フードテック分野で大企業とスタートアップの事業共創を加速する一般社団法人「Next Prime Food」が発足した。
本団体は、大企業とスタートアップの“共創の壁”を取り除き、事業共創の推進を目的とする。10月に開催されたSKS2024で、2年以上の構想を経て立ち上げられたプロジェクト設立の背景、目指す目標が語られた。
大企業とスタートアップの“共創の壁”を取り除く
Next Prime Foodが掲げる課題意識は明確だ。
フードテック分野では、少ロットでの生産拠点不足や、マーケットイン発想の欠如、さらに大企業とスタートアップ間の連携が阻害されるといった課題があるとNext Prime Foodビジネスデザインディレクターの渥美祐輔氏は指摘する。
事業共創が必要とされながらも、実際には協業が停滞するケースが少なくないという。
共同代表の有馬暁澄氏(Beyond Next Ventures)は連携がなかなか進まない背景として、連携の中心となる「ハブの役割を担う人がいないこと」が障壁だと感じたとコメント。これを解決するためのプラットフォームとしてNext Prime Foodを位置付ける。
UnlocXの田中宏隆氏も、事業会社とスタートアップの連携における調整役や、つなげる媒体的な存在の重要性を強調。「共創の取り組みが重なっても構わないが、漏れを作らないためにプラットフォームが必要だ」と述べ、確実な連携の推進を強調する。
Next Prime Foodは、3年以内に10事業以上の創出、2030年までにユニコーン企業5社の輩出を目標として掲げる。2025年までに大企業100社、スタートアップ200社、50のアカデミア会員の参加を目指し、日本発のグローバルで通用する産業創出を目標とする。
「唯一無二のクローズドマッチング力」
Next Prime Foodの強みは「クローズドマッチング力」だ。従来の偶然の出会いに頼る形ではなく、具体的なアイディアに基づいたパートナーシップを1対1で形成する仕組みを構築する。これにより、大企業とスタートアップの事業連携を着実に進めることが狙いだ。
また、会員制コミュニティを通じて、イノベーター同士のネットワーキング、最新のトレンドや教育コンテンツへのアクセス、具体的な事業創出支援を提供する。
特に、会員企業がビジネスパートナーを見つけ、新規事業や技術開発を進めるための「共同事業創出ミーティング」を最初の大きな一歩と位置付けている。
小杉裕司氏(三菱UFJ銀行)は、「スタートアップ企業の商品を大企業がクライアントとして使うことが、スタートアップにとって最大の支援になる。これが次の成長への重要なステップになる」と述べ、実践的な支援の重要性を強調した。
研究開発支援と販売チャネルの構築
Next Prime Foodは、熱意ある企業や個人が集まり、成功事例や失敗事例を共有し合う「熱気ある場所」としてのプラットフォームを目指す。有馬氏は「連携が生まれない理由は、リソース不足と、やり方が分からないこと」だと指摘。そこをNext Prime Foodが補う存在になりたいと述べた。
田中氏は「次世代の企業家やフードイノベーターが頼り、鍛えられる場所を作りたい」と述べた。
Next Prime Foodは、研究開発や試作開発の支援に加え、スタートアップ企業向けの販売チャネル構築にも取り組む。例えばアメリカの「Foxtrot 」のような、意識が高く、高単価な製品が売れていくような場は日本では少ない。こうした販売チャネルの確保を目指す。
本団体の対象者は、熱意があることのほか、トップダウンで意思決定し、具体的な事業創出を円滑に進めるため、意思決定者が共に関わることが求められる。
第1期は30社限定での募集となり、すでに募集を開始している。今月には説明会も開催される(12月19日、26日/オンライン/申し込みはPeatixから)。
関連記事
アイキャッチ画像の出典:SKS2024