精密発酵でカゼインを開発する米New Cultureは先月、新たなコスト削減の成果を発表した。
同社は、レストラン品質のモッツアレラチーズを維持しながら、自社製モッツアレラチーズのカゼイン含有量を28%削減することに成功したと発表。
この成果は、従来のモッツアレラチーズと比較した場合、New Cultureの精密発酵カゼイン含有率を50%以上削減したことに相当する。
つまり、同社の精密発酵カゼインを使用することで、カゼイン使用量を従来の半分に抑えながらも、従来と同じ美味しさと品質を持つチーズを提供できることになる。
New Cultureは、「この成果は、従来の乳製品カゼインと比較して、当社のカゼインタンパク質が優れた機能性を持っていることの証明となります」と述べている。
New Cultureの仮説:量を減らして質を維持できるか?
カゼインは、チーズの伸び、口当たり、溶けやすさの再現に重要なタンパク質とされる。動物由来ではない“素晴らしい”チーズを大量販売するには、当然のことながらコスト削減が不可欠となる。
同社も非動物性カゼインのコスト削減に取り組んできた。
New Cultureは仮説として、「モッツアレラチーズの味と機能に悪影響を与えずに、カゼインの含有量を下げられるのか?」という問いを立てた。カゼインの量を減らしてコストを下げること、つまり質を犠牲にせず、少ないカゼインで良いチーズを作ることに重点的に取り組んだ。
結果、従来のモッツアレラチーズのカゼイン含有率を50%以上削減できる成果を達成した。
特性間のトレードオフを克服
この成果を達成するにあたり、New Cultureはモッツァレラチーズの15の特性を評価する官能分析とスコアリングシステムを活用した。
風味、溶け具合、伸びといった基本的な特性に加え、噛みごたえ、オイルオフ(脂肪の遊離)、焼き色などを詳細に分析し、すべての特性が合格点を満たす配合を追求した。
伸びや噛み心地が素晴らしい一方で、歯にねっとりと残留物が残るなど、トレードオフの難しさがある中、チームはすべての特性を満足させる領域を見出した。結果、バランスの取れたモッツアレラチーズが完成し、低いカゼイン含有量でも本物のモッツァレラに匹敵する品質を実現できたのだという。
ロサンゼルスのレストランで提供を目指す
New Cultureは2024年2月に世界に先駆けてアメリカでGRAS自己認証を取得した。他社ではオ―ストリアのFermifyも、昨年10月に精密発酵カゼインについてGRAS自己認証を取得した。
New Cultureは2024年後半にロサンゼルスにあるNancy Silverton氏のレストラン「Pizzeria Mozza」でモッツアレラチーズの提供を目指していたが、2024年中の実現はならなかった。最初に提供する場が「Pizzeria Mozza」であることに変わりはなく、2025年の販売が期待される。
この点について創業者兼CEO(最高経営責任者)のMatt Gibson氏は、「新製品だけでなく、まったく新しい製品カテゴリーを立ち上げることは簡単なことではありません。従来型の乳製品会社ではないために特定の許可を取得するなど、予測が難しい課題がいくつかありました」とAgFunderのインタビューで述べている。
New Cultureは自社の精密発酵カゼインについて、どのタイプのカゼインを使用しているのか言及はしていない。
同社はα-カゼインのみを使用したチーズ様組成物に関する特許や、α-カゼインとκ-カゼインの組み合わせを中心としたミセル様組成物に関する特許や、κ-カゼインを中心としたチーズ・ヨーグルトに関する特許などを出願している。
参考記事
Same Great Mozzarella, Half the Casein(プレスリリース)
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アイキャッチ画像の出典:New Culture