甘味タンパク質の開発に味の素が、AIを活用したタンパク質発見に取り組む米Shiruと共に参入する。
Shiruは先月、甘味タンパク質開発に向けて味の素ヘルス・アンド・ニュートリション・ノースアメリカ(Ajinomoto Health & Nutrition)との提携を発表した。
二社は飲料や特殊製品に使用するための甘味タンパク質を共同で開発し、糖尿病や肥満を減らすための砂糖削減ソリューションの提供を目指す。
アミノ酸、発酵のリーディングカンパニーである味の素が甘味タンパク質に参入するのはこれが初。
Shiru、未発見の甘味タンパク質開発で味の素と協力
ブラゼインなど甘味タンパク質は砂糖より500倍から2000倍甘いとされ、甘味を保持しながら砂糖を減らせる有効な砂糖削減ソリューションだ。
果物やベリー類に由来する既知の甘いタンパク質は赤道付近に生息する。プレスリリースによると、これらの既知の甘いタンパク質には大きな期待が寄せられているものの、味覚効果の発現・持続と安定性に関する課題に直面している。
近年、甘味タンパク質開発に参入する企業は増えており、精密発酵乳タンパク質で知られる米パーフェクトデイもその1社だ。同社は甘味タンパク質の1つであるブラゼインを開発しており、アメリカ食品医薬品局(FDA)からGRAS通知に対する回答を待つ状態にある。ほかに米Oobli、Sweegenなどもブラゼインを開発している。
ブラゼイン開発に取り組む企業が多いなか、Shiruは味の素とともに異なる戦略を展開しようとしている。
Shiruは独自のAIプラットフォームFlourishを活用し、これまで甘いことが知られていなかった天然の安全な甘味タンパク質の発見を目指している。
AgFunderの報道によると、Shiruが探すのは、既知の甘味タンパク質よりも甘味があり、安定性に優れ、配合しやすい甘味タンパク質だ。Shiruは、適切な甘味タンパク質を特定し、これを大量生産するための費用対効果の高い生産プラットフォーム開発に向けて、味の素と協力する。
オープンアクセスのタンパク質発見プラットフォーム
Shiruは今年5月、タンパク質発見プラットフォーム・タンパク質マーケットプレイス「ProteinDiscovery.ai」を発表した。これは、3,300万以上の分子データベースから、タンパク質配列、機能性、発現のしやすさなどの検索や、タンパク質のサンプル購入・ライセンス取得ができるプラットフォームとなる。
同社はこのプラットフォームについて「タンパク質のAmazonだ」と述べている。
例えば発見プラットフォームが提供する「Expressor」では、タンパク質の発現可能性がどの程度あるかを推定できる。
「Expressor」はユーザーが入力したタンパク質の発現を予測した後、構造的に類似したタンパク質の中からより発現レベルが優れたタンパク質を探し、同様の機能を持つタンパク質の製造可能性を最大化するのをサポートしてくれる。
植物に微量に含まれる高機能なタンパク質を見つけても、微生物発酵での生産には適していないこともある。Shiruのプラットフォームは、同じ機能性を持ちながら、微生物発酵でよりよく発現する他のタンパク質のカタログを提示してくれることになる。
また、「Protein Search Engine(PSE)」では、目的のタンパク質の配列などを入力すると、機能的に類似したタンパク質を同定する。
「タンパク質マーケットプレイス」ではカゼイン、卵、メチルセルロース、ヘムなど、さまざまな代替タンパク質のサンプル注文・ライセンス取得を受け付けている。
参考記事
Shiru and Ajinomoto team up on AI-powered sweet protein discovery journey
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アイキャッチ画像の出典:Shiru