18日、「ニッポンの魚ビジネスEXPO」が東京田町で開催された。Foovoで普段扱うテーマとは少し異なるが、魚を軸にどのような人々が集まり、どのようなビジネスが生まれているのかを知るために会場を訪れた。
異業種から養殖事業に参入した若者、水産業の未来を真剣に考える学生、デジタルを活用した地方創生の取り組むプロジェクトなど、多様なプレイヤーが集っていた。それぞれの熱意が交差し、新しい水産業の可能性を感じる場となっていた。
奥江戸水産は「やまめ」と「奥多摩やまめ」を養殖している。やまめとは、川の上流に生息する日本在来のサケ科の川魚。これを品種改良し、最大50cmに成長するようにしたのが「奥多摩やまめ」だ。
創業したのは元証券会社社員の西方亮さん。
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西方亮さん Foovo(佐藤)撮影
観光で初めて奥多摩を訪れた際に「奥多摩やまめ」の刺身を食べ、その美味しさに感動。養殖場での勤務を経て、奥江戸水産を設立した。現在、青梅市成木川と多摩川の最上流の2箇所で生産している。
水産人(すいさんちゅ)カレッジは、水産業に真剣に向き合う学生たちが、水産業の発展を目指し活動する団体だ。今年1月時点で、東京海洋大学など全国13大学から64名が参加。週末や長期休みを利用し、これまでに全国30箇所以上の漁村を訪問している。
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水産人カレッジの学生たち Foovo(佐藤)撮影
インスタグラムでは水産業の現状を、イラストを交えてわかりやすく発信。また、月2回、東京海洋大学で勉強会を開催し、漁村での経験を共有したり、水産業界のゲストを招いたりしている。
巴商会は遊休スペースを活用した陸上養殖のトータルサポートを提供している。使われていない漁港の空きスペースや、未活用の土地を養殖場として活用し、生産された魚の買取も行う。
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Foovo(佐藤)撮影
会場では、巴商会がこれから販売予定の「九十九島トラフグ」をスモーク加工した「燻製とらふぐ 鉄砲」の試食も実施していた。口に広がる芳醇な燻製の風味と、トラフグの旨味が絶妙にマッチし、とても美味しかった。
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試食した燻製とらふぐ Foovo(佐藤)撮影
会場入り口で目を引いたのは、「寿司といえば富山DAO」。2024年、富山県が「寿司」の支出額で全国1位になったことを初めて知った。
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Foovo(佐藤)撮影
「寿司といえば富山DAO」は、昨年10月に開設されたオンラインコミュニティ。富山県とWeb3 Timesが、地域課題をデジタルソリューションで解決する実証実験プロジェクト「Digi-PoC TOYAMA」の一環として立ち上げたもの。「寿司といえば富山」というブランディングを推進するためのオンラインコミュニティだ。
ディスコード上で、おすすめの寿司屋の情報交換やイベント企画が行われており、寿司が好きな人は誰でも参加できる。意外なことに、東京からの参加者が多いという。
新潟県上越市の百年料亭「宇喜世」が展示していたのは、100年以上の歴史を持つ4つの料亭の伝統の味を一つに詰め込んだ「東北四亭宝箱」。山形、秋田、岩手、新潟の伝統料理を組み合わせた逸品だ。
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「東北四亭宝箱」 Foovo(佐藤)撮影
「宇喜世」は150年以上の歴史を誇る老舗料亭。2017年、全国の100年以上続く料亭が協力し、日本料理の伝統を守る「百年料亭ネットワーク」が宇喜世で設立された。互いに送客を行いながら、伝統の味を未来へとつなぐ試みを続けている。
「東北四亭宝箱」のほかにも、五亭宝箱、十亭宝箱といった企画が登場すれば、伝統の継承や地方の活性化にもさらに貢献すると思う。
深海魚に魅了された田原舞さんが立ち上げたのは、深海魚の魅力を発信するブランドLavca.m。深海魚をモチーフにした雑貨や洋服を販売し、そのデザインも田原さん自身が手掛ける。
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田原舞さん Foovo(佐藤)撮影
深海魚は海底200mに生息する生き物。Lavca.mでは、深海魚の魅力を広めるために、各地で「深海魚タッチイベント」も開催している。普段触れることのない深海魚を実際に体験できる機会を提供している。
このイベントを企画したながさき一生さんは、当日のセミナーで、「日本の魚消費量は減少しているが、魚に興味を持つ人は増えています。日本の魚が世界に出て行けば、日本の食文化も世界に広がっていくと思います」と述べた。
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ながさき一生さん Foovo(佐藤)撮影
会場には、魚を軸にさまざまな人々が集まり、業界の未来を模索する熱気が感じられた。水産業の持続可能な発展のために、新たな挑戦、共創がうまれていくことを期待したい。
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Foovo(佐藤)撮影
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アイキャッチ画像はFoovo(佐藤)撮影