代替プロテイン

歴史ある伊食肉メーカーGruppo Tonazzo、食肉事業から完全撤退、植物性タンパク質への移行を発表

 

イタリアの食肉メーカーGruppo Tonazzoは、年内を持って食肉事業から完全に撤退し、植物性タンパク質へ移行することを発表した。イタリアメディアのFood Affairsが第一報を報じた

Tonazzoは1888年に精肉店として創業し、1990年に食肉加工事業に参入した。1988年には植物肉ブランド「Bioene」ブランド(現在の「Kioene」)を立ち上げ、イタリア国内のスーパーマーケットで冷蔵・冷凍製品を展開している。また、スペイン、クロアチアでも販売されている

「Kioene」ブランドの製品にはハンバーガー、ミニカツレツ、ミニバーガーなどがある。特徴として、主原料にほうれん草、ひよこ豆、カボチャ、人参ブロッコリー、茄子、キノコなど野菜を使用した独自の製品を多数展開していることだ。また、食肉を模倣した大豆由来の切り身製品も展開している

出典:Kioene

同社の取締役Stefano Tonazzo氏は、「私たちは本日、食肉部門におけるすべての活動を終了し、植物性タンパク質と、すでにイタリアで主要ブランドとなっているKioeneに、全てのリソースと投資を集中させることを決定しました」と述べた。

また、取締役のAlbino Tonazzo氏は、今回の決定は熟慮の末になされたものであり、未来の世代のために環境負荷を軽減し、健康的な食生活を促進する意図があると説明した。

2025年1月から、ヴィラノーヴァ・ディ・カンポサンピエロの既存工場は、植物性代替食品の製造に専念することになる。ステーキ、ミートボールなど食肉部門で働く従業員には、同社で引き続き勤務する機会が提供される

出典:Evolving appetites: an in-depth
look at European attitudes towards
plant-based eating

Green queenメディアTonazzoの決定について、イタリア消費者のトレンドの変化に応じたものと分析している。

同メディアの報告によると、昨年の調査では、59%のイタリア消費者が肉の消費を削減した。この割合はドイツと並んで欧州で最も高い。また、欧州消費者に最も人気のある植物由来食品は豆類であり、57%が週に1回は食事に豆類を取り入れているという。

さまざまな野菜を主役とした「Kioene」製品は、こうしたニーズに適合しているといえる。

老舗&大手食肉メーカーの移行に向けた動き

出典:Kioene

Foovoの調査では、植物性タンパク質に参入する食肉メーカーは多くあるが、完全に植物性食品への移行を決めた事例はTonazzoを除いて確認できなかった。

ドイツの大手食肉メーカーRügenwalder Mühleは、1830年代から食肉事業を続けてきたが、2014年に植物肉市場に参入。2021年には代替肉の売上が動物肉を上回った。現在も動物肉、ベジタリアン製品、ビーガン製品事業を並行している

ソーセージ、ハム、ベーコンで知られるイギリスのFinnebrogue Artisanも2020年に植物性タンパク質工場を開設したが、動物肉の販売は継続している

他にも、大手食肉メーカーの多くは食肉事業と並行して植物肉ブランドを立ち上げたり、培養肉や培養脂肪企業などに初期から出資したりしているものの、完全移行に踏み切った事例はこれまで確認されていない。

出典:Crave House

例えば、大手食肉メーカーJBSは2020年に植物性タンパク質市場に参入したが、2022年にアメリカ市場から撤退し、欧州とブラジルに注力すると発表した。欧州では2021年、オランダのプラントベース企業Vivera買収している

また、Tyson Foodsは「Raised & Rooted」ブランドで100%植物肉を展開している。

カーギルも3Dプリンターによる植物性ベーコンを開発するスペインのCocuusとの提携や、マイコプロテイン企業ENOUGHとの提携など、非動物性タンパク質の取り組みを進めている。

カーギルの植物肉ブランドCrave Houseは、Wegmans Food Market(ニューヨーク)、Harris Teeter(ワシントン)、Gelsonsn(ロサンゼルス)などのスーパーマーケットで販売されている

Tonazzoの植物性食品への完全移行は、食肉業界全体の転換を象徴する一歩であるといえる。この動きが同じく肉消費削減の割合が高く、ビーガン特化スーパーが登場したドイツなど、近隣の国にも波及していくか注目したい。

 

【訂正情報】当初、「Bioene」ブランド立ち上げ時期を1998年としていましたが、正しくは1988年でした。大変失礼いたしました(2024年9月23日)。

 

参考記事

Rivoluzione vegetale per Gruppo Tonazzo. Dopo 136 anni chiude le attività nella carne per concentrarsi su proteine vegetali e sviluppo del brand Kioene

Italy’s Gruppo Tonazzo abandons meat for plant-based future

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Tonazzo

 

関連記事

  1. 二酸化炭素、水素から脂肪を開発する米Savorがバター試作品を開…
  2. Quornがハイブリッド製品市場への参入を発表|マイコプロテイン…
  3. 二酸化炭素を使用して代替脂肪を開発するスウェーデンのGreen-…
  4. Remilkがカナダで精密発酵乳タンパク質の認可を取得
  5. 英Meatlyがイギリスで培養ペットフードの販売認可を取得、年内…
  6. スイスの培養肉企業Mirai Foodsがシードで約2億3千万円…
  7. バイオテック企業が培養ペットフードを開発するGood Dog F…
  8. 米Jellatech、細胞培養によるⅠ型コラーゲンの生産に成功|…

おすすめ記事

イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが約184億円を調達

アメリカ企業イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが1億7000万ドル(…

Space Fが韓国初の培養鶏肉と牛肉、そして培養豚肉プロトタイプを発表

韓国の培養肉企業SpaceFは、既存の培養豚肉プロトタイプをさらにアップグレード…

『ミート・ザ・フューチャー~培養肉で変わる未来の食卓~』が6月9日より都内で上映開始

地球が直面する食料危機、気候変動に対応するため、世界中で研究開発が進む培養肉。…

Steamboxの蒸気で温められるランチボックスで職場の電子レンジが不要になる?

会社、学校で温かいお弁当を食べようと思ったら、選択肢は3つくらいしかない。デリバ…

筑波大学の萩原大祐准教授、麹菌による代替肉の事業化に向けてクラウドファンディングを開始

麹菌を使った代替肉開発に取り組む筑波大学の萩原大祐准教授が100万円の調達を目指…

米Sweegenが精密発酵による甘味タンパク質でFEMA GRASステータスを取得

甘味料と風味のイノベーションを推進する米スタートアップ企業Sweegenは今年、…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

リアルセミナー@東京のお知らせ【2025/6/18】

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(06/15 15:19時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(06/16 01:14時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(06/16 05:13時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(06/15 21:21時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(06/15 13:23時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(06/16 00:27時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP