世界で初めて培養肉を発売した米GOOD Meat(イート・ジャストの子会社)が、シンガポールの小売店で培養肉を販売することを発表した。
GOOD MeatはHuber’s Butcheryと提携し、製品に3%の培養肉を使用した新製品「GOOD Meat 3」を5月16日より正式に発売、年内を通じてHuber’s Butcheryの冷凍コーナーで販売する。
GOOD Meatは今年3月、シンガポールでの培養肉の製造・販売を一時停止していることが報じられた。同社はシンガポールの現地メディアに対し、「まもなく」培養肉を提供すると当時述べていた。その言葉通り、シンガポールで再び培養肉の販売を開始した。
▼2024年7月に店舗を訪問&培養肉を実食
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GOOD Meatがシンガポールの小売店で培養肉の販売を開始
今回の発表が画期的な点は、培養肉が小売店の冷凍コーナーで販売されたことだ。
シンガポールの一般スーパーではインポッシブル・フーズ、Quornなどの日本ではまだ身近でない代替肉製品が冷凍コーナーに陳列されている。Huber’s Butcheryはシンガポール郊外にある1店舗とはいえ、培養肉が冷凍コーナーに導入されたのは大きな前進だ。
GOOD Meatの親会社イート・ジャストの共同創業者兼CEOのジョシュ・テトリック氏は、「当社にとっても、培養肉業界にとっても、GOOD Meat 3を試してみたいシンガポールの人にとっても、今日は歴史的な日です」とコメント。
「今日まで一般の人々が培養肉を小売店で購入することはできませんでしたが、今それが可能になりました。今年はこれまでのどの年よりも多くの培養鶏肉を販売する予定です。同時に、培養肉を大量生産できることを証明するにはやるべきことがまだまだたくさんありますので、引き続きその目標に注力していきます」と述べている。
ハイブリッド戦略の強化で培養肉を食卓に
プレスリリースによると「GOOD Meat 3」は、シンガポールの培養肉に対する消費者の強い需要に応え、自宅で培養肉を気軽に試す機会を作るために開発された。これまでのGOOD Meat製品よりも少ない割合で培養肉を使用することは、主要課題の1つである培養肉の生産コストの削減にも役立つ。
GFIによると、これまでは製品の約70%を培養肉が占めていた。
植物タンパク質をわずかでも培養肉で置き換えると、消費者が求める肉らしい風味を再現できることは以前より言われてきたことだとGFIは言及している。
昨年シンガポールで開催されたオランダ企業Meatableの試食会で提供された培養ソーセージも、3分の1が培養肉、3分の2が植物成分だったが、試食した地元メディア記者は、違いを見分けるのは難しいと述べていたという。
「GOOD Meat 3」はHuber’s Butcheryの冷凍コーナーで120g、7.20シンガポールドル(約820円)で販売される。
参考に、冷凍製品を販売するシンガポールのオンラインストアでは、鶏ささみ肉400gが9シンガポールドル(約1030円)で販売されており、「GOOD Meat 3」はやや割高ともいえるが、消費者が気軽に購入できる製品として冷凍コーナーに陳列された意義は大きい。
培養肉初販売からこれまでを振り返る
培養肉の地域別・認可状況
現時点で、培養肉の販売が認められている地域はシンガポール、アメリカ、イスラエルとなる。
培養肉初販売からこれまでの流れ
ここで培養肉が販売されてから、認可・上市・法規制に関する歴史を振り返ってみよう。
- 2020年12月-GOOD Meatがシンガポールで販売認可を取得、会員制レストラン1880で培養鶏肉を販売(シンガポール初販売)
- 2021年4月-GOOD Meatが世界初となる培養肉のデリバリーサービスを開始
- 2021年9月-Esco AsterがCDMOとして培養肉の製造承認をシンガポールで取得
- 2021年12月-GOOD Meatが新しい培養鶏肉製品の販売許可をシンガポールで取得、JWマリオット・ホテル・シンガポール・サウスビーチで提供。
- 2022年3月-GOOD Meatが人気屋台Loo’s Hainanese Curry Riceと提携し、4シンガポールドル(当時約360円)で提供。
- 2023年1月-GOOD MeatがHuber’s Butcheryで提供開始
- GOOD Meatが無血清培地を使用する認可をシンガポールで取得
- 2023年6月-GOOD Meat、UPSIDE Foodsがアメリカで最終承認を取得
- 2023年7月-Upside Foods、GOOD Meatがアメリカで培養肉を発売(アメリカ初販売)
- 2024年1月-アレフ・ファームズがイスラエルで培養牛肉の認可を取得
- 2024年2月-韓国が培養肉申請の受付を開始
- 2024年3月-シンガポールで培養肉の製造販売一時停止が報じられる
- 2024年4月-Vowがシンガポールで培養肉の販売認可を取得、レストランMORIで発売
- 2024年5月-VowがレストランTippling Clubで限定販売
- 韓国が培養肉特区を設置
培養肉をシンガポールで試す難しさは、Foovo自身が体験として何度か痛感したことである。Huber’s Butcheryは昨年、毎週木曜に培養鶏肉を使用した料理を限定提供していたが、予約はすぐに埋まり、シンガポール訪問に合わせて予約を取ることはできなかった。
プレスリリースでは年内を通じて販売予定とあるが、GFIによると、新製品もこれまでと同様、数量限定での販売とあり、製造状況によっては一時的に提供されないことも考えられる。
Foovoが訪問した印象では、Huber’s ButcheryはFairpriceなどのスーパーよりも高級志向の精肉店・小売店であり、GOOD Meatが最初に導入する小売店として価格面・購買層から理想的といえる。
Huber’s Butcheryは郊外の静かなエリアにあり、培養肉製品がどれだけの消費者に届くか、消費者がどのような感想を持つか、そして、ここからFairprice、CS Freshなど他のスーパーへの導入が進むかにも注目したい。
参考記事
GOOD Meat Begins the World’s First Retail Sales of Cultivated Chicken
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アイキャッチ画像の出典:GOOD Meat