イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズが、培養ステーキ牛肉「Aleph Cuts」の販売に向けて、タイで培養肉の承認申請を提出した。タイ・ユニオン(Thai Union)との協力により、約1年の準備作業を経て申請書を提出した。
タイで培養肉の承認申請が提出されるのはこれが初。
アレフ・ファームズの安全性書類は、タイ保健省食品・医薬品事務局(FDA)が指定する政府機関である安全性評価機関BIOTECに提出されている。
同社は今年1月、イスラエルで承認を取得した。イスラエルではラベル表示と工場に対する検査証書の条件を満たすと販売が可能になる。これまでにシンガポール、スイス、イギリスで承認申請を行っており、タイがこれに続いた。
Green queenの報道によると、タイでの承認は2026年半ばを見込んでいる。
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アレフ・ファームズ、タイで培養牛肉の承認申請を初提出
「Aleph Cuts」は、米カリフォルニア州の農場で育ったアンガス牛「Lucy」から採取した細胞を培養したもので、植物性タンパク質も使用している。生産に要する期間は約4週間となる。
タイ政府は新たな育成の対象となる産業を「新Sカーブ産業」とし、5分野を指定している。その1つがFuture Food(未来の食)だ。タイは2027年までにASEANの食品生産ハブとなり、食品輸出で世界10位にランクインすることを目指している。
アレフ・ファームズ共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のDidier Toubia氏は、「多くの近隣諸国と同様に、タイは牛肉の大部分を輸入しています。当社の申請は、東南アジアや、より広範なAPAC地域に対するアレフ・ファームズの戦略における大きな前進です」と述べている。
アレフ・ファームズは2021年9月、培養肉をアジア市場へ導入する第1段階として、タイ・ユニオン、韓国のCJ第一製糖との提携を発表した。
さらに、BBGIやFermbox Bioと協力し、タイ初の年産1,000トンの培養肉工場の設立を進めている。同社は二社との提携は、資産の保有を抑え、財務を軽くするアセットライト戦略において「極めて重要な要素だ」と述べている。これにより「Aleph Cuts」の生産を拡大し、東南アジアの高級レストランでの供給を目指している。
同工場は今年後半に着工予定で、2,000-5,000Lのバイオリアクターが設置される予定となる。
同社はこれまでに三菱商事、ブラジル食肉大手のBRFとも提携している。こうした現地パートナーは、各市場への進出において当局との交渉や、地域毎の消費者の嗜好を把握する上で重要な役割を果たすと思われる。
今後のステップとして、生産に3Dバイオプリンティングを組み込むほか、子羊や魚など、他の製品開発も視野にいれている。
世界の培養肉の申請・認可状況(2024年12月上旬)
現在の培養肉の認可状況を上記スライドでまとめた。
タイでの申請を受けて、現在の培養肉の申請状況も含めると、次のようになる。ヒト向けの培養肉は、シンガポール、アメリカ、イスラエル、香港で販売が認められている。
今年はGOOD Meatが初めて、培養肉の小売導入を実現し、培養肉が消費者にさらに近い選択肢となった。また、Meatable、モサミートがEUで念願の培養肉試食会を開催するなど、欧州市場でも前進が見られた。
先月には、オーストラリア企業Vowが、香港での培養肉の販売認可を取得した。複数の企業がシンガポール進出を目指しており、アレフ・ファームズのほか、モサミート、Meatable、Vital Meatなどの認可が予想される。
参考記事
Aleph Farms Submits First-Ever Application for Cultivated Meat in Thailand
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アイキャッチ画像の出典:Aleph Farms