アップサイクル

Enifer、北欧マイコプロテイン企業で初の新規食品申請

2024年11月12日 当局情報を追記

 

フィンランドのマイコプロテイン企業Eniferは先月31日、欧州食品安全機関(EFSA)に新規食品の承認申請を提出したことを発表した

マイコプロテイン企業として北欧で申請を行ったのはEniferが初。EFSAは申請を2024年10月14日に受理した

EUでは、1997年5月以前に大量消費されていない食品は新規食品(Novel Food)とみなされる。EniferのマイコプロテインPEKILOは、1970年代後半から15年以上にわたり飼料として使用されていた歴史がある。

現在のPEKILOは当時のプロセスをベースとしつつも、当時とは異なる原料を使用し、異なる製造プロセスと見なされるため、EUで販売するには新規食品の承認が必要になる。

EUでの販売認可取得には数年かかる見通しのため、Eniferはアメリカやシンガポールでも認証プロセスを進める予定だ。Green queenの報道によると、シンガポールで最初に認可が下りる可能性があり、スナックバーなどの製品として発売を予定しているという。

Enifer、北欧マイコプロテイン企業で初の新規食品申請

出典:Enifer

PEKILOは最大55%のタンパク質、最大35%の食物繊維を含む味も色もニュートラルなマイコプロテインで、代替肉から焼き菓子まで幅広い食品に使用できる。

PEKILOは1970年代に開発され、林業の副産物を活用して製造されていた。特に豚や鶏など家畜の飼料用タンパク質源として使用されたほか、1984年のMITによる研究ではヒト用の栄養源としても適していることが確認された。しかし、1990年代になり、パルプ工場のプロセスのアップデートにより原料の入手が困難になったためにPEKILOの生産は中断された。

Eniferは現在、数十年にわたる研究を継続し、新しい原材料を使用してヒト向けのマイコプロテインとして市場投入することを目指している。

製糖施設に新設されるマイコプロテイン工場

出典:Enifer

微生物発酵企業への投資が回復する中、Eniferは今年初め、3,600万ユーロ(約59億円)という大型調達を実現した。3,300万ユーロ(約54億円)を投じる最初の工場は2025年末までに完成予定で、完成すると年間最大3,000トンのPEKILOの生産を見込む。

同工場はヘルシンキから車で30分の場所に位置するキルッコヌンミカントヴィクにある既存施設に建設され、敷地内には蒸気、電気、プロセスおよび冷却水、廃水処理など、新設工場に必要なユーティリティがすべて備わっている

同社によると、既存の製糖施設に建設され、製造では砂糖や乳製品製造で生じる原料を利用するという

アップサイクル×マイコプロテインの可能性

出典:Enifer

食品業界の副産物を利用したマイコプロテイン開発では、ノルウェーのNorwegian Myceliumが日本法人NoMy Japanを立ち上げ、日本甜菜製糖提携した

また、ユニークな事例として、ザクロの皮や賞味期限切れのザクロジュースなど、ザクロ副産物を利用したマイコプロテインの研究開発も行われている。最新の論文では、リンゴの搾りかすをアップサイクルするマイコプロテインの可能性についても報告されている

このように砂糖などの副産物を原料として活用できるマイコプロテインは、食品業界のみならず、異業種からの参入により新たなイノベーションを生み出す可能性を秘めている。

 

参考記事

Enifer files for Novel Food approval for PEKILO®

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Enifer

 

関連記事

  1. ビヨンドミートが新しいビヨンドバーガーを5月に全米小売で発売
  2. 二酸化炭素、水素から脂肪を開発する米Savorがバター試作品を開…
  3. 黄エンドウ豆から代替チーズを開発する英スタートアップ、英政府系機…
  4. 培養肉生産の複雑さを乗り越える(Gelatex-Athanasi…
  5. UMAMI UNITEDの植物性代替卵「UMAMI EGG」が都…
  6. 中国の細胞性食肉企業Joes Future Food、中国・シン…
  7. TurtleTreeが精密発酵によるアニマルフリーなラクトフェリ…
  8. 6つの豆をベースに代替魚を開発する米Good Catchがシンガ…

おすすめ記事

培養魚のBLUU Seafoodが約24億円を調達、年内にパイロット工場稼働へ

ドイツの培養シーフード企業BLUU Seafoodは先月、シリーズAラウンドで1…

明治ホールディングス、細胞培養チョコレートの米California Culturedに2回目の出資

明治ホールディングスは今月、細胞培養によるチョコレートを開発する米Califor…

Doehlerが代替パーム油を生産する英Clean Food Groupと提携

酵母を活用して代替パーム油を開発するClean Food Groupは今月、ドイ…

果物の鮮度保持シールStixFRESHを開発する米Ryp Labs、ベリー向けに商用化を発表

果物の鮮度を2倍に伸ばす独自シールを開発する米Ryp Labsが、ベリー向けの鮮…

Hyphenが世界初のロボットメイクラインを発売、レストラン作業を効率化

カリフォルニアを拠点とするHyphenは、外食産業向けの新しいキッチンプラットフ…

ADMが精密発酵スタートアップNew Cultureと戦略的パートナーシップを締結、スケールアップを支援

精密発酵により持続可能なチーズを開発する米New Cultureは17日、代替乳…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/16 16:14時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/17 02:54時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/16 06:23時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/16 22:15時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/16 14:16時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/17 01:33時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP