おがくずなどの林業廃棄物から持続可能な代替油脂を開発するエストニア企業ÄIOは先月、10,000リットル規模へのスケールアップに成功したと発表した。
この成果は、昨年9月の610万ユーロ(当時約9億9000万円)の資金調達と、シンガポールのCDMO企業ScaleUp Bioとの戦略的パートナーシップ締結に続くものとなる。提携から約半年で、10,000リットルの工業規模での生産拡大を実現した。
ÄIOの共同創業者兼COO(最高執行責任者)であるPetri-Jaan Lahtvee氏は、「ディープテック・スタートアップにとってスケールアップは最も困難な課題の一つですが、今回、当社の技術が工業規模で機能することを証明しました。この10,000Lバッチにより、商用化と規制承認にこれまで以上に近づくことができました。持続可能な油脂の実現に向けた重要なステップです」とコメントしている。

出典:ÄIO
今回のスケールアップは、単なる生産量の増加にとどまらず、技術の最適化も進められた。具体的には、発酵の収率が48%向上し、下流工程の回収率が60%改善したという。
同社はこの成果をもとに、EFSA(欧州食品安全機関)の新規食品(Novel Food)申請に向けた準備を進めている。
2022年に設立されたÄIOは、おがくずなど林業や農業で生じる副産物を活用して、「レッドオイル」、「カプセル化オイル」、「バター脂肪」の3種類の代替脂肪を開発している。これらの製品は、植物油、魚油、動物性脂肪、バターなどの代替品として食品業界や化粧品業界での活用が期待されている。
昨年5月にはエストニアの首都タリンで一般向けの試食会開催を開催した。昨年調達した資金で、2026年までにエストニアにデモプラントを建設する計画も進めている。
発酵油脂の開発が加速する欧州市場

出典:ÄIO
ÄIO以外にも、微生物を活用した油脂生産の分野では複数の企業が成果を発表している。
オランダのNoPalm Ingredientsは先月、酵母由来の代替油脂の発酵プロセスを「世界で初めて」12万リットルの工業規模へとスケールアップすることに成功した。同社はパーム油の代替を目的に、ジャガイモなど農業副産物を活用して、酵母由来の脂肪および油脂の代替品を開発している。NoPalm Ingredientsは今後、自社初のデモプラント建設を進める計画だ。
また、スウェーデンのMelt&Marbleは昨年、10,000リットル以上のスケールアップを達成し、デモ運転で大量の脂肪生産に成功したと発表した。同社は今年1月、フィンランドの大手乳業メーカーValioと提携し、現在試作品の共同開発を進めている。
持続可能な油脂の開発競争が加速する中、ÄIOをはじめとする企業の動向が注目される。
参考記事(プレスリリース)
ÄIO Hits a Game-Changing Milestone: scaling to 10,000L!
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アイキャッチ画像の出典:ÄIO