28 10:49時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/27 21:04時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP