2024年12月10日修正:後半のスライドを一部修正しました。
精密発酵カゼインを開発するオーストリア企業Fermifyは、GRAS自己認証ステータスの宣言とともに、アメリカ食品医薬品局(FDA)にGRAS通知を提出したことを発表した。
精密発酵カゼインでは、これまでに米New CultureがGRAS自己認証を取得しており、公開されている情報ではFermifyは2社目となる。
Fermifyの創業者Eva Sommer氏は、欧州、シンガポール、カナダ、イギリスなど他の市場での申請にも取り組んでいると述べている。
Fermifyが精密発酵カゼインでGRAS自己認証を取得
GRASとは、Generally Recognized As Safe(一般に安全とみなされている)の略語で、アメリカにおける食品安全に関する独自の認証制度をいう。
アメリカでは、食品メーカーは精密発酵による原料についてGRAS自己認証を宣言することで、当該原料を販売できるようになる。
GRAS自己認証ステータスではFDAへの通知は任意となるが、FDAによる安全性のお墨付きとなるGRAS認証の取得は、パートナー・消費者からの信頼を獲得し、市場に広く導入するための重要なステップとなる。実際にパーフェクトデイをはじめ、多くの企業がGRAS通知を提出しており、Fermifyもその道を選んだ。
FermifyがGRAS自己認証を取得したことで、同社のクライアント企業は、自社製品に精密発酵カゼインを使用できるようになる。
「乳業メーカーは自社生産を望んでいる」
2021年に設立されたFermifyは、昨今急増している精密発酵企業の中で、独自のポジションを築いている。
同社は最終的に、食品メーカーにカゼインを自社生産するための自動化されたB2Bプラットフォームの提供を目指している。2022年11月にはプラントエンジニアリング会社のBilfinger Life Scienceと提携した。
同社の連続発酵プロセスは、従来のバッチ発酵と比較して約50%のコスト削減を見込めるという。
Climentum CapitalによるインタビューでSommer氏は、「乳業メーカーは、コストと生産量の比率が予測可能な自社生産を望んでいます。Fermifyのプラットフォームは、カゼインのより確実な供給源であり、都市部を含むあらゆる場所で利用できるため、食料安全保障や価格変動に関する不安を払拭する強力な解決策となります」と述べている。
Fermifyの最終目標は、B2B生産プラットフォームの提供だが、この目標に向けたステップとして、今年3月に精密発酵カゼインのサンプル提供を開始した。週キロ単位でカゼインを生産するパイロット工場も設置した。
最近では、Fermifyのパイロット工場にアクセスするサブスクサービスも限定提供しており、企業は最初の製品ラインの開発に向けて12ヵ月にわたり精密発酵カゼインを入手できるという(サービスの供給は非常に限定的としている)。
また、グルコースの代わりに、一般に副産物とされるグリセロールや糖蜜などの炭素源を発酵原料に使用するなど、アップサイクルにも取り組んでいる。
ミセル化しないカゼイン利用に着目
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アイキャッチ画像の出典:Fermify