精密発酵で甘味タンパク質を開発する米スタートアップ企業Oobli(旧称Joywell Foods)が、大手原料ソリューションプロバイダーであるIngredionとの提携を発表した。
また、日本のKIRIN HEALTH INNOVATION FUNDおよび農林中金イノベーション投資事業有限責任組合(NCIF)からの追加出資も獲得した。
Ingredionとの提携では、ステビアなど他の天然甘味料と組み合わせ、精密発酵による甘味タンパク質の食品・飲料での使用拡大を図る。
Ingredionとの提携で甘味タンパク質市場を加速

出典:Oobli
OobliはIngredionとの提携により、天然甘味料であるステビアと甘味タンパク質を組み合わせた甘味料システムの開発を進める。これにより、手頃で美味しく、より健康的な甘味料の普及が期待される。
OobliのCEO(最高経営責任者)であるAli Wing氏は、「甘味タンパク質はより健康的な甘味料のツールキットに長らく欠けていた要素です。Ingredionの最高のチームと協力し、天然甘味料と当社の新しい甘味タンパク質を組み合わせることで、この成長著しいカテゴリーに画期的なソリューションを提供できます」とコメントしている。
甘味タンパク質は、ソーダ、焼き菓子、ヨーグルト、キャンディーなどの食品・飲料に単独で活用できるほか、他の天然甘味料と組み合わせることで、理想的な甘さの実現、コスト削減や栄養強化の面でもメリットがあるとされており、Ingredionの既存の甘味料システムとの相乗効果が期待される。
Oobliはこれまでに、FDA(アメリカ食品医薬品局)からブラゼイン・モネリンについて「質問なし」のレターを受領している。プレスリリースによると、4種類の甘味タンパク質でGRAS自己認証ステータスを、さらに1種類でFEMA GRASステータスを取得している。
Oobliは2022年12月に精密発酵甘味タンパク質を使用したチョコレートバーの予約販売を開始した。その後、スイートティーも発売したが、現在は当初から販売を継続しているチョコレートを販売している。
日本企業からの追加出資

出典:Oobli
Oobliは、今回の提携と並行してシリーズB1の資金調達ラウンドで1,800万ドル(約27億円)を調達した。
このラウンドには、Ingredion Ventures、Lever VC、Sucden Venturesなどが参加したが、日本からもKIRIN HEALTH INNOVATION FUNDおよびNCIFが追加出資を実行した。
KIRIN HEALTH INNOVATION FUNDとNCIFによる出資は、2022年5月に続き2回目となる。
2つのファンドを運営するグローバル・ブレインは、出資の理由として、Oobliの研究開発力の高さ、経営陣の優れたビジョン、代替砂糖市場の成長性、健康・環境課題への強い意識を挙げている。
Oobliの甘味タンパク質を活用した食品の海外展開を加速させるなど、多角的な支援を行う方針だ。
日本に関連した動きでは、昨年9月、日本航空(JAL)がOobliと提携し、サンフランシスコ発東京行きの一部便で精密発酵ブラゼインを使用したチョコレートを提供したが、国内消費者の反対を受け10月8日に中止した。
麹菌を利用した精密発酵ブラゼイン開発も
Foovoの調査では甘味タンパク質を開発している企業の中で、FDAによるGRAS認証を取得しているのはOobliに限られるが、下記の通り、他社でもGRAS通知をFDAに提出する複数の動きが確認されている。
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アイキャッチ画像の出典:Oobli