フードロス

青果物の鮮度を延ばす“未来の冷蔵庫”Tomorrow Fridge|2つのアプローチでフードロスを削減

 

シアトルを拠点とするスタートアップTomorrowは、フードロスを削減する従来とは異なる“未来の冷蔵庫”「Tomorrow Fridge」を開発している。

青果物の鮮度を保持するソリューションとしてはスプレータイプを開発したApeel、シール・包装材を開発するFresh Inset、コンテナタイプのRipeLocker、シールタイプのRyp Labsなどがあるが、Tomorrowは冷蔵庫そのものを抜本的に変える方法を考案した。

その詳細はまだベールに包まれているが、公式サイトの動画によると、「Tomorrow Fridge」は青果物の鮮度を最大3倍に延長するだけでなく、ユーザーが外出時にも在庫状況を教えてくれる機能を備えている。

出典:Tomorrow

Tomorrowは、除湿により食品寿命を延長するように設計された従来の冷蔵庫では、カビは除去されるものの、腐敗を早めてしまうとThe Spoonのインタビューで述べている。野菜がしんなりする理由は、水分の喪失にあるのだという。

同社は、冷蔵庫内の生鮮食品が「生きて、呼吸している」状態に着目し、生鮮食品をより長く保持できるよう、冷蔵庫内の環境を調整した。

公開された動画によると、「Tomorrow Fridge」を使用した場合、各青果物の鮮度を、リーフ野菜では15日間ピーマンでは19日間バナナでは12日間保持できることが示されている。

さらに興味深いのは、ユーザーが在宅でない状況でも、冷蔵庫にある青果物の在庫状況を確認できたり、仕事が長引いてスーパーによる余裕がないときに、今ある青果物で何を作れるかアプリを通じて聞いたりもできることだ。また、使用頻度の高い食材を追跡し、在庫が少なくなると通知する機能もあるという。

上記より、「Tomorrow Fridge」は2つのアプローチからフードロス削減に取り組む冷蔵庫といえる。

冷蔵庫自体に鮮度を延長させる働きが備わっていることが1点。もう1点は、ユーザーが在庫状況を把握していなくても、スーパーなど外出時でも在庫状況を確認することで、重複購入を防いだり、今ある食材で食事のメニューを考えたりが可能になることだ。

しかも、青果物の鮮度延長、重複購入の回避ができれば、買い物にかかる時間、食費、フードロスをすべて削減できる

出典:Tomorrow

温室効果ガス排出量や食品を生産する土地利用の点で、食品廃棄物が環境負荷の要因であることは周知の通りだが、「Tomorrow Fridge」導入により、環境負荷を減らすだけでなく、お金・時間の節約にもつながることは魅力だ。

同社は価格や冷蔵庫のイメージ像などを公表していないが、消費者に生活上のメリットを提示できれば、より手軽にフードロス対策に取り組むことにもつながるだろう。

外出時の在庫確認などは、The Spoonが指摘するようにサムスンのFamily Hubもカバーしているが、冷蔵庫そのものに鮮度保持機能を持たせる発想はこれまでにないもののように思える。

Tomorrow Fridge」は、冷蔵庫にあるピーマンやトマトを重複して買ってしまい、帰宅後に野菜室を開けては後悔することを何度も繰り返している私のような人間には、“未来の冷蔵庫”どころか、まさに生活を変える“救世主”となるかもしれない。

Tomorrowは現在、公式サイトで早期予約を受付しており、2025年夏の予約開始を予定している。

 

参考記事

Tomorrow Wants To Reinvent The Refrigerator to Make Fresh Food Last Longer

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Tomorrow

 

関連記事

  1. Steamboxの蒸気で温められるランチボックスで職場の電子レン…
  2. ポーランド企業Fresh Insetセミナー動画(英語)|202…
  3. 【4/23】ポーランド企業Fresh Inset:ウェビナー開催…
  4. 機械学習でフードロス削減に取り組むFloWasteが約1億240…
  5. 英Tropic、「12時間変色しないバナナ」をゲノム編集で開発|…
  6. 廃棄される果物の皮からドライフルーツを製造するRINDが約6.7…
  7. 香港IXON社が肉を2年間常温保存できるASAP技術を開発
  8. グリラス、国産食用コオロギを使用したプロテインバー等をコンビニで…

おすすめ記事

イスラエルのWilk、研究室でヒトラクトフェリンの生産に成功

イスラエルのスタートアップ企業Wilk(旧称Bio Milk)は今月、ヒトラクト…

イオンも代替カカオに参入、カカオフリー菓子製品「チョコか?」を限定販売|ドイツPlanet A Foodsの原料「ChoViva」を採用

あじかんの「ゴボーチェ」、不二製油の「アノザM」に続き、大手小売のイオンが代替カ…

韓国・慶尚北道、韓国初の培養肉研究センターの設立へ—2027年完成予定

2025年3月22日更新:当初の記事で培養肉が実際に提供された地域に”香港”が抜けておりましたので追…

米The Live Green Co、精密発酵によるヒト母乳脂肪の生成を発表

アメリカの精密発酵企業The Live Green Coは、ヒトの母乳に含まれる…

Hyper-Robotics、「箱」の中でロボットがピザを作る完全自動化レストランをローンチ

イスラエルで完全自律型のロボットレストランを開発するHyper-Robotics…

韓国政府、2022年の国家計画に培養肉のガイドラインを追加

韓国の食品医薬品安全処が、国家計画に初めて代替タンパク質に関するガイドラインを盛…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/26 15:29時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/26 01:28時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/26 05:26時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/26 21:33時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/26 13:31時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/26 00:38時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP